第7話 冒険者研修
昨夜も宿には泊れなかったので、街道から離れた人目につかない場所で野営した。
そして翌朝、残った最後の果物を食べてからギルドに入る、昨日の受付の男性がいなかったので空いている受付に向かった。
「おはよう、昨日登録したシロウだ。研修を受けに来たんだが、今から受けられるか?」
「おはようございます、シロウさんですね。すぐに担当者を呼んで参りますので少々お待ちください。」
そう言って受付の男性は席を離れ奥へ向かう、それからすぐに1人の男性を連れて戻って来た。
身長は2m近くでかなり体格が良く髪は黒く角刈りで瞳は青い、服装は茶色で作業着のように上下共にポケットが沢山ついている服を着ている。
「お待たせしました。こちらが本日の研修を担当するパーヴォです。あとは彼が説明しますので。」
そう言って受付は戻っていった。
「おう!俺が担当のパーヴォだ、普段は隣の解体所にいる。よろしくな!坊主!」
そういってパーヴォは俺の頭をポンポンと叩く。
「あぁ、よろしく。・・・だが坊主は止してくれ、俺はこれでも26なんだ。」
その瞬間パーヴォは止まった。
確かに気付いていたのだ、しかしなるべく考えないようにしていた、この町に来てから人とすれ違うと自分が他の人と比べて若干・・・若干!背が低い事に。
「は!?26?・・・すまん、あんまり小さいんでまだ子供だと・・・。」
(日本人童顔説はここでも有効なのか・・・、まぁ身長165cmじゃ日本人でも小さいもんな・・・。)
「は・は・は・・・。」
「そんな泣きそうな顔するなよ。悪かった!すまん!・・・ああ、そうだ!詫びに飯でも奢ってやるからよ!」
そう言って、手を合わせて謝罪するパーヴォだった。
「よし!なら許そう!」
聞いた途端に上から目線で許した。もちろんお腹が空いてるからだ。
「ふっははっ、面白れぇ奴だなお前!まぁいいか、それじゃまずは研修からだ。ついてこい!」
そう言ってパーヴォはギルドを出て右隣にある解体所に向かったのでついて行く。
「ここが解体所だ。」
解体所の入口は両扉になっていて片側5mの扉で全開にすれば10mになる、ただ普段は片側だけ開けているらしい。
中には入ってすぐ左側の壁際に受付があり、建物の中心には大きな解体台が2つ横並びになっている。
解体台の左の壁際には解体用の道具が並んでいて、右側の壁には解体済みの素材らしきものが置いてある。
正面の奥には扉があり肉などを保管する冷蔵倉庫になっているとの事だった。
「よし!始めは採取する薬草について説明するぞ!」
採取する薬草にはいくつか種類があり、傷を癒す効果がある”クロル草”と病を癒す”フェン草”だ、これらは薬師が作る傷薬や病薬の素材になる。
この薬草は葉に薬効があるので茎を切断して採取し採取後は逆さまにしておく事。
次に回復ポーションに使われる”チアミン草”と魔力回復ポーションに使われる”ジオウ草”だ、これは錬金術師が扱う。
そしてこの薬草は根もとに薬効があるため必ず葉から根もとまで採取する必要がある。
その他にも薬草の採取依頼はあるが、それらは個別依頼に当たるため依頼書に記載があり、更には受付でも説明されるらしい。
「なるほど、薬効がある場所を知ってなきゃいけないのか。」
「そうだ、チアミン草とジオウ草は根もとが肝心だからな。とは言え根もとだけじゃ見分けがつかないから全部採取する必要があるんだよ。」
「確かに、根もとだけじゃ分からんな。」
「だからって薬草は根もとまで採取すれば良いって訳じゃないぞ。根もとが残っていればまた生えてくるんだからな。次の為にもやり過ぎは禁止だ。」
「チアミン草とジオウ草はどうなんだ?根もとまで採取したらもう生えてこないだろ?」
「あぁ、だから単独で生えている場合は採取してはいけない、群生地でも2/3以上の採取はダメだぞ!そんな事をしたら、そのうち採取自体ができなくなるからな!」
「ああ、分かった。」
「よし!それじゃ、次は討伐と解体だな。シロウは魔物と戦った事はあるのか?」
「まあ、戦闘は何度かあるぞ。魔物かは知らんが。」
それから戦った事のある魔物や動物を説明したら呆れられた。
まず一番初めに倒した恐竜は”レイクリザード”と言い、普段は水辺にいる事が多くCランクが数人でようやく倒せるかどうかと言うほど強いらしい。
小型の恐竜は”フォレストリザード”と言い、こっちは単体なら一般人でもなんとか倒せる程度だと言う。
ただ群れになると危険度が跳ね上がるらしく、小規模ならDランクで対処できるが大規模な群れになるとBランク以上でなければ対処できなくなる事もあるそうだ。
ただ結局のところは数なので対処も数を揃える事になる。
更に戦ってはいないが大型の恐竜は”ファングリザード”ではないかと言われた。
ファングリザードは狂暴でAランクが数人、もしくはSランクで無ければ対処もできないほど強いのだと。
そして”それらは魔物なのか?”と聞いたら”個体による”と言われた。
動物が魔力に侵される事で魔物化する、簡単な見分け方は”目が赤ければ魔物”なのだそうだ。
そして魔物は”魔石”を体内に有していて魔法を使う個体もいるらしい。
「まぁ、・・・生きてて良かったな。」
「ははは、・・・死にかけたけどな。」
「後は、解体だな。これは数をこなすのが手っ取り早いんだが・・・。」
解体の必要が無い種類は討伐証明部位だけでいいらしい、これは解体しても使える部位が無いからだ、ただし魔物化していれば心臓に魔石があるはずなのでそれも回収する。
食肉になる種類は血抜きだけして解体所に持ってくれば解体してくれるがその場合は解体料が掛かる。
解体を覚えればその分を高く買取してもらえるのでお得なのだと。
それから実際に説明を聞きながら解体を見せてもらったが、それだけでは流石に覚えられないので、自分で狩ってきた獲物を持って来れば解体を教えてくれるそうだ。
「よ~し!これで研修は終りだ!・・・まだ昼前だが飯にするか?」
「おっ!ごちになります!」
「ほんとに調子のいい奴だな!?・・・まぁいいや、行くぞ!」
「お~!」
そしてギルド併設の食堂に来た、これでようやくちゃんとした食事にありつける。
食堂で出されたのは普通の定食でパンが2つと野菜が入ったスープにサイコロ肉だった。
「ふあぁ~。うまい!」
「なんで泣きそうになってるんだよ!?そんなにうまいか?・・・あぁ、いや、うまいぞ!?」
何やらパーヴォは食堂の料理人に睨まれたみたいだ。
そんな事は気にせず味を噛みしめて食事をした。
この世界に来て初めての食事は、硬めのパンに野菜のうま味と塩の効いたスープと塩と胡椒の効いたサイコロ肉で、日本にいた時と比べたらとてもおいしいとは言えない味だったが、ここまでの保存食や塩だけの燻製もどきなどに比べたらとてもおいしく、気が付けば涙を流しながら食事をしていた。
「えぇ・・・。ほんとに泣くなよ!?大丈夫か?いったい今までどんな食生活してたんだよ!」
「あぁ、すまん。金が無くてずっと保存食ばかりだったから・・・。」
「は?そうなのか?・・・それにしちゃ随分と堂々としてたな?」
「・・・まぁ、弱味は見せない方がいいかと思ってな。」
「そうだな。確かにその通りだ。・・・ただ1つ教えておくが、ギルドに登録すれば銅貨3枚まで借りる事ができるぞ。」
聞いた瞬間に固まった、銅貨3枚あれば寝床と食事が手に入ったはずなのだ。
「・・・なんてこった~!!」
やっぱりどこか間抜けだった。




