第14話 ダンジョン争奪戦開始
今日からダンジョンの争奪戦が開始される。
「各貴族家の諸君。此度のダンジョン争奪戦は王命により執り行われる事を肝に銘じて欲しい。」
王家の代理で挨拶をしたのは、争奪戦に参加しない宰相家の次期当主だ。
そして彼からダンジョン争奪戦に関するルールが再度発表された。
ルール1:参加は各貴族家からは1パーティ6名のみとする。
ルール2:パーティには必ずその貴族家を代表する者が1名は参加する事とする。
ルール3:争奪戦の途中で人員の交代を認めない事とする。
ルール4:貴族家同士の助力はしない事とする。
ルール5:他のパーティへの妨害はしない事とする。
ルール6:争奪戦に参加する者は新しいダンジョンカードを発行し1階層から探索を行う事とする。
ルール7:ヘリスト家は最後にダンジョンに潜る事とする。
ルール8:開催期間は本日より2ヵ月間とする。
ヘリスト家が最後にダンジョンに潜る事が決まったのは、ヘリスト家は今までダンジョンを管理してきた実績がある事で他家よりも優位であり、複合スキルカードが見つからなかった場合は現状のままヘリスト家がダンジョンを管理する事が決まっているので他の貴族家に先行を譲ったのだ。
「やあ、キスティ嬢、お元気そうで何よりです。」
「ええ、サロドルフ様もお元気そうで何よりです。」
「しかし、キスティ嬢がまたダンジョンに潜るなど危険ではありませんかね?」
「うふふ、大丈夫ですよ。わたくしには信頼できる仲間がおりますから。」
「信頼、ですか。たかがCランク如きを信頼するとは、何とも。」
「サロドルフ様は高位の冒険者をお連れで?」
「ええ、我が侯爵家の専属であり最強のAランク冒険者達ですよ。」
「そうですか、お強いのでしょうね。うふふ。」
「ええ、彼らと共に我がベリザリオ家が勝利を収める事になるでしょう。」
「うふふ、頑張ってくださいね。」
「・・・。ええ、勿論ですよ。それでは私達は先に行かせて頂きます。」
「ええ、お気をつけて。」
ダンジョンに潜る順番は上位の貴族からとなっており、ベリザリオ家は3番目に潜る事になっている。
「わざわざ来なくても良いものを。」
「うふふ、自分が優位である事を示したかったのでしょう。」
「ここでも、見栄か。けど、サロドルフは騎士達に探させれば、とか言ってたのに冒険者を使うのか?」
「うふふ、今回のルールでは、1パーティしか潜れませんからね、騎士と潜るより冒険者と潜る方が良いと判断したのでしょう。」
「そうなのか?」
「さぁ?うふふ。」
「やぁやぁ、キスティ嬢、お元気そうだね。」
「・・・イルルト様。」
「キスティ嬢もダンジョンに潜ると聞いてね。貴方は私の婚約者なのだから、危険な事は避けて欲しいのだ。今からでも遅くは無い、ダンジョン争奪戦を辞退して私の帰りを待っていてはくれないか?」
「イルルト様、婚約者ではありません。候補です。」
「キスティ嬢もあまり頑な事を言わないで欲しいな。」
「イルルト様、お時間です。」
「ん?もう、その様な時間か。」
「あっ、あの時の。・・・えっと。」
「!?貴様、まさか貴様も争奪戦に参加する気か!」
「コスティ、知っているのか?」
「は!?あ、いえ、少しばかり話した事があるだけです。」
「話した、ねぇ。」
「黙れ!そ、それよりイルルト様、ダンジョンに潜る時間です。」
「ああ、分かった。それではキスティ嬢、私は行かねばなりません。どうかキスティ嬢には賢明な判断をして頂きたい。」
「うふふ、大丈夫ですよ、イルルト様。」
イルルトと共にいたのは以前13階層で助力したパーティにいたコスティだった。
そして、彼らのパーティにイルルトを含め6人でダンジョンに潜るらしい。
「シロウさんはイルルト様のパーティメンバーをご存じだったのですか?」
「いや、知ってると言うほどじゃない、前にダンジョンで魔物に囲まれていた所を助けただけなんだ。」
「それにしては、随分と嫌われているようでしたが?」
「あぁ、助けたんだがその後に・・・。」
それからキスティにその時の事を話した。
「助けたならば、戦利品は全てシロウ様が受け取るの当然ではありませんか、それに対してその様な事を仰るとは。」
「まあ、あのコスティとか言うのは冒険者では無く貴族らしいから、冒険者のルールとかは気にもしてないんだろう。」
「ですが、貴族であっても、その様な態度は感心致しません。」
「あまり気にするな、彼らの実力では16階層に行けるかすら分からない程度なんだから。」
「まあ!そうなのですね。うふふ、それでは、もう会わないかも知れませんね。」
「はは、そうだな。」
その後も続々と貴族達はダンジョンに潜って行く。
「そろそろ、最後か。」
「あまり、多くは無かったですね。」
「そうだな、アルマスさんも言っていたが、辞退した貴族もいるらしいから数が減ったんだろう。」
「・・・ヘリストまで来たのに辞退ですか?」
「それを俺たちが詮索しても仕方が無いだろう?」
「ですが・・・。」
「俺たちもダンジョンに潜ろう、今日は5階層まで行ければ十分だ。」
「ええ、分かりました。行きましょう。」
ダンジョンに潜るには新しいカードを発行してもらう、このカードは複数持つ事ができず、新しいカードを発行されると、今まで使っていたカードは使えなくなってしまう。
「これで、全員分カードが新しくなったな。では行こうか。」
「おう。」「うん。」「ええ。」「お~。」
ダンジョンの1階層に潜ると、幾つかの貴族家が階段に向かって歩いているのが見えた。
「久しぶりに1階層に来たが、敵はフォレストリザードだけだから、他の貴族達も戦わずに進んでいるみたいだ。」
「ふふ、それ以前にここまで人が列を成してしまうと、魔物もあまり近づきませんしね。」
「そうだな、俺たちもついて行くか、5階層まではそれ程の敵はいないから、のんびり行こう。」
その後、列をなしている貴族達の最後尾について5階層の守護者の部屋まで来た。
「・・・まぁ、そうなるよな。」
「これじゃあ、いつ守護者と戦えるか分かんねぇぞ?」
「ヴァルマの言う通りだな。」
「まだ10パーティ以上残っていますね。」
「前に来た時は3パーティだったよな?」
「いなかったよ?」
「ああ、スヴィと来た時は誰もいなかったが、ヴァルマと始めて来た時は3パーティが待ってたんだよ。その時は1時間くらい待ってたかな?」
「そうですね、3時間以上は待つことになりそうです。」
「まあ、焦っても仕方が無いさ、どのみち此処を越えたら今日は帰るんだ。」
「シー君、お腹空いた。」
「・・・エル。」
「うふふ、それでは、お食事にしましょう。」
「お~。」
その後は食事をしてからゆっくりと待ってから、ようやく順番が来たので守護者の部屋に入る。
「此処で連係と言っても仕方が無い。さっさと片づけて先に進もう。」
「おう。」「うん。」「ええ。」「お~。」
「エルは・・・・・・。まぁ、そうなるか。」
指示を出す間も無くエルシュラがハイゴブリンの眉間に矢を放ち、ヴァルマとスヴィが左右から殲滅した。
「・・・、わたくし、する事が無いのですが?」
「・・・、俺もだ。」
「シロウ、終わったぞ!」
「シロ。」
「ああ、良くやった。」
ヴァルマとスヴィを撫でて褒めていると、エルシュラがこっちを見ている。
「むふふ、褒めて良いよ?」
「ああ、エルも良くやったな。」
そう言ってエルシュラの頭も撫でる。
(・・・本当に子供みたいだな。)
「うふふ、わたしは何も出来なかったので残念です。」
(・・・もう、勘弁してください。)
「コホン、じゃあ、今日は帰ろう。」
「おう。」「うん。」「ええ。」「お~。」
(ダンジョン争奪戦は始まったばかりだ。ゆっくりと進む事にしよう。)




