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第5話 ベリザリオ侯爵

今日も朝からヴァルマとスヴィの戦闘訓練をしている。



「ふっ、せぃ、はっ。」


「ヴァルマ、斬撃に拘り過ぎるな、ナイフの時とは違うんだ、刺突も含めた攻撃の形を作るんだ。」


「おう!ふっ、せぃ、はっ。」


「スヴィ、相手を近づかせるな、間合いを保って優位な状況で攻撃するんだ。」


「ふっ、はぁ、たぁ。」






「シロウ様、マルスティ様がお呼びです。」


「はぁ~。また何かあったのか?」


「ええ、その様です。」


「分かった。ヴァルマとスヴィは訓練を続けてくれ、ちょっと行ってくる。」


「おう。」「うん。」


「では、執務室へご案内します。」


「ああ、頼む。」




エンロンに案内されて、マルスティの執務室に向かった。




「マルスティ様、シロウ様をお連れ致しました。」


「ああ、入ってくれ。」


「マルスティさん、また何かあったのか?」


「ああ、そうなんだよ。今度はラーフタヴィ・ベリザリオとその子息サロドルフ・ベリザリオが来るんだよ。」


「・・・ベリザリオって確か。」


「そう、イルルト殿をキスティの婚約者にと言ってきた、あのベリザリオだよ。」


「もしかして、昨日の件か?」


「だろうね。」


「それで、どうするんだ?」


「まあ、断るしか無いんだよね、イルルト殿にエスコートをさせたらそこで婚約者が決定してしまうかも知れないからね。」


「確か侯爵だったよな。それで大丈夫か?」


「まあ、そこは正論で行くしかないだろうね。それで、侯爵からシロウにも同席の指示があってね。」


「・・・またか。」


「ははは、すまないね。」


「笑いながら言う事じゃないだろう。・・・まぁ、仕方がないか。」


「助かるよ。」


「それじゃ、俺は戻るから、その時に呼んでくれ。」


「ああ、分かった。」






そして、昼食後にエンロンに呼ばれ応接室に行くと、ラーフタヴィ・ベリザリオ侯爵と子息のサロドルフ・ベリザリオが来ていた。






「マルスティ様、シロウ様をお連れ致しました。」


「ああ、入ってくれ。」


「失礼します。」


「閣下、こちらが噂のシロウ殿です。」


「お初にお目にかかります、冒険者をしております、シロウと申します。」


「ほう、これが。いやいや、すまないな。見た目にそぐわぬ実力があるのだろう。しかしなマルスティ殿、いくら従兄殿がお役目で王都を離れたとは言え、この様な冒険者にキスティ嬢を任せるのは些か早計では無いか?」


「彼はこれでもCランクの冒険者ですので武に問題は無いかと?」


「ほう、Cランクか、だがな儂らの高貴なる集まりに冒険者風情を招くのは儂らに対する侮辱になると思わなかったのか?」


「侮辱、ですか。つまり閣下は陛下の決定は間違いだと?」


「な、何故そうなる。儂はヘリスト家の過ちを事前に止める為にこうしてわざわざ出向いて来ておるのだぞ!」


「いえ、彼がキスティのエスコートをする事は陛下に許可を頂いております。つまり、この件につきましては陛下の決定である、と言う事です。」


「はっ!だからどうした。その様な事を儂は認めておらん。おい、そこの冒険者、お前が辞退すれば済む事だ。エスコートを辞退してさっさと王都から出て行け、今ならば儂の温情で白金貨1枚を付けてやる。」


「僭越ながら侯爵閣下にお聞きしたいのですが、一度引き受けた事を断るのは貴族では当たり前の事なのでしょうか?」


「何を馬鹿な事を、儂ら高貴なる貴族がその様な事をするはずが無かろう。」


「そうですか、では、その逆はどうでしょうか?貴族の方が交わした約束を一方的に反故にされたらどの様に思われますか?」


「その様な痴れ者には相応の報いがあるであろう。」


「なるほど、それであれば、私も断るわけには参りませんね。」


「ぐっ、だがな。」


「閣下、この件につきましては既に決定しております。いくら閣下と言えども迷宮伯家の決定を覆す事はできませんよ。」


「迷宮伯などと、ダンジョンが無ければただの伯爵であろう。図に乗るのも大概にしておく事だな。」


「それでも、国が決めた事ですので。」






「ところでマルスティ殿、ヘリスト家は例の複合スキルカードを見つける事ができたのですか?」


「サロドルフ殿、・・・まだ、発見されていません。」


「なるほど、帝国で発見されたのは半年も前の事であるにも関わらず、未だに発見できないと、父上はこの様なヘリスト家をどう思われますか?」


「ははは、そうだな。迷宮伯などと言っても所詮は伯爵だからな、力不足なのだろう。だが、イルルト殿とキスティ嬢が婚姻すれば我が侯爵家もニクライネン家の寄り親として存分に助力できるのだがな?」


「ああ、そうです!父上、如何でしょう。ビルティナと婚姻した際に私がダンジョンを受け持ちましょう。そうすればヘリスト家はダンジョンから解放されますし、この様な不甲斐ない様を晒さずに済みますよ?」


「ほぉ、確かにそうだな。伯爵位では力不足、であれば侯爵家である儂の預かりとするのが良かろう。」


「閣下、それはヘリストをベリザリオ侯爵家が管理する、と言う事ですか?」


「マルスティ殿、勘違いしてもらっては困るな。サロドルフにダンジョンの管理をさせれば良い、と言っているのだよ。」


「ですが。」


「くどいぞ!・・・なあ、マルスティ殿、儂はヘリスト家の事を思えばこそ、この様な事を言っておるのだ。」


「そうですとも、マルスティ殿。私がダンジョンを管理すればすぐにでも複合スキルカードを見つけてみせますよ。」


「ですが、サロドルフ殿はどうやって見つけるおつもりで?」


「なに、簡単な事ですよ。我が侯爵家には精鋭の騎士達がおりますので、彼らをダンジョンに潜らせればすぐですよ。」


「はぁ、騎士、ですか。」


「ははは、マルスティ殿、こう言っては申し訳無いが、我が家の騎士達は貴殿の所の騎士達とは違い”精鋭”なのですよ。ダンジョン如きに後れを取るものはおりませんよ。」


「ぐっ、そう、ですか。」



マルスティもキスティを守って亡くなった騎士達を思うと、怒りが込み上げてくるのだろう、強く拳を握っている。



「ははは、そうと決まれば陛下に奏上せねばならん。」


「ええ、そうですね、父上。」


「ああ、それならキスティ嬢を誰がエスコートしようが構わん。」


「イルルト殿には残念でしょうが、致し方ありませんね。迷宮伯家の最後のわがままです、認めて差し上げましょう。」


「では、儂らは行くとするか。これからが大変だからな。」


「ええ、そうしましょう、父上。」






そして、言いたい放題を言うとベリザリオ親子は帰って行った。







「それで、これからどうするんだ?あの侯爵はダンジョンをサロドルフに管理させると言っていたが?」


「そうだね。けど、そう簡単に管理者を変える事などできないはずだ。彼が例え侯爵と言えど他にも侯爵はいるし、そもそも陛下がお許しになるとは思えない。」


「・・・、サロドルフが言っていたビルティナって王女の事だよな?」


「そう、ビルティナ・ディラ・エクルース王女殿下だ。サロドルフ殿は王女殿下の婚約者なんだよ。」


「それじゃあ、寧ろ許されそうじゃないか?娘の婚約者の願いなら、聞くんじゃ無いのか?」


「可能性は無い、・・・事も無い、か?」


「はぁ、どうするんだよ。」


「父上がカードを見つけてくれれば良いのだけれど、そう簡単に見つかるとも思えないんだよね、もう半年も探しているのだから。」


「だろうなぁ。けど、そうなると打つ手が無いな。」


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