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第7話 舞踏会

「シロウ、大丈夫か?」


「シロ、大丈夫?」


「あぁ、まぁ、何とか、な。」



舞踏会でキスティのエスコート役に決まってからの9日間は大変だった。


立ち方や歩き方などは自分を魅せる為の物で戦闘とは全く違い難儀した。


挨拶の仕方や話し方は、素が出るとおかしな言葉使いになってしまったり過度に丁寧になってしまったりと適度な塩梅が分からずよく注意された。


貴族の常識は平民の常識とは違い、爵位に派閥や役職などでは血筋が重視されていたり婚姻関係や利害関係など多岐に渡る関係が築かれている。


ダンスは舞踏スキルのお陰でそれ程苦労はしなかったが、キスティの方が身長が高いので見た目があまり良くないと言われ、それならばと練度を上げて美しく見えるようにと難度を上げられた。



「ともかく、この訓練も今日で終わった、明日の夕方には舞踏会だ、それが終われば解放される。」


「おう、頑張ったな、シロウ。」


「シロ、頑張った!」


「あぁぁあぁ、お前達だけだよ、俺を心配してくれるのは。」


「・・・シロウ。」「シロ。」




「シロウ様、いつまで、お2人を抱きしめているのですか?明日は舞踏会なのですよ?早くお休みになって下さい。」


「キーア・・・。はぁ、分かった。それじゃ、ヴァルマ、スヴィ、寝よう。」


「ぉぅ。」「うん。」


「ええ、そうして下さい。では、お休みなさいませ。」


「ああ、おやすみ。」「ぉぅ、おやすみ。」「おやすみ。」




(・・・明日でようやく終わる。・・・長かったなぁ。)






▽▽▽






「剣が無いのは、何だか落ち着かないな。」


「ふふ、仕方ありません。王城に帯剣して入れるのは護衛の2人だけですから。」


「クスルカとヴィニーロの2人か、代わって欲しいものだ。」


「彼らには妻がおりますから、代わるのは無理ですよ。」


「え!?結婚してたのか?」


「知りませんでしたか?」


「・・・聞いた事が無いな。」


「シロウさんは結婚なさらないのですか?」


「・・・。」


「ふふふ、そうですね、彼女たちとは結婚できませんからね。」


「コホン、それで、なかなか進まないのだが何かあったのか?」


「いえ、いつもこのぐらいですよ。王城への入城は序列もあり検査も厳しいですからね、どうしても時間がかかるのです。ですが、舞踏会が始まる前には王城に入れますよ。」


「そうなのか、貴族も大変なんだな。」






◇◇◇






「コホン、それでは行きましょう、キスティ様。」


「ええ、参りましょう、シロウ様。」



舞踏会の会場へは下位の貴族が先に入場して上位の貴族を待ち受ける。


この順番は貴族の序列を現していて、男爵・子爵・伯爵・侯爵・公爵の順になっており、それぞれの爵位の中でも後に呼ばれる方が王家に取って重要である事を意味する。


そして、ヘリスト家は伯爵位の最後に呼ばれる、これは”迷宮伯”は伯爵位と侯爵位の間である事を意味する。


ヘリスト家の後に呼ばれるのは侯爵家が4家と公爵家が2家だ。


ちなみに、騎士爵家は王城で開催される全てのパーティーに参加する資格が無い。



(・・・貴族ってのは、見栄の塊だな。・・・眩しい。)



彼ら彼女らが着ている装いは、それぞれの爵位に見合った装いの中で自分を目立たせる為の装いになっている。


使える貴金属は男爵と子爵は銀までで、伯爵と侯爵が金まで、そして公爵が白金まで使える。


後はそれぞれの爵位でどの程度の量まで使えるのかが決まっている。


そして、王族にその縛りは無い。






サンアーロ・ヴァロ・エクルース国王の開催の挨拶が終り舞踏会が始まった。


一番最初に踊ったのはこの国の第二王女ビルティナ・ディラ・エクルースと婚約者のサロドルフ・ベリザリオだ。




もう少し経ったら俺たちもダンスを踊る事になる。




「やぁやぁ、キスティ嬢、まさか本当に、この様な者にエスコートを任せるとは、一体どうされたので?」


「・・・イルルト様。」


「全く、この様な者を王城に招き入れるとは、マルスティ殿はご自分の立場を理解しておられるのかお聞きしたい所ですな。」


「しかし、イルルト様。」


「あ~、いやいや、勿論、私は分かっておりますとも。キスティ嬢がこの様な冒険者風情にエスコートを任せる苦痛は並々ならぬものでしょう。」


「あの、ですね。」


「ええ、分かっております。おい、冒険者、お前は帰って良いぞ。あとは私がキスティ嬢をエスコートする。」


「イルルト殿、申し訳無いですがそう言う分けには行きません。マルスティ殿にキスティ様のスコートを頼まれたのは私なのです。」


「・・・何を言っている、婚約者である私がエスコートすべきであろう?」


「まだ、候補だと伺っていますが?」


「シロウ様の言う通りですよ、イルルト様。」


「ベリザリオ侯爵のお声掛かりなのだぞ?決まったも同然では無いか?」


「同然ですか。しかし決定はしていない。ですよね?」


「冒険者風情が貴族の婚約に意義を申し立てるか?」


「事実を言ったまで、ですが?」


「だがな!」


「キスティさん、お久しぶりですね。」


「王女殿下!?」



イルルトとの話しに割って入って来たのはこの国の第二王女ビルティナ・ディラ・エクルース王女殿下だった。


全員が貴族の辞宜(じぎ)で迎え入れる。



「キスティさんが踊らないのでどうかしたのかと思い来てみたのですが、何かあったのですか?」


「いえ、少々お話をしておりまして。出遅れてしまった様ですね。」


「まあ、それはいけませんわ。キスティさんも踊って下さいな。エスコートは、貴方ですの?・・・初めて見る方ですわね?」


「王女殿下、お初にお目にかかります、私はシロウと申しまして、普段は冒険者をしております。本日はマルスティ殿にキスティ様のエスコートを任され此処におります。」


「ああ、お父様にお聞きしましたよ。ダンジョンでキスティさんを助けたとか。」


「ええ、偶然ですが。困ってらした様なのでお声をかけたのです。」


「まあ、まあ、それはロマンチックですわね。危急に駆けつける勇者様の様ですわ。キスティさんが羨ましいですわ。」


「ふふ、そうですね。あの時はもう駄目かと思っていましたから。」


「良いですわね、サロドルフ様はもしも私がその様な事になったら助けに来て下さいますかしら?」


「勿論だとも、ビルティナ。」


「まあ、本当ですか?サロドルフ様。」


「当然じゃないか、愛しい婚約者の為ならば何処へでも駆けつけるさ。」


「サロドルフ様、お久しぶりで御座います。」


「やあ、イルルト殿、元気そうで何よりだよ。」


「ええ、ですが、この冒険者が。」


「あぁ、そうか。本当にマルスティ殿は冒険者風情にエスコートを任せたのか、やれやれ、これでは折角の提案もどうなる事か。」


「提案、ですか?」


「ああ、そうだよ。イルルト殿はまだ聞いてない様だけれど。マルスティ殿が提案してきたのだよ。ダンジョンを賭けた争奪戦をね。」


「・・・ダンジョン、争奪戦。」


「素直に私にダンジョンを任せれば良いものを、父上が陛下に奏上したのだけれどね、それならば他の貴族達にも機会を与えるべきだとか言い出してね。」


「ほう、なるほど、それでは我が子爵家も参加できますか?」


「ああ、イルルト殿が参加する事は可能だよ?けれど、我が侯爵家は私が代表となって勝利を納める事になっている。」


「な、なるほど、そうですな。サロドルフ殿が参加するならば、勝利は間違いありませんな。はっ、はっは。」


「ですが、私としましてはあまり危険な事はしてほしくありませんわ。」


「ははは、ビルティナ。危険な事など何もありはしないさ。君が私の勝利を祈って待っていてくれるのなら、私が君に勝利をプレゼントしよう。」


「まあ、それは楽しみですわ。それでしたら私はサロドルフ様の勝利をお祈り致しますわ。」


「ああ、そうしてくれ、私の勝利の女神。」


「あぁ、いけませんわ、キスティさんにダンスを勧めに来たのに話し込んでしまいましたわ。」


「あぁ、そうでした。まだ踊ってませんでした。」


「キスティさんもダンスを楽しんでくださいね。それではサロドルフ様行きましょう。」


「ああ、そうだね、ビルティナ。」




「イルルト様、どうかなさいましたか?」


「・・・申し訳ないが、私はすぐにでも父に確認せねばならない事ができてしまったので、今日はキスティ嬢のお相手をする事ができなくなりました。」


「そうですか、それでは仕方ありませんね。それではまた。」


「えっ、え、ええ、それでは失礼します。」





「それではキスティ様、お手を。」


「お願いしますね、シロウ様、」






こうして、ようやくダンスを踊る事ができた。


懸念していたように、ベリザリオ侯爵は国王にダンジョンをサロドルフに管理させるように言ったらしい、もしもそのまま何も手を打たなければそれが現実になっていたかも知れない。


あの日からお互いに忙しくしていたので、マルスティがどう対応したのかは聞いていなかったが思わぬところで聞く事ができた。


イルルトはこの件を聞いていなかった事で焦っているのだろう慌てて帰っていたが、ニクライネン家はどうするのだろうか。



「シロウ様、足元が疎かになっていますよ?」


「ああ、すまない、考え事をしていてな。」


「コホン、シロウ様。」


「あぁ、申し訳ありません。キスティ様。


「はい。」



この舞踏会は出会いの場でもあるのでパートナーを変えて踊るのが普通で、続けて2度同じ相手と踊る事は結婚が決まった事を意味する。



「キスティ様はこの後、どうされますか?」


「・・・そうですね。誰かと、と言っても。」


「キスティ嬢、私と踊って頂けませんか?」



そう言ってキスティをダンスに誘ったのは、イルルトとは別の婚約者候補でインライネン男爵家の長男でダニスモ・インライネンだ。


次期当主とは言え、男爵家では家格が不足するのだが、それでも彼が候補に上がったのはインライネン家が王族派でヘリスト家とは親しい間柄のためだ。



「ダニスモ様、・・・ですが。」


「私もまだ一応は候補ですので、ははは、大丈夫です、分は弁えていますから。」



彼の言う通りで、彼との婚約はベリザリオ家が介入して来た時にほぼ無くなっている。



「ええ、分かりました。」



その後、もう1人の婚約者でスオルサ伯爵家の次男でヘルマンニ・スオルサとも踊る事になった。













(これで、一方的にダンジョンを奪われる事は無くなったが、どうなるか。)


---王家のミドルネームについて。---


王家には2つのミドルネームを付けました。


国王:サンアーロ・ヴァロ・エクルース

王女:ビルティナ・ディラ・エクルース


この”ヴァロ”は直系と言う意味で”ディラ”は傍系と言う意味で付けました。


国王と正妃、あとはその間に生まれた子が”ヴァロ”。

側妃とその間に生まれた子が”ディラ”。


それ以外に意味はありません。


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