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第6話 苦肉の策

ベリザリオ侯爵が帰り、今後の事を話し合うが既に打つ手が無い、だからと言って国王の判断に委ねるだけではどうなるかが分からない。



「マルスティさん、一先ず現状を整理しよう。」



事の始まりは、半年前に帝国で見つかった複合スキルカードだ、この発見は冒険者ギルドから皇帝に伝わり献上された。


この複合スキルの内容はともかく、新たなスキルと言う事でこの国でも話題となった。


そして、冒険者達が続々とダンジョンに潜るようになったが、それと同時に貴族達も部下や懇意の冒険者に複合スキルカードの捜索を命じた。



「俺たちもダンジョンで貴族の関係しているパーティに会ったな。その時はまだ草原階層だったが。」


「他にもいると思うけど、冒険者を雇ってダンジョンに潜るのは別に悪い事でも無いからね。」


「まあ、そうだよな。至って真っ当な選択だからな。」



そして、ヘリスト家でも懇意の冒険者に捜索を依頼していたが見つからず、キスティがパウラとキーアに騎士を3人連れてダンジョンに潜った。


結果としては散々なもので、複合スキルカードを見つけるどころか貴重な騎士3人を失う事になってしまった。



「俺たちが見つけなければ全滅していたのは確実なんだよな。」


「シロウのお陰でまたキスティに会う事ができたんだ、感謝してるよ。」


「あぁ、いや、そんなつもりで言ったんじゃないんだが。」


「分かってるよ、けど感謝は感謝だ。」


「はぁ、律儀だな。感謝は受け取る。それで話しを戻すが、騎士達でダンジョンを探索できると思うか?」


「どうだろうね、他の階層はともかく迷宮の階層は罠が多くて罠察知や罠解除を持っている人がいなければ全滅するのは確実だ。」


「そうだよな、俺もヴァルマとスヴィがいなければ次の階層にすら行けないし、複合スキルカードを探すどころじゃなくなる。」


「まあ、シロウ達は少々おかしいけどね。」


「ん?おかしいとは?」


「いや、どうやったら3人で20階層まで行けるのか。普通は6人パーティで15階層の守護者を倒すんだよ?シロウ達はあのシールドリザードをどうやって倒したんだい?」


「ああ、そうか、あの守護者は硬いからな。まあ、倒し方は秘密だ。」


「それは残念だ。」



そして、キスティが王都に来る際に2度襲撃されている。


1度目は盗賊の襲撃だったが、頭目の最後の言葉が何者かに唆された言を物語っていた。


そして2度目は村の宿屋に侵入して来た3人の内2人を捕らえたが、朝には死亡していて実態は把握できていない。


これらを指示したであろう人物は未だ分かっていないが、キスティと話し合った時に複合スキルカードを狙った犯行である可能性が高いのでは無いかと。



「もしも、ヘリスト家が複合スキルカードを手に入れていたとして、それを狙う犯人の目論みは?」


「それは、奪って自分の物にする分けだから、その後に”自分が発見した”と言って陛下に献上すれば功績になるね。」


「ああ、そうだ。実際には見つけて無いからそんな事はできないが、犯人側から見た時に”隠し持っている可能性”を考慮したら狙う理由としては十分だろ?」


「功績を狙っての犯行なら理解できるね。」


「そうなんだが、どうにも手口が雑と言うか焦っている感じもするんだよ。そう考えると複合スキルカードを手に入れる事より献上される事の方が困るのでは?とも思えるんだ。」


「自分が功績を上げるよりもヘリスト家が功績を上げる事が困る、と?」


「そうだ、盗賊に襲われた時にクスルカさんに聞いたんだよ、心当たりがあり過ぎる、と。これってヘリスト家を良く思わない貴族がいるって事だろ?」


「そりゃあ、我が家は通常の貴族とは全く違う扱いを受けているからね。」


「そうだな。だからこそ功績を立てられたくない。」


「功績を立てようが立てまいが、我が家の状況は変わらないよ?」


「キスティさんは”他家に後れを取れば、能力を疑われても仕方が無い”と言っていたぞ?」


「”後れ”か。だが、それだけで領地を取り上げる事など無いと思うけど?」


「領地ならそうだろう。けど、あの侯爵は言っただろ?”ダンジョン”って。」


「・・・まさか、領地やヘリスト家では無く、ダンジョンを奪う事が目的?」


「そう考えれば、辻褄が合わないか?ダンジョンの管理を手中に納める為にはヘリスト家に功績を立てられては困る、と。」


「・・・つまり、シロウは今回の犯人はベリザリオ侯爵だと?」


「断定はできないが、俺の知る中では最有力候補だな。あのイルルトを婚約者に押してるのもその一環だろう。」


「そう言えば、イルルト殿と婚姻すれば助力をする、とか言っていたな。」


「それを足がかりに、ダンジョンを奪う目的だと考えれば?」


「確かに、2重の策略か。」


「手っ取り早いのは、侯爵達が言ったサロドルフに管理させる事だろう。イルルトは保険のようなものだな。」


「なるほど。」


「そして、ビルティナ王女と婚約者のサロドルフがダンジョンは自分達が管理します。って言えばどうなる?王族と侯爵子息だ、ヘリスト家と天秤にかけても不思議じゃ無いと思うが?」


「・・・確かに、かなりまずい状況だ。」


「ああ、そうだな。ヘリスト家とダンジョンを切り離してしまえば”迷宮伯”では無くただの伯爵だ、そうなれば、あとは貴族の枠組みでどうとでもなる。」


「・・・こちらには、それを止める手段が無い、か。」


「そう言う事だな。他に何か功績を立てる事はできないか?」


「そんな手段があれば苦労はしないよ。」


「・・・であれば、最終手段としては、ダンジョンを賭けるしかない、か。」


「ダンジョンを賭ける?」


「ああ、複合スキルカードを発見した貴族にダンジョンの管理を任せる、と。」


「むざむざ奪われるくらいなら、って事か。」


「ああ、それもルールを設けてダンジョンの争奪戦にすれば良い。」


「誰も見つけられなかったら?」


「それこそ、ヘリスト家が力不足だから見つけられない訳では無い、と言う事を証明できるだろ?誰も見つけられないのだから。」


「なるほど、分の悪い賭けではない、か。」


「まあ、アルマスさんと冒険者ギルドがどう判断するかにもよると思う。」


「そうだね、でも、この線で父上には話しを通してみるよ。このまま手をこまねいていてもダンジョンを奪われればヘリスト領の財政自体が傾きかねない。」


「あとは、ルールをどうするか、だな。」


「例えば?」


「そうだな、まずは開催期間だな、長々とダンジョンに掛かり切りになると、参加する貴族も冒険者ギルドも困るだろうから、・・・1ヵ月じゃ短い、2ヵ月ってとこかな?」


「それは幾ら何でも短くないか?」


「そこは、侯爵を煽ってみるしか無いと思う、”侯爵家は優秀なのですよね?”とか言って。」


「ああ、確かに”精鋭”って言ってたからね。」


「次は、参加する貴族に対する条件としては、その貴族家を代表する者が最低1人は参加する必要があるな。」


「なるほど、その貴族家がダンジョンを管理するなら能力を示せ、と。」


「あとは、1貴族家に対して参加できるのは1パーティ6人まで。これで数的優位を排除すればその貴族家の能力だけで勝負できる。」


「あぁ、高位の貴族は大量の人員を送って来そうだからね。」


「最後は、参加者は新しいダンジョンカードを発行してもらい1階層からスタートする事。これは今まで潜った事が無い参加者が出遅れない様にする為だ。」


「経験者と未経験者では優劣がついてしまうけど?」


「それは仕方が無い、そもそも未経験者がダンジョンを管理する事などできないだろ?」


「ああ、そうだった。管理者を選ぶのにそこまで気にする必要は無かったね。」


「まあ、こんな所かな。あとはこれで通ったらいつ始めるかだな。いきなり明日からって分けにも行かない。」


「ははは、そうだね、まずはこれで通るか父上に確認してみるよ。」


「その前に侯爵が動く可能性の方が高いぞ。」


「うっ、そうだった。・・・そうなったら、父上には事後報告になってしまう。」


「まずは、冒険者ギルドに話しを通して、ギルド側の意向も聞いておいた方が良いと思う、ダンジョンに潜る冒険者を管理しているのはギルドだからな。」


「分かった、そうするよ。」


「じゃあ、俺は戻るよ、今日の予定が熟せてないからな。」


「ああ、そうだ、ダンジョンの前に舞踏会だったね。」


「はぁ、俺にとってはそれが一番面倒なのだけど。」


「すまないが、頑張ってくれ、としか言えないよ。」


「引き受けたからには頑張るさ。」











(・・・はぁ、本当に貴族は面倒だ。)


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 国王の許しを得ずにダンジョンの管理権を賭けるって前話と矛盾してるような・・・
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