第2話 鍛冶師バルント
「・・・・・・・・・、シロウ様?」
「え!?な、何でしょうか?キーアさん。」
「むぅふぅぁ~。」「うにゃぁ。」
「・・・何故、ご一緒でお休みに?」
「え?けど、ベッドはこれしか。」
「はぁ~、あのですね。こちらに従者用の別室があるのですよ?」
「・・・・・・、はぁぁぁ~!?、いやいや、聞いてませんよ?」
「・・・、そう、ですか。まあ、それは宜しかったですね。」
「え!?いや、その、あの、まぁ、ねぇ。」
起きたら、2人に腕を掴まれていたのでベッドから出られず、部屋に入って来たキーアに見られてしまった。
悪い事をしている分けでは無いのだが、気まずい。
「コホン。シロウ様、本日は朝食の後にギルドと鍛冶師の所に赴く予定となっております。馬車はエンロンが用意しますので、お仕度をお願いします。」
「・・・はい。」
キーアはそれだけ告げると部屋を出て行った。
「はぁ~。・・・ヴァルマ、スヴィ。起きてるだろ?」
「・・・ぉぅ。」「ぅ。」
「支度をしよう。」
「ぉう。」「うん。」
朝食を済ませると、エンロンと共に馬車に乗り冒険者ギルドに向かった。
「王都のギルドにしては小さくないか?」
「シロウ様、此処は冒険者ギルド王都北東支部と言いまして、王都にあるギルドは全部で5つ、王都の中央広場にエクルース王国本部があり、その他は北東・北西・南東・南西の外門の近くに4つの支部があります。」
「全部で5つ、何でそんなにあるんだ?」
「王都は広いですから、南東と南西はまだしも、北東と北西の門から本部に行くには半日近くかかりますので、業務を分割してそれぞれの外門近くに支部を作ったそうですよ。」
「・・・半日、それは確かに遠いな。」
「ええ、今日こちらの北東支部に来たのは、この後に行く鍛冶師が北にお店を構えているので、此処が一番近いからです。」
「そうか、わざわざすまんな。それじゃあ、ちょっと行ってくる。」
「はい、行ってらっしゃいませ。」
ギルドに入るとそのまま受付に向かう。
「ようこそ、王都北東支部へ。どの様なご用件でしょうか?」
「ああ、依頼の完了報告をしに来た。これを頼む。」
そう言って、依頼書を提出した。
「畏まりました。確認をして参りますので、少々お待ちください。」
(確認?それって、何をどう確認するんだ?・・・相変わらず謎が多いな。)
「確認できました。お支払いはこちらになります。最後にこちらの受取証にサインをお願いします。」
「受取証?」
「はい、こちらは依頼主が貴族様の場合に、後の揉め事にならぬよう、受け取られた事を報告する為の証明証になります。」
「なるほどね。分かった。」
最後に受取証にサインをして、これで今回の護衛依頼が完了した事になる。
「それでは、失礼する。」
「はい。またのお越しをお待ちしております。」
冒険者ギルドを出て馬車に乗り、次の目的地である鍛冶師の所へ向かう。
「シロウ様、此処が聖銀を扱える鍛冶師バルント様の鍛冶屋です。」
「・・・、此処か?本当に?」
「・・・えぇ、場所は、・・・合ってます。私も初めて来たので。」
「壊れそうだぞ?」「・・・危ない。」
連れて来られた鍛冶屋は、いつ倒壊してもおかしく無いような、ぼろぼろの建物だった。
「ま、まぁ、入って見れば分かるか。」
「そ、そうです、ね。」
「こんにちは~!」
「・・・。」
「誰も出てきませんね?」
「お~い。誰か、いないか~!」
「うるせぇ!でけぇ声を出すんじゃねぇ!」
「おぉう、そりゃすまんな。けど、呼んでも出て来ないから。」
「あぁん?何だ、聞いてないのか?」
「何をだ?」
「此処に来たってこたぁ、誰かの紹介だろ?この店には俺しかいねぇから、客は奥に入ってくんだよ。」
「あぁ、勝手に入れ、って事か。」
「そうだ。んで、誰の紹介だ?」
「はい、ヘリスト家のご当主様、アルマス・ヘリスト様よりの紹介になります。」
「ん?おめぇは、あいつんとこのもんか?」
「えぇ、私はへリスト家で執事をしております。エンロンと申します。」
「そうか、あの坊主の紹介は初めてだな。」
「・・・坊主、ですか。失礼ですが・・・。」
「あぁん?あんなのは坊主で十分なんだよ。」
「コホン、良いか?アルマスさんと何があったかは知らんが、バルントさんでいいんだよな?」
「おうよ、俺がバルントだ。」
「今日は聖銀の武器を作ってもらいに来たんだ。できるか?」
「あぁん?できるか、だと。できるに決まってんだろうが!俺はドワーフの鍛冶師だぞ!」
そう、先ほどから無礼・・・、コホン、豪気な発言をしているバルントはドワーフ族の鍛冶師だ。
「それで、彼女用に短剣を2本、聖銀で作って欲しいんだ。頼めるか?」
「は?そのちっこい子か?しかし何で2本なんだ?」
「ああ、今はナイフを二刀で扱ってるんだが、短剣の二刀に持ち替えたくてな。」
「おめぇな、短剣ったって、この子じゃ長くて扱いづれぇだろ?」
「まぁ、そこは短くしてもらうが。それよりも形がちょっと特殊でな。」
「へぇ、特殊ねぇ。今使ってんのを見せてみろ。」
「お、おう。」
バルントがそう言うと、ヴァルマがナイフを渡した。
「なんでまた、こんな形状のを使ってんだ?こりゃあ、枝を払ったりするのに使うやつだろ?」
「あれ?でもこれを買った鍛冶屋は戦闘用だって、言ってたが?」
「まぁ、確かにこいつは戦闘用だが、元は木こりとかが使うやつだな。それを戦闘用にしたもんだな。」
「へぇ、そうだったんだ。知らなかったよ。」
「だが、こいつをこのまま短剣にはできねぇぞ?」
「ダメなのか?」
「嬢ちゃん、作るこたぁできるが、折角聖銀で作んのに、こいつを短剣の大きさにすると曲がってる所に負荷がかかって折れやすくなっちまうんだ。」
「あぁ、そうなのか。・・・シロウ。ごめん。」
「ヴァルマ、謝る必要はないぞ、バルントさんは”このまま”って言ったんだ、作れないわけじゃないはずだ。・・・でしょ?」
「がっはっはっは。まあ、そうだな、ちっとばかし形は変わるが作れるぞ!」
「そうか!頼むよ。」
「そうだなぁ、まずこの曲がりはもっと真っすぐで、刃先に重心が欲しいんだろ?だったら・・・。」
「刃先に重心か、・・・なぁ、これ参考になるか?」
そう言って、剣をバルントに見せる。
「へぇ、良い剣だな。・・・誰が作ったんだ?」
「ああ、ヴァーラにいるゲゼルさんが作った剣だ。」
「ゲゼルか、そうか、あいつはヴァーラに行ったのか。」
「ん?知り合いか?」
「知り合いって程じゃあねぇが、此処には挨拶に来たぞ、この国で鍛冶師をするって言ってたな。」
「へぇ、わざわざ挨拶に来るんだな。」
「まあ、そっちはついでだ、本題は酒だな。俺たちドワーフの酒盛りについてこれるのはドワーフだけだからな。がっはっはっは。」
「あぁ、なるほど酒ね。ドワーフだもんな。」
「そう言うこった。がっはっはっは。」
「ま、まぁ、それは良いとして。バルントさん、これは参考になるのか?」
「そうだなぁ、ナイフを短剣にするより、こっちを短剣にした方が使いやすいだろうな、こいつなら刃先が両刃だから刺突もしやすいだろうしな。」
「ヴァルマはどうだ?」
「お、おう、そ、それで頼む?」
「ん?どうした?」
「いや、ん、何でも、無い。オレもそれで良いぞ?」
「ヴァルマ、武器を妥協しない様に言ったよな?もし・・・。」
「シロ。」
「ん?何だスヴィ?」
「ヴァル、大丈夫、良い。」
「おう、そうだ、大丈夫だ。それで頼む。」
「・・・分かった。それじゃバルントさん、俺の剣を元に短剣を作ってくれ。」
「おうよ、任せな!」
「ああ、あと、ヴァルマ、出してくれ。」
「おう。」
そう言って、ヴァルマに今まで集めた聖銀を出してもらった。
「バルントさん、俺たちがダンジョンで集めた聖銀を使って欲しいんだ。」
「へぇ、結構な量があるじゃねぇか。だが、これだけじゃ足りんな。不足分はこっちで足すが構わんな?」
「ああ、そうしてくれると助かる。それと、同じものを鉄でも作って欲しいんだ、訓練用に刃の付いて無いのも欲しい。」
「おうよ、じゃあ、先に鉄のを作るか、鉄なら明後日にはできるぞ。訓練用ってんなら、先にあった方が良いだろ?」
「ああ、それで頼む。それで聖銀のはいつ頃できる?」
「そうだな、聖銀はまず合金化をしなきゃならんから、半月程だな。」
「半月!?結構かかるんだな。」
「合金化すんのに時間がかかんだよ、溶かしてから混ぜて固める、そして、また溶かして混ぜてってな、何度もやらんとしっかり混ざらねぇからな。」
「やっぱり難しいんだな。」
「まあな、それに合金炉がなきゃあ作れねえしな。」
「合金炉、それが特殊な炉か。」
「そうだ、だが、詳しくは教えられねぇぞ。こいつぁドワーフの宝だからな。」
「ああ、そこまで図々しくは無いさ。」
「たまにいるんだよ、作り方を教えろって言ってくる奴が、まぁ、だから表をおんぼろにして紹介がある奴だけ入って来るようにしてんだ。」
「ああ、だからか。ここで合ってるのか不安だったんだよ。」
「まあ、普通はこんなぼろい鍛冶屋で聖銀を扱えるなんて思わねぇからな。」
「ははは、確かにな。それで金額はいくらになる?」
「そうだな、鉄のは2本で銀貨6枚だな、聖銀のは2本で白金貨1枚で良いぞ。」
「はっ!?シ、シロ、ウ。そ、れ。」
「ん?あぁ、そうだな、ヴァルマには言って無いからな。聖銀の短剣だと1本で金貨5枚以上はするんだよ。これでも聖銀を集めたからこの金額なんだ。」
「!?・・・。シ、ロ、ゥ。」
「そんなに泣きそうな顔をするな。言っただろ、妥協はダメだって。」
「おうよ、坊主の言う通りだ。武器を妥協するってなぁ、死にてぇって言ってのと同じだ。」
「だからヴァルマ、俺たちのためにも良い武器を使うんだ。」
「ぉ、おう。分かった。」
「バルントさん宜しく頼む。」
「おうよ、任せとけ。」
「それじゃあ、帰ろう。」
「おう。」「うん。」
「はい、畏まりました。」
(これで、ようやく全員の装備が整う。)




