第9話 探索再開
王都からヘリストへ向かう街道は貴族や商人の馬車が多く10日で着く予定が3日後れて13日かかった。
けれど、人が多く魔物に襲われる事が無かったのは幸いだ。
既に日が傾きかけているが、ヘリストの城外には多くの馬車が止まっており周囲には野営のテントが立ち並んでいる。
これらは、ヘリストへの入城を待つ人達やその人達を相手に商売をする商人だ。
複合スキルカードを探す冒険者や貴族で町が賑わって所に、ダンジョン争奪戦によって更に人が増え町の許容範囲を越えてしまった為に入城できない人達もいる。
「争奪戦の開始まであと10日か、貴族達はどのぐらい来るんだ?」
争奪戦開始後に参加する事もできるので慌てる必要は無いのだが、早く参加すればそれだけチャンスがある。
争奪戦に参加する貴族家が最終的に何家になるのかは見当がつかない。
領主邸に辿り着くと、当主自らが迎えてくれた。
「お父様、ただいま戻りました。」
「おかえり、キスティ。皆もご苦労だった、片付けが終わったら休んでくれ。」
『はい。』
「シロウ!こっちへ。」
「アルマスさん。お久しぶりです。」
「今回は色々と世話をかけたな。」
「大丈夫ですよ、その分の報酬は頂いてますから。」
「はっはっは、そうか、しっかり稼いだか。」
「ええ、ありがたく。」
「お父様、お兄様からお手紙を預かっています。」
「そうか、ならまずは手紙を読ませてもらう。お前達は部屋で着替えて来い。シロウは前と同じ部屋を使え。アルペリス。」
「畏まりました。」
王都への出発前に泊めて貰った部屋に入ると荷物を下ろして装備を外す。
「うぅ、また貴族の屋敷だ。」
「はは、ヴァルマは本当に苦手なんだな。」
「だって、高い物がいっぱいあるんだぞ?壊したらって思うと。」
「まあ、壊したら弁償すれば済む話しだ、所詮は物だからな。人に怪我をさせたりしなければそれで良い。」
「ぉぅ。」「うん。」
「シロウ様、御当主様がお呼びです。」
「ああ、エンロンさん、2人は?」
「ええ、同席頂いて構いません。」
「分かった、それじゃ行こう。」
エンロンに連れられて応接室に行くと既にキスティが来ていた。
「ん?遅くなったみたいだな。」
「いや、先にキスティの話しを聞いてただけだ。」
「あぁ、そうか。それで?」
「まあ、大方の経緯は把握したが、随分と大事になったな。」
「提案した俺が言うのも何だが、これで良かったのか?」
「良くはないが、手を打たなければベリザリオの思惑通りになるだけだったんだ、仕方が無い。」
「他に手が思いつかなかったんだよ。苦肉の策ってやつだ。」
「それでも、我が家にもチャンスが残ったんだ、それについては感謝する。」
「そう言って貰えると助かる。それで、複合スキルカードはまだ見つかってないのか?」
「ああ、まだだな。16~19階層に2パーティと26~29階層に1パーティを入れて探させているが、下階層は難度が高くて探索もそれ程進んで無い。」
「1階層から進んで2ヵ月で何処まで降りられる?」
「2ヵ月あれば26階層まで行くのは可能だろうが探索する期間を考えると今回の争奪戦は16~19階層に集まるはずだ。26階層以降を探索する気なら高位の冒険者で無ければ無理だろう。」
「・・・、そうか。それでヘリスト家はキスティさんが出ると聞いているが、他は決まっているのか?」
「26階層に潜らせているパーティに頼んである。あいつ等が一番能力が高いからな。」
「そうだな、それが良いだろう。それで俺達はどうすれば良い?一応提案したのは俺だから必要なら手伝うが?」
「今は特に無いが、しいて言えば外にあぶれた連中をどうするかだな。」
「ああ、こればかりはな。ダンジョン街に入れるわけには行かないし。」
「そうだなぁ、場所は空いてるがこれから貴族共が来るから空けとかねぇと喧しいからな。」
「・・・貴族共って、まあ良いか。外は警備を強化するしか無いだろうな。」
「騎士達は手配してあるが、限度があるからな。残りは冒険者に依頼するしかあるまい。」
「あと、食料とかは足りてるか?」
「今はまだ足りてるが、これから更に人が増えるからな足りなくなる食料や日用品の仕入れは商人に依頼してある。」
「そうか、・・・本当に大事だな。何だか申し訳ない。」
「ははは、その分の領地としては税収も上がるんだ何とかするさ。」
「頑張ってくれとしか言いようが無い。それで、俺たちに頼む事が無いなら明日1日は休んで、明後日からダンジョンの20階層から下を探索して来る。」
「何だ、潜るのか?」
「まあ、元々その為にヘリストに来たんだよ。争奪戦が始まれば2ヵ月は潜れなくなるから、その前にな。」
「そうか。だが2日前には戻ってくれ、また何かあれば相談したい。」
「ああ、分かった。」
▽▽▽
ヘリストに戻り1日休養をとり、そして今日から1週間ダンジョンに潜る。
「ヴァルマ、スヴィ。準備は良いか?」
「おう。」「うん。」
「21階層からは荒野になっていてリザード種が多いからな、ヴァルマの短剣が何処まで通用するか試すにはちょうど良い。」
「おう。今度はちゃんと仕留める!」
「ははは、気合を入れてる所で悪いが、それでも硬い奴は魔纏を使わないと斬る事はできないからな。」
「うぅ、分かってる!」
「ヴァル、大丈夫?」
「おう。大丈夫だぞ!」
そして、ポータルを使い21階層に飛んだ。
「おぉ~、ありえない程に広いな。これは階段を探すのが大変だ。」
「シロウ、誰もいないぞ?」
「あぁ、そうだな。他の連中は下階層か?それとも上階層かな?」
「迷宮階層に行ってるのか?」
「どうだろうな?早く降りる為に訓練でもしてるんじゃ無いか?」
「でも、冒険者もいないって。」
「冒険者達は複合スキルカードを探すのに躍起になってるんだろうな。ダンジョン争奪戦の前に自分が見つける、って。」
「へぇ、そうなのか、見つけてもダンジョンの管理者にはなれないのにな。」
「ははは、まあ、そこは冒険者の夢みたいなものだ。」
「シロ!」
「ああ、分かってる。ヴァルマ、タイガーだ。」
「おう、そうだな。オレの短剣で倒して見せる!」
この階層で最初に遭遇してのはタイガーだ。
タイガー種は力も強いが、それ以上に柔軟な身体から繰り出される爪の攻撃が厄介で、瞬発力があり一気に飛び込んでくる。
「ガァォォォ!」
「おお、声がでけぇな。」
タイガーは姿勢を低く保ち、見定める様に近づきながらヴァルマを見る。
「グルゥゥゥ。」ダダッ!
「!?」
唸っていたタイガーが一瞬で飛び掛かり爪を振るって来る、ヴァルマはそれを右に躱すと次の瞬間に再び飛び掛かって来た。
「甘い!」
タイガーの飛び掛かりに対して、ヴァルマは左に回転しながら右の短剣でタイガーの左前足を斬り落とした。
「グルァ!?」
「すぅ、はぁ!」
片足を失ったタイガーはヴァルマの追撃を避けきれず首を斬られて絶命した。
「グルァ・・・。」
「ふぅ、すぅ、はぁ~。」
「ヴァルマ、良くやった。」
「おう!この短剣はすげぇ斬れるぞ、斬った時に抵抗を感じなかったんだ。」
「へぇ、流石はバルントさんだな。」
「すごい。」
その後は魔物と戦いながら22階層への階段を探すが、目印になるような物が無く階段の捜索は難航した。
「・・・見つからないな。」
「シロウ、どうするんだ?」
「シロ?」
「う~ん。仕方が無い、ちょっと上から見て来る。」〔飛翔〕
当てもなく彷徨っていても仕方がないので、上空から階段を探す事にした。
「えっと、向こうから来たから、あっちか?」〔千里眼〕
更に千里眼を併用して、より遠くまで確認していく。
「お!あった。けど結構遠いな。」
階段を見つけたので地上に降りてヴァルマとスヴィに説明する。
「結構遠かったけど、見つけたぞ。」
「おお、やっぱり飛べるのは便利だな。」
「うん。」
「まあ、今日は人がいないからできるけど、極力見られたくは無いな。」
「面倒になるからか?」
「ああ、貴族とかに知られたら更に面倒だ。」
「貴族って、キスティもか?」
「う~ん。ヘリスト家の人達は良い人達だと俺も思うけど、知っている人が少ない方が秘密は守りやすいからな。」
「ふふ、家族、秘密。」
「ああ、スヴィの言う通りだ、家族の秘密だな。」
「家族。ま、まぁ、それなら良いぞ。」
「ヴァルマ、スヴィ、行くぞ。」
その後もタートルリザードなどのリザード種やホーンボアなどと戦い、22階層に降りると今日の探索を終了して仙境で休んだ。




