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第4話 舞踏会の準備は大変

「シロウ、どうしたんだ?」「シロ?」


「ヴァルマ、スヴィ、・・・はぁ~、ちょっと面倒な事になったんだよ。」



それから2人に舞踏会でキスティをエスコートする件を話した。



「それって、大丈夫なのか?」


「シロ。」


「どうなんだろうか、それに貴族の集まりなんて出たくも無いしな。」


「そうだよなぁ、オレだって嫌だし。」


「誰か止められそうな人はいないのか?」


「止められそう・・・、あ!1人いる。アートラさんなら止めてくれるかも!」


「ああ、マルスティの母親だもんな。」


「良し、そうと決まればすぐに行ってくる。」


「おう。」「うん。」






それから部屋を出てメイドのキーアに頼み、アートラに面会を申し込んだ。


そして許可を得て部屋に入ると、アートラとキスティがお茶を楽しんでいた。





「アートラさん、マルスティさんを止めてくれないだろうか?」


「シロウさん、止めるとは、何を止めるのですか?」


「いや、あの、今度の舞踏会の事なんですけど。」


「ええ、聞きましたよ。何でもシロウさんがキスティのエスコートをして下さるとか。ありがとう御座います。」


「いや、ですが。その、俺は冒険者であって、ですね。」


「シロウさんは、わたくしをエスコートするのはお嫌ですか?」


「いや、その、嫌と言うよりもですね。・・・そもそも、本来は誰かエスコートする方がいたのでは?」


「えぇ、従兄に頼んでいたのですが、アンティラの近くにある山で魔物の群れが発見されたらしく、町の防衛と魔物の討伐に赴いてしまったのです。」


「・・・魔物の群れ、ですか。」


「あの町は北の山脈が近いですから、おそらくはリザード種でしょうね。」


「群れを成すリザード種と言う事はフォレストリザードですかね?」


「そうは思いますが、確証はありませんね。」


「おほほ、ですから、シロウさんに引き受けて頂いて感謝しているのですよ。」


「ええ、お義母様の仰る通りです。」


「おほほ。」「うふふ。」


「いや、引き受けた分けでは。」


「シロウさん。」


「はい、何でしょう。」


「もしも、シロウさんに引き受けて頂けなければ、キスティはあのイルルトさんにエスコートされる事になるかも知れないのですよ?」


「うっ、あの人は。」


「ふふ、そうでしょう。わたくしもあの方にエスコートされるのは、ちょっと。」


「・・・・・・。はぁ~、分かりました。引き受けます。」


「おほほ、ありがとう御座います。シロウさん。」


「うふふ、宜しくお願いしますね。シロウさん。」


「・・・はい。」






結局、断る事ができずエスコート役を引き受ける事になってしまった。






「シロウ様、仕立屋が来ておりますので応接室へお願いします。」


「エンロンさん、・・・はぁ~。分かった。」


「それと、シロウ様。今後は私たち使用人に対して敬称を付けずにお呼びください。」


「えっ、何故?」


「それは、シロウ様がキスティお嬢様の婚約者候補になられたからです。」


「いや、待て、なって無い、なって無いぞ!」


「ですが、舞踏会ではキスティお嬢様をエスコートなさるのですよね?」


「そりゃあ、そうだが。これは依頼だろ?」


「同じ事で御座います。エスコートをするとはそう言う事です。」


「くっ、その件はマルスティさんに確認してからだ。」


「畏まりました。」






それから、サイズやらデザインだのと、1時間以上をかけてタキシードの作製依頼をする事になった。






「はぁ~、疲れる。男の服装なんて何でも良いだろうに。」


「そう言う訳にまいりません、エスコートする女性に合わせて男性も着飾らなければ恥を掻くのはエスコートされている女性ですので。」


「くっ、エンロンさん。もしかして面白がってる?」


「いえいえ、とんでもございません。”あの”シロウ様がたじたじになっているからと言って、その様な事は、御座いません。」


(・・・初めて会った時に引っかけた事を、根に持ってるんじゃ無いか?)


「それでは、次は・・・。」


「ちょっと待ってくれ、その前にマルスティさんに会えないか?」


「ええ、次は夕食ですので、その後にお話ができるよう取り計らいましょう。」


「え、もうそんな時間だったのか。」


「いつもの様にお食事をお持ちしますのでお部屋でお待ちください。」


「ああ、分かった。」






その後、ヴァルマとスヴィと夕食を済ませるとエンロンに呼ばれマルスティの執務室に向かった。






「マルスティ様、シロウ様をお連れ致しました。」


「ああ、入ってくれ。」


「こんな時間まで仕事か?」


「まあね、父の代わりにする事が多くて大変なんだよ。それで、話しとは?」


「まず1つ、本気で俺にエスコートさせるつもりなのか?貴族でも何でも無いただの冒険者に。」


「ふぅ、まだ決心がついてない様だね。」


「いや、そこはもう諦めてるんだが、肩書に問題があるんじゃないか、って話しを聞きたいんだ。冒険者が王城に入る事だって本来ありえないだろ?」


「まあ、普通ならね。シロウも聞いているだろうけど、我が家は”迷宮伯”と呼ばれる特殊な爵位を得ている。そして王族と宰相以外には我が家に対して命令する事はできないんだよ。」


「・・・つまり。」


「そう、王族と宰相の許可があれば、問題は無いって事だね。」


「くっ、・・・で、許可は?」


「勿論、取れているよ。」


「ぐっ、・・・そうか。じゃあ、次だ。さっきエンロンさんに敬称を付けないで呼ぶ様に言われたんだが、これは依頼で実際に候補になった分けじゃ無いよな?」


「事実はどうあれシロウが婚約者候補になったと周囲には見られるんだよ。これは対外的なものだからそこまで気にする必要は無いけど、念の為にそうする様に言ったんだろうね。」


「マルスティ様の仰る通りです。」


「ほらね。」


「ぐぅ。・・・はぁ、仕方ないか。」


「まあ、そこは”慣れ”だね。」


「けど、依頼が終わるまでだからな。」


「まぁ、それは分かっているよ。ああ、そうだ、これを使ってくれ。」


「・・・はぁ、こんな事にスキルカードを使うなんて。」


「念の為に幾つかのカードを確保してあるんだよ。シロウには必要だろ?」


「・・・そうだな。勿体ない気もするが、”スキル取得”。」



マルスティに渡されたカードからスキルを取得する。



「はぁ、・・・舞踏のスキルが付いたぞ。」


「ははは、スキルを取得して、ため息をつく人なんて初めて見たよ。普通は喜ぶものなんだけれどね。」


「内容にもよるだろ?舞踏なんて、今回以外に使い道が無いんだから。」


「それでも、有って困るものじゃないだろ?」


「・・・まぁな。」


「それじゃ、シロウは明日から、ダンスの訓練とマナーやエスコートの仕方を教わってくれ。予定はエンロンに任せる。」


「はい、畏まりました。」


「ああ、分かった。それじゃ失礼する。」


「ああ、頑張ってくれ。」










「はぁ、結局こうなるのか。」


「シロウ様、明日からのご予定ですが。」


「エンロンさん、もう決まっているのか?」


「シロウ様。」


「ああ、分かったエンロン、これで良いか?」


「はい、そうして頂けると我ら使用人一同も安心できます。」


「安心、ねぇ。まあ良い、それで朝は2人と戦闘訓練をするからそれ以外の時間で頼む。」


「戦闘訓練ですか?しかし。」


「これは、絶対だ。俺たち戦う者にとって戦闘訓練は必須なんだよ。騎士達だって毎日訓練してるだろ?」


「ええ、まぁ、・・・分かりました。では、その様に調整させて頂きます。」


「ああ、頼む。」




エンロンが組んだ予定は、朝にヴァルマとスヴィの2人と戦闘訓練をして、その後アートラから社交のマナーを学び、午後からはオルマンニから貴族の事を学んで最後にキスティとダンスの練習だ。


これを舞踏会まで9日間行う事になる。




「・・・マジか。」


「これでも、舞踏のスキルが得られた分、ダンスの時間は減らしているのです。」


「スキルが無かったら、9日でダンスを覚えろってのは、無理だな。」


「ええ、これはヘリスト家だからこそできる事です。」


「・・・感謝はできないけどな。」


「結果を出して頂ければ十分です。」


「・・・結果、ねぇ。」











(・・・エスコートするだけなんだから、結果も何も無いだろうに。)


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