第15話 ダンジョンの異変?
争奪戦開始の翌日には10階層を越え、その翌日には15階層も越えた。
「今日から16階層だ、16~19階層は貴族家が集中しているから仙境が使えるとは限らない。」
「そうですね。19階層まででしたら、わたくしも来た事がありますので、そこまで気になさらなくても大丈夫ですよ。」
「そう言ってもらえると助かる。念の為に野営道具は持って来ているが、20階層以降は他の貴族達も多く無いだろうから、その時は仙境を使おう。」
「おう。」「うん。」「ええ。」「お~。」
それから16階層を進むが宝箱が見つからない、この階層に来ている貴族達が先に発見しているのだろう。
「これは、ちょっと予想外だ、ここまで見つからないとは。」
「ええ、時間が経てば別の場所に現れますが、半日経って1つも見つからないとは思いませんでした。」
「シロウ、下に行った方が良いんじゃないか?」
「うん。行く。」
「そうだな、此処でいつまでも探していても仕方が無いか。」
「ね、シー君。」
「どうした?」
「魔物が少なくない?」
「そうか?他の貴族が倒しているんだろ?」
「・・・そかな?」
「気になるのか?」
「う~ん。ちょっと気になる。」
「魔物がいない。・・・もしかして、どこかに集まっているかも知れないな。」
「シロウ、それは洞窟階層の時みたいな事か?」
「ああ、あの時も魔物が階段近くに集まっていて、それまではあまり魔物がいなかったからな。」
「そか、じゃあ、誰かが罠にかかったのかもね。」
「あぁぁ、ありうる。物によっては大きな音がするからな。」
「うふふ、それでしたら気にする必要はありませんね。」
(・・・・・・罠にかかった人を気にしないって。)
「ま、まあ、そうだな。俺たちは下を目指そう。」
「おう。」「うん。」「ええ。」「お~。」
それから暫く進むと周辺感知に反応があり戦いの音も聞こえて来た。
「どうする?」
「待つしかありません、今回は争奪戦ですから助力する事はルール違反です。」
「・・・歯がゆいな。」
「それでも家を代表してダンジョンに潜っているのです、ここで助力をする事はその貴族家を侮辱しているのと同じ事です。」
「まったく、貴族ってのは。」
「うふふ、貴族は死よりも名誉を重んじるものですよ。」
「キスティさんもか?」
「うふふ、どうでしょうか?」
(・・・相変わらず、何を考えているのやら。)
それから暫くして戦闘音がしなくなったので、様子を見に行く事にした。
「魔物がまだ残ってるな。ヴァルマ、スヴィ、罠は?」
「・・・無いみたいだ。」
「うん。」
「そうか、なら殲滅するぞ。」
「おう。」「うん。」「ええ。」「お~。」
残っていたのはハイコボルトが6体とコボルトソルジャー4体だ。
俺とヴァルマが先行してスヴィが後に続く、そしてキスティにはエルシュラの護衛を任せた。
エルシュラの矢がハイコボルトの1体に突き刺さると、こちらに気が付いたコボルト達は一斉に襲い掛かって来た。
「連係も何もあったもんじゃないな。」
コボルト達は我先にと襲い掛かって来るが連係するような素振りを全く見せない。
「ふっ、しっ!」
「ヴァルマ、何かおかしい、慎重に頼む。」
「おう。」
その後、俺とヴァルマとスヴィを前衛にして、エルシュラの弓でコボルト達を倒していった。
「ふぅ、すぅ、はぁ。」
「ヴァルマはどう思う?」
「分かんねぇけど、何か興奮してた?」
「怒る?」
「怒る?一体何に怒るんだ?」
「わたくしにも分かりませんが、此処で戦闘があったので興奮していたのでは?」
「・・・そうなのだろうか。」
「シー君、分からない事をいくら考えても仕方無いよ?」
「・・・そうだな。じゃあ、先に進もう。」
(此処に魔物が残っていたと言う事は、戦っていたパーティは・・・。)
それから17階層を目指して進むと同じような事が2回あった。
(・・・どう考えてもおかしいよな。前はこんな事は無かったのに。)
「シロウ。まただ。」
「ああ、そうだな。」
今回は戦闘音がしないので魔物が集まっているだけなのだろう。
「17階層の階段前か、・・・数は16だな、行けるか?」
「おう、大丈夫だ。」
「うん。」
「キスティさんとエルは?」
「え、ええ、まだ大丈夫です。」
「うん、あたしも大丈夫。」
キスティさんは大丈夫だと返事をしているが、疲れが顔に出ている。
(・・・少しペースが早かったか。)
「ヴァルマ、洞窟の時のアレをやる。ヴァルマとスヴィで討ち洩らしを頼む。」
「え!?・・・良いのか?」
「ああ、良い。」
これからする事を他のメンバーにも話した。
「じゃあ、行ってくる。」〔隠形〕
隠形についてはキスティとエルシュラには話していなかったが、キスティは此処までの移動と戦闘で疲れが出ている、此処で時間を掛けるのは危険と判断した。
(・・・これも相変わらず気付かれないんだよな。)
(魔力を最大まで込めて・・・・・・!)〔飛剣〕
「ちっ、ヴァルマ!」
魔力を最大まで込めて飛剣を放ったが、不意に1体がしゃがんだ為に討ち洩らしてしまった。
そこでヴァルマに声をかけて、最後の1体を倒して貰った。
「ふぅ、流石に全力で放つと疲れる。」
「シロウが疲れるのは珍しいよな。」
「ええ、わたくしもシロウさんが疲れている所を見た事は無いですね。」
「そうか?舞踏会の準備とか結構大変だったんだが?」
「・・・その時、シロウさんは肉体的にお疲れになりましたか?」
「・・・、そうでも無いかな?」
(確かに、マナーや貴族の勉強に最後はダンス、そして疲れたと思ったのは、イルルトやベリザリオとのやり取りで、肉体的な疲労はそれ程でも無かったな。)
「シー君は体力お化け?」
「エル、それは言い過ぎじゃないか?」
「そ?でもAランクのあたしより体力があるよね?」
「エルは後衛だからだろ?ヴァルマとスヴィもそれ程疲れて無いぞ。」
「おう、オレはまだ行けるぞ!」
「うん、わたしも!」
「・・・。どうして、そんなに体力があるのですか?」
「シー君は不思議がいっぱいだね。」
「・・・。エルに不思議と言われるのは釈然としないのだが。」
「そ?仙境に飛翔に隠形。いっぱいじゃ無い?」
「うぐっ。・・・そうかも?」
「・・・シロウ。」「シロ。」
「コホン、ま、まあ、それは良いとして17階層に降りたら休憩できる場所を探そう。できれば仙境が使えそうな場所をな。」
「おう。」「うん。」「ええ。」「お~。」
17階層に降りて暫く進んだ所に行き止まりがあったので、そこで仙境に入り今日の探索を終わりにした。
「食事の前に風呂にでも入って来てくれ。」
「おう。」「うん。」
「え、お風呂があるのですか?」
「ああ、そこまでは見せてなかったか、ヴァルマ、スヴィ、2人を風呂に案内してやってくれ。」
「おう、キスティ、エル。こっちだ。」
ヴァルマとスヴィに2人の事を任せて食事の用意をする。
「料理と言っても、大した物は作れないんだよな。」
今日は、仙境で育てた野菜のサラダとかぼちゃの煮物に肉はステーキにして、ソースはヘリスト家で渡された特製のソースだ。
飲み物も仙境で育てたミカンに似た甘めの果実を絞った物を用意した。
「あとは、パンが欲しいんだがな。」
「うふふ、シロウさんはお料理もできるのですね。」
「出来ると言うほどじゃ無い、簡単な物だけだよ。」
「わたくしは調理場に立った事すらありませんよ。」
「貴族の令嬢がする事じゃないからな。」
「シー君、お腹空いた。」
「はは、そうだな。じゃあ食事にしよう。」
それから食事を済ませて、それぞれの部屋に戻り休んだ。
(・・・今日はおかしい事ばかりだった、ダンジョンで何が起こってるんだ?)




