第10話 不思議な感覚?
探索の期限まではあと6日、1日1階層のペースで行けば25階層を越える事はできるが30階層までは行けない。
一先ず25階層を目指して進み、その後は状況次第で決める事にした。
「ヴァルマ、どうだ?」
「おう、魔纏を使えばシールドリザードでも深く斬れるぞ。」
「そうか、やっぱり短剣に替えて良かったよ。」
「シロウ、ありがとう。」
「お、おう。どういたしまして?」
(・・・最近ヴァルマの笑顔が柔らかくなって、ちょっとドキッとする。)
「むむ、シロ?」
「ほぁ!?な、何でしょうか?」
「むぅ~。ヴァル、ずるい。」
「はあ!?な、何がだ。」
「シロ!」ちゅ。
「ああ!?スヴィ!何してんだ、こんなとこで!」
「はぁ、スヴィ。此処はダンジョンなんだから、勘弁してくれ。」
「むふふ。にゃ~。」
(・・・スヴィはこういう事に積極的だな。ネコの真似は、・・・良いかも。)
「コホン、さ、さあ、行こう。」
「ぉぅ。」「にゃ。」
それから22階層を抜けて23階層に入ると、この世界に来た時に俺の右腕を喰ったリザード種、レイクリザードがいた。
「グルルゥゥ。」
「此処で会うとは。・・・懐かしいんだが、良い思い出じゃないからな。」
「あいつか?シロウの腕を。」
「ああ、そうだ。」
「オレが仇を討ってやる!」
「うん!」
「いや、俺は死んで無いからな!」
「ふぅ、しっ!」「はぁ、たぁ!」
人の話も聞かずに敵討ちだと2人がレイクリザードに突撃して行った。
2人の連係も上達して、牽制役と攻撃役を瞬時に切り替えてレイクリザードを翻弄している。
「グラァァア!」
「はっ、せぃ!」
「はっ、とぉ。」
最後は、スヴィが足首を斬り、倒した所でヴァルマが首を斬り落とした。
「シロウ!どうだ、仇は討ったぞ!」
「ふふふ、ブイ!」
「あ、ああ、ありがとう?・・・いや、違う、俺は死んで無いから!」
「ははは、冗談だ。けど、まあ、一応な。」
「ふふ、ヴァル、照れてる。」
「・・・。」
「まあ、ありがとうな。けど、そのお陰で身体再生のスキルが貰えて2人を治せたんだから、寧ろ感謝すべきかも知れないな。」
「う~ん。そうかもだけど。やっぱり感謝はできない!」
「うん、うん。」
「そうか、そうだな。まあ、もう過去の事だから気にするな。」
「おう。」「うん。」
それから23階層を進んで翌日には24階層も抜けた。
「25階層の守護者は、確かクロウリザードが2匹って言ってたな。」
「おう、キスティはデカいって言ってたな。」
「爪!」
「そうだ、キスティさんが言うには2m以上の体高があって短剣と変わらない長さの爪を持つ、リザード種でも大型の部類に入るって言っていたな。」
「それじゃ、今までのは中型か?」
「ああ、タートルリザードから今までのは中型だな。」
「そうか、じゃあ、やっぱり強いんだろうな。」
「まあ、守護者だからな。2人とも準備は良いか。」
「おう。」「うん。」
「それじゃ、行こうか。」
25階層守護者の部屋。
「グルオォォォォォオ!!!」
「ぐっ、声がデカい!ヴァルマ、スヴィ。大丈夫か?」
「お、おう、大丈夫だ。」
「くぅぅ、耳、痛い。」
出現したクロウリザードはワニのような口を大きく開けて威嚇してきた。
「そっちは頼んだ!」
「おう!」「うん!」
1匹を2人に任せて、まずは自分の戦いを始める。
「グルゥゥ、グルォォ。」
「すぅ、ふぅ。ふっ!」
息を整え一気に近づき足を狙って剣を振るうが、その巨体に似合わず機敏な動きで飛び退る。
『ドン。』
着地するだけでも大きな音と振動が伝わってくる。
「マジか。・・・2人は?」
ちらりと2人の方を見ると、様子見をしている様で攻撃せずに間合いを保ちながら牽制している。
「はは、負けてられないな。・・・すぅ、はぁ。はぁ!」〔飛剣〕
「グラァァァ!」
飛剣を飛ばして足に切り傷を付けるが傷は浅い。
「意外と硬いか?」
「グルルゥゥ。」『ドン!』『ドン!』
「威嚇のつもりか?」
クロウリザードは尻尾を地面に叩きつけ苛立っている。
「ならば、すぅ、はっ。」
「グラァァア!」
「せりゃぁ!」
一直線にクロウリザードに向かって行き、爪で攻撃して来たところで方向を変えて後方に回り込んで尻尾の半分を斬り落とす。
「グルゥァ!?」『ドン。』
尻尾の重量が変わった事で態勢が崩れたクロウリザードの右足を斬りつけ、横倒しにすると、クロウリザードに飛び乗り、上を向いた横腹に剣を深々と突き刺した。
「グュラァァ!?」
「すぅ、はぁ。しっ!」
そして首の後ろを斬りつけ止めを刺した。
「はぁ~。2人は。」
2人の方を見るとスヴィが正面で注意を引き、ヴァルマがクロウリザードに斬りかかっていた。
「ヴァル!」
「おう。」
スヴィが声をかけると、ヴァルマはクロウリザードの注意を自分に向けるために側面から正面に移動しながら斬りつけて行く。
「スヴィ!」
「たあ!」
最後は注意がヴァルマに移ったところでスヴィが下から喉元を突き刺して止めを刺した。
「ガァ・・・。」
「ふぅ、すぅ、はぁ。」
「すぅ、ふぅ。」
「ヴァルマ、スヴィ。お疲れ様、良くやった。」
2人を撫でながら褒めると満面の笑みだった。
「はぁ、デカいのは倒すのが大変だ。」
「うん。近づく、難しい。」
「そうだな、ヴァルマは飛剣の訓練をした方が良いかな。二刀で飛剣が使えれば大型を相手にわざわざ近づかなくても済むからな。」
「わたし。」
「槍の技は知らないんだが、多分同じように刺突を飛ばせるんじゃないか?」
「おお、飛ばす!」
「2人とも魔力操作を覚えているから、後は訓練次第でできると思う。」
「おう。頑張る!」
「うん。わたしも。」
「ああ、頑張ろうな。」
守護者の宝箱から出てきたのはスキルカードが2枚と何かの魔道具だった。
「スキルカードは両方共火耐性か、これは2人が使うから良いとして、これは魔道具だよな?何の魔道具だ?」
「シロウ、下の方に何か書いてあるぞ。」
「え、下?」
魔道具の下側に説明が書いてあった。
「ああ、なるほど、ビデオカメラか。」
「ビデオカメラ?」
「あぁ、そうだなぁ。この魔道具で景色と音を保存してそれを後で見る事ができる魔道具、記録魔道具ってとこかな?」
「へぇ、そんな事ができるんだな。」
「使う?」
「そうだな、売るのは勿体ないから俺たちで使おう。」
「おう、楽しみだな。」
「ふふ、楽しみ。」
「さあ、26階層に行って人が来ない場所を探して今日は終わりにしよう。」
「おう。」「うん。」
26階層に入って少し行った所に行き止まりの場所を見つけたので、仙境に入り今日の探索を終えた。
「なあ、シロウ。」
「ん?どうした?」
「アルマスのおっちゃんは2ヵ月じゃ26階層は無理って言ってたよな?」
「そうだな、言ってたが、それがどうかしたのか?」
「オレ達なら26階層まで来れるんじゃないか?」
「ああ、その事か。確かに俺たちなら来られるだろうな。だけど、それは仙境があるから潜ったままでもしっかり休めて探索の速度が落ちないからだ、それに荒野の階層では飛翔と千里眼を使って階段を見つけたからな。それが無ければ俺たちでも難しいと思うぞ?」
「ああ、そうか。ダンジョンで休むのは大変だからな。」
「15階層までは使わなくても行けるけど、その下はダンジョンで野営する必要がある、そこから厳しくなる。」
「じゃあ、シロウのお陰だな!」
「うん!」
「はは、俺の、と言うより種族スキルのお陰だからちょっと複雑だな。」
「それだってシロウの力なんだ、気にし過ぎだぞ。」
「そうだな。ありがとう、ヴァルマ、スヴィ。」
「おぅ。」「へへへ。」
▽▽▽
「あと2日だから今日は程々の探索で終わらせて、明日は早めに帰ろう。」
「おう。」「うん。」
26階層の探索を始める。
この階層まで来ると、出てくるのは上位の魔物ばかりで中には魔法を使うゴブリンマジシャンも出てくる。
更にはハイオークやオーガなどの体長が2m以上もあり力の強い種も出てくる。
「混成は厄介だな。オーガは俺が相手をする。ヴァルマとスヴィは他を頼む。」
「おう!」「うん!」
「グラァァァアア!」
「唾を飛ばすな!」〔飛剣〕
鉄の棍棒を振りかざしながら駆け寄ってくるオーガに文句を言うと、飛剣を飛ばし牽制してから足に斬りつけた。
「ガァアア!?」
「ふっ、せい!」
足を斬り落とす事はできなかったが、片膝を突けたオーガが態勢を立て直そうと棍棒を杖の代わりにして立ち上がろうとした。
「それは悪手だ!」
武器を杖代わりにしては攻撃も防御もできない、無防備になったオーガの心臓に向けて剣を突き立てた。
「ガァ、ア!?」
「ふぅ、はぁ。」
「シロウ、こっちも終わったぞ。」
「そうか、もう終わったのか。2人は本当に強くなったな。」
「お、おう。が、頑張ったからな。」
「ふふふ。」
スヴィはともかく始めて会った時のヴァルマは、身体は痩せ細り右腕も無く戦える様な状態では無かのに、今では悪鬼種を相手に勝利できる様になった。
(・・・本当に強くなったな。)
「シロウ、どうした?」
「シロ?」
「ん、ああ、ちょっと考え事を、な。さあ、探索を続けよう。」
「おう。」「うん。」
それから探索を続けて宝箱を1つ見つけたが、中に入っていたのは弓だった。
弓に宝石が埋め込まれていたが、特殊な物かどうかも分からないので仙境の家に置いて来た。
「スヴィが弓を使うか?」
「う~ん。いい、これ。」
「そうか、そうだな。まだ槍に慣れたばかりだからな、今から無理に覚えなくても良いか。」
「うん。」
「じゃあ、先に・・・。?」
「シロウ、どうしたんだ?」
「シロ?」
「・・・なぁ、何か聞こえないか?」
「ん?・・・いや、何も聞こえないぞ?気配は無いけど敵か?」
「いや、俺も気配は感知してないんだが、何かこう、”ざわざわ”と言うか、焦っている様な感じがするんだ。」
「そう、か。シロウはどうしたい?」
「・・・気になるかな。急いだ方が良い気がする。」
「それなら、探そう。何があるか分かんねぇけど、オレはシロウのしたい事に付いて行くぞ。」
「うん、わたしも!」
「そうだな、ありがとう。」
(・・・けど、これは一体何だ?感知にかからない何かがある?)




