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第8話 ヘリストへ

舞踏会が終り屋敷に戻ると玄関でマルスティが待っていた。



「お帰り。キスティ、シロウ。」


「お兄様、どうなされたのですか?」


「マルスティさん、舞踏会で聞きましたよ。」


「もう聞いたのか。全ての内容が決まったのは昨日なのだけどね。」


「詳しい話は着替えてからでも良いか?流石に窮屈なんだ。」


「ああ、それじゃあ、着替えたら応接室で話しをしよう。」


「ああ、それじゃ、着替えてくる。」


「それでは、わたくしも着替えてまいります。」






部屋で着替えてから、ヴァルマとスヴィを伴い応接室に向かった。






「すまない、待たせた。」


「大丈夫だよ、キスティはもう少しかかるだろうしね。それより、舞踏会はどうだった?楽しめたかい?」


「あのなぁ、楽しめる訳がないだろ。場違いも甚だしいし居心地が悪くて大変だったよ。」


「そうか、やはりシロウは冒険者の方が良いか。」


「当然だな。あんな見栄の張り合いみたいな所は性に合わない。」


「それは残念だよ。」


「お兄様、シロウさん、お待たせしました。」


「ああ、大丈夫だよ、シロウと舞踏会の話しをしてたからね。」


「うふふ、舞踏会ではわたくしとしか踊りませんでしたね。」


「まあ、俺は貴族じゃないからな、他の女性と踊る必要はないさ。」


「それで、ダンジョンの話しなのだけれど。」





マルスティが昨日までの事を話してくれた。


ダンジョンの争奪戦をするにしても冒険者ギルドの協力が不可欠の為、事前に冒険者ギルド本部に行きギルド側の意見を確認した。


ギルドとしては、ダンジョン街をどの貴族が管理するかについて口を出す気は無いが税金を変えられるのは困る、それが変わらないのであれば受け入れるそうだ。


また、争奪戦の最中に他の冒険者を進入禁止にする為に相応の対価を要求されたが、これについては国王との話し合いが必要だったのでその時は保留となった。


その翌日、国王に呼び出されてヘリスト家の力不足についての事を問われ、更にベリザリオ侯爵に”複合スキルカードを発見する事ができていない”と言われ、釈明の余地が無くなってしまった。


そこで事前に決めていた通りにダンジョンの争奪戦を提案したそうだ。


その際に、ベリザリオ侯爵は必要は無いと突っぱねたらしいが、”自信がないのですか?”と言ったら見事に乗って来たらしい。




「それで受けなければ侯爵の方こそ、力不足だと言っている様なものだからね。」


「ああ、そうだな。侯爵家はサロドルフが出てくるらしいぞ、舞踏会で本人が言ってた。」


「まあ、それ以外の選択肢は無いよね。管理を望んだ本人なんだから。」


「それで、いつから始めるんだ?」


「今は舞踏会の後始末もあるしそれぞれの貴族家の準備も必要だから、来月の1日から2ヵ月間の予定だよ。あと1ヵ月も無いけど早めに終わらせたいしね。」


「それだと、参加できない貴族も出て来るんじゃないか?」


「陛下は準備も能力の内だと言っていたから問題は無いだろう。それに途中からの参加もできるようになってる。」


「イルルトは慌てて帰ったが、それなら意味は無かったかもな。」


「そうなのかい?」


「ああ、サロドルフにダンジョンの事を聞いて慌てて帰ったよ。」


「うふふ、お陰でイルルト様と踊らずに済みました。」


「ははは、それは良かったね。」


「それで、ヘリスト家はどうするんだ?」


「それなんだけどね。私は王都を離れられないし、父上は主催者として争奪戦を取り仕切るように言われてしまったんだ。だから我が家から出られるのはキスティとエルネスだけなのだけど、エルネスは貴族学院に入っていて出られない、そうなるとキスティだけなのだよ。」


「また、キスティさんが潜るのか?危険だぞ?」


「分かっているが、キスティに頼むしか無いんだ。」


「お兄様、大丈夫ですよ、わたくしにも貴族としての誇りがあります。危険であっても何度でも潜ります。」


「すまないね、キスティ。」


「うふふ、お任せください。」


「まあ、そう言う訳だから、なるべく早くヘリストに戻る必要がある。シロウ達には帰りの護衛を頼みたいのだけど良いかい?」


「それはいつになる?明後日にはヴァルマの剣ができるはずだから、それ以降なら構わない。」


「それなら大丈夫だ。出立は3日後の予定だ。」


「分かった、それじゃ、俺たちもそれに合わせて行動する。」


「よろしく頼むよ。」









▽▽▽









舞踏会から2日後、ヴァルマの剣を受け取りにバルントの鍛冶屋に来た。



「こんにちは、バルントさん。」


「おう、今回はちゃんと入って来たな。」


「あはは、前は聞いてなかったからな。それで、短剣はできてるか?」


「おうよ、あたりめぇだ。」



そう言って奥の部屋から2本の短剣を持って来た。


鞘と握りは瑠璃色で刀身は空色の短剣だ。



「おお、綺麗だ。聖銀の透き通る様な白藍(しらあい)色も綺麗だけど、この空色も綺麗だ。」


「がっはっはっは、そうだろう。この濁りの無い色にするのが難しいんだ、ただ混ぜりゃ良いってもんじゃねえ、しっかりと混ぜてやらねぇと脆くなっちまう、この色にできんのが一流の証ってもんだ。」


「へぇ~。流石はドワーフだ。」


「がっはっはっは、褒めんなら酒を持って来い。それがドワーフにとって最高の褒美だからな。」


「ははは、そうか酒か。流石はドワーフだ。けど、すまん、今日は持ってこなかったんだよ。それに俺たちは明日ヘリストに戻るんだ。酒はマルスティさんに届ける様に言っておくから飲んでくれ。」


「おうよ、楽しみにしてんぞ。がっはっはっは。」


「ヴァルマ、どうだ?」


「おお、すげぇよ。きらきらして、すげぇ綺麗だ。」


「うん、綺麗。」


「それじゃ、俺たちは行くよ。世話になったな。」


「おうよ、元気でやれよ!」


「バルントさん。ありがとうな!」「ばいばい。」






屋敷に戻ると、明日の出立に向けて慌ただしく準備が進められていた。


今回も来る時と同様に馬車4台での移動になる。





「・・・何か慌ただしいな。本当に急ぎなんだな。」


「シロウ、手伝った方が良いか?」


「う~ん。下手に手伝うと、かえって邪魔になりそうだな。」


「そうだね。使用人達には悪いけど、彼らに任せた方が手早く済むよ。」


「マルスティさんはどうして此処に?」


「準備の様子を見に来たんだよ。剣はできてたのかい?」


「ああ、受け取って来た。あと悪いんだが、バルントさんにお礼の酒を送って欲しいんだ、樽で3つほど。」


「良いけど樽で3つもかい?ドワーフに酒って事は火酒だよね、1樽金貨1枚はするよ?」


「ああ、構わない。これは礼だからな、惜しむ必要は無い。」


「分かった、手配しておくよ。」


「ああ、頼んだ。」


「あとは、執務室で今回の報酬を渡すよ。」


「ああ、そうだった。忘れてた。」


「ははは、ここの所は色々あって忙しかったからね。」








そして、執務室に行くとマルスティは今回の報酬を渡してきた。



今回の件で勾留された期間の補償として1日銀貨3枚で17日分の金貨5枚と銀貨1枚、あとはエスコートの依頼分が白金貨1枚だ。



「最後はこれだね。」


「ん?これは?」



最後に渡してきたのはショルダーバッグだった。



「そのバッグにはシロウ用に作ったタキシードが入ってるよ。」


「えっ、タキシードはもう着ないが?」


「シロウ用に作ってあるから他の人では着れない、必要になるかは分からないけど、念のため持っていた方が良いだろう?」


「・・・そうか。では、ありがたく頂いておくよ。」


「そうしてくれ。それと明日からの護衛は前回と同額になる。ギルドには通してあるから、向こうに着いたら清算してくれ。」


「これが、今回の依頼書か。・・・ああ、確認した。」


「それと、今回はヘリストへの街道は込み合うと思うから、到着が遅れる可能性がある、もう襲撃はされないと思うが念の為に用心はして欲しい。」


「もう、移動を始めた貴族がいるのか?」


「それ程多くはないけど、王都を拠点にしている貴族が数家出立しているのを確認してるよ。」


「随分早いな。そんなんで準備は大丈夫なのか?」


「さぁ?だけど、早く行って先に潜りたいんだろうね。争奪戦の時は1階層からだけど、できるだけ潜って経験しておきたいんだろう。」


「そうか、それが裏目に出ないと良いがな。」


「それは、こちらが気にする事じゃないさ。じゃあ、頼んだよ。」


「ああ、任せてくれ。」








▽▽▽







舞踏会が終わってから慌ただしく準備をして今日を迎えた、


当初の予定では舞踏会が終わってからも1~2週間は王都に滞在するはずだったが、今回のダンジョン争奪戦の為に急ぎ戻る事になった。



「では、出立!」



今回も来た時と同様の隊列で、隊長のクスルカが声をかけてヘリストへ向けて出立した。


王都の東門を出て街道に合流すると、来た時よりも多い馬車がヘリストに向かって進んでいる。



「これじゃ、村の宿は泊れそうに無いな。」


「ええ、そうですね。貴族様の馬車は此処からは見えませんが、いらっしゃるはずですし、商人の方がこれだけいると村の規模では泊めきれないでしょうね。」


「ああそうだ。クスルカ隊長が今回は村には泊らないと言ってた。」


「ヴィニーロさんは聞いていたのですか?」


「キーアは聞かされて無いのか?来る時も村で襲撃されたからな、寧ろ野営の方が楽なぐらいだ。」


「なあ、俺も聞いて無かったんだが?」


「ん?そうなのか?シロウにはマルスティ様が伝えていると思ってたが。」


「いや、聞いて無い、まあ、どちらでもやる事は変わらないから良いけどな。」


「でも、これじゃヘリストに帰っても宿が取れないな。」


「シロウ様は領主邸にお泊り頂くように言われていますよ?」


「え?それも聞いて無いんだが?」


「何でも、シロウ様のご提案で今回のダンジョン争奪戦になったので、ご助言が欲しいとか。」


「助言って、もう必要は無いだろう?」


「どうなのでしょう?ですが、マルスティ様は私にヘリストでもシロウ様達のお世話をする様に言われましたので。」


「・・・もしかして、わざと言わなかったのか?」


「ふふ、かも知れませんね。シロウ様はすぐに逃げようとなさいますから。」


「・・・、ばれてる?」


「ええ、エンロンが言ってましたよ?何かと理由を付けて逃げようとする、と。」


「はぁ~。・・・そうか。」


















(・・・やっぱり逃げられないのか。)


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