閑話 キスティ・ヘリスト
「パルマ、まだ見つかりませんか。」
「・・・まだ、見つかっていません。」
2ヵ月後に王都で開催される舞踏会に参加する事が決まっている。
可能であれば、その時までに見つけて献上したい。
既に他家の関係者が数多くダンジョンに来ている、その方達が先に発見すれば、ヘリスト家の管轄で他家に後れを取る事になる、そうなれば能力不足と謗られる。
まだ、発見されたのは皇帝に献上された1枚だけ。
「・・・パルマは何階層まで潜れますか?」
「お嬢様!?まさか!」
「・・・何階層ですか?」
「っ、15階層までは、行った事があります。」
宝箱があるのは迷宮の階層で16~19階層と26~29階層の2箇所、能力的に26階層は無理、探せるとしたら16~19階層のみ。
そして、迷宮の階層には罠が多く武力のみでは進めない。
「罠に対処できる方はいますか?」
「騎士の中にはいません。」
「・・・、騎士の中?」
「1人だけ心当たりはありますが、彼女は。」
「何か問題でも?」
「いえ、ただ、メイドなのです。」
「メイド・・・。そうですか、それでは仕方がありません。冒険者を探してみるしかありませんね。」
「しかし、冒険者など!」
「・・・、貴方が冒険者を嫌っているのは知っています。ですが、猶予はありません、領主家として誰かが潜らなければ、それすらも謗りの対象となるでしょう。」
「・・・、分かりました、ギルドに問い合わせてみます。」
「ええ、お願いします。」
あと2ヵ月、移動と準備の期間を考慮すれば潜れても1ヵ月が限度、例え見つからなくとも、探した事実だけでも残せれば言い訳が立つかも知れない。
それから1週間、ギルドでも信頼できる探索士は見つからなかった。
「もう、時間がありません。危険を承知で潜るしかありません。」
「お、お嬢様!」
「キーア、どうしました?」
「私を連れて行って下さい。わ、私は罠察知と罠解除を取得しています。」
「!?・・・、貴方の事でしたのね。」
「申し訳ありません、お嬢様。ただ、キーアは戦えないのです。」
「ええ、まぁ、メイドですからね。」
「ですが嬢様。私も護身程度でしたら。父に教わりました。」
「護身程度でダンジョンには潜れません。諦めなさい。」
「・・・、嬢様はそれでも潜るのですよね。罠があるのに。」
「・・・ですが。」
「確かに、私は非力で自分の身を守る事しかできません、ですが、罠であればお役に立てます。」
武力はわたくしとパルマ、あとは騎士を3名連れて行けば、キーアを守りながらでも進む事はできる、そうすれば16階層からの罠をキーアに任せられる。
「・・・良いのですね。キーア。」
「はい、お嬢様のお役に立ってみせます。」
「分かりました、パルマ、あと3名を騎士から探して下さい。キーアが必要なので1階層から潜ります。」
「はい。」「はい。」
翌日からダンジョンに潜り、15階層の守護者を倒すまでに2週間かかった、残りは1週間程度。
それからの1週間はダンジョンに籠もり、幾つかの宝箱は発見したけど肝心の複合スキルカードが見つからない。
そして焦りが出てくると、連係にも乱れが出た。
「っ、キーア!」
戦闘中にキーアが怪我をした、それだけならまだ良かったけど毒が仕込んであったようでキーアが意識を失ってしまった。
その後は、罠の探索ができず、進む事も戻る事もできなくなってしまった。
「お嬢様、この階層を抜ければ、あとは19階層と守護者だけです。我々が罠を探しながら進みます。」
「ヒルッカ、しかし貴方たちでは。」
「分かっています、しかしここで留まっていても食料が尽きれば同じ事です。我々は騎士です、貴方達を守るのが役目なのです。」
「・・・、分かりました。貴方達の忠誠に感謝を。」
『は!』
それから、先を進み、1人また1人と罠にかかって亡くなってしまった。
「パルマ、お前は最後までお嬢様をお守りしろ。良いな。」
「・・・はい。ヒルッカ隊長。」
「ヒルッカ。」
「では、行きます。」
そして、ヒルッカも罠にかかって亡くなってしまった。
「・・・お嬢様、申し訳ありません。」
「・・・もう、ここまでかしら。」
もうこれ以上は進めない、キーアが回復する見込みも無い、わたくし達2人ではキーアを守りながら守護者は倒せない。
そんな事を考えている時でした。
「おい!大丈夫か?」
「!?止まれ!近づくな!」
冒険者が来た、こちらは女性が3人、襲われる可能性を考慮しなければ。
けれど、彼らはそのまま行こうとした、パルマが声をかけたのですが、何とも。
ですが、彼らは男性1人に女性が2人で3人です、彼らと合流できれば6人になる、20階層の守護者を倒す事ができるかもしれない。
事情を説明して彼らの協力を得ようとしていた時に、魔物が来たようで、シロウさんがヴァルマさんとスヴィさんに指示を出すと、瞬時に動き魔物を倒してしまいました。
今まで見て来た冒険者の方とは強さが1段も2段も違う。
能力は見せて頂きました、この方達ならばたった3人でここまで来れた事も納得です、そして彼らに協力してもらえれば、守護者を倒してダンジョンから帰還する事ができるはずです。
報酬として提示した白金貨3枚はわたくし達の命の値段です、安いとは思いますが、わたくしが個人で出せるのはこれが限界です。
その後はヴァルマさんとスヴィさんが罠を発見し、必要であれば解除しながら進んで行きました、2人とも罠を察知できるとは思いませんでした。
何よりもシロウさんの感知能力が高い、魔物に感知されるよりも早く、そして正確に感知している。
そして、シロウさん達の協力で、20階層のレッドベアを倒しダンジョンから帰還する事ができました。
本当はそのまま領主邸にお招きして感謝を伝えたかったのですが、断られてしまいました。
わたくし達が領主邸に戻ると、お父様に叱られてしまいました。
「馬鹿者が!お前は嫁入り前なんだぞ!」
お父様に黙ってダンジョンに籠もり、成果を上げる事もできず、更には貴重な騎士を3名も失ってしまった。
「・・・無事で良かった。」
お父様に抱きしめられるのは何年ぶりでしょうか。
それから、ダンジョンであった事をお父様に話しました。
「そうか、ヒルッカ達は役目を果たしたんだな。」
「・・・はい、その命をもって、わたくし達を守って下さいました。」
「分かった、あいつ等の家族には俺の方から謝罪と感謝を送る。アルペリス、家族達が不自由無く暮らせるだけの支援を。」
「はい、畏まりました。」
「しかし、3名か、数日後には王都へ向かわなければならん。護衛が不足するな、衛兵の中から探すしかないか。」
「お父様、その件ですが、提案と言うよりもお願いなのですが、ダンジョンで助けて頂いたシロウさん達を雇えませんでしょうか?」
「ん?何だ気に入ったのか?」
「お、お父様!?違います!」
「は?何を慌ててるんだ?」
「コホン、いえ、何でもありませんよ。それで、ですね。」
それから、シロウさん達の知りえた能力をお父様に伝えて、王都へ行く時の護衛に雇えないか頼んでみました。
「まあ、それは会ってからだな、信用できるかどうかは能力とは別問題だ。それにそこまでの能力があるならば、どこかの貴族家の者かも知れんしな。」
「分かりました、それでは明日にでもエンロンに迎えに行って貰いましょう。」
「居場所は聞いたのか?」
「いえ、聞いていませんが、お父様がお調べになるのでしょう?」
「ふっ、まあな、恩もあるが関わった相手の素性は調べておきたい。」
「ああ、それともう1つ、シロウさんは奴隷の女性を2人連れています。」
「ほう、2人もか。なかなか好色なようだな。」
「いえ、お父様、その様な事を本人の前で言ったら、シロウさんはお怒りになると思いますよ。」
「何故だ?男なんだ、女の奴隷だったら抱くだろ?」
「お、お父様!娘に向かってその様な!」
「はぁ、まったく、これだからいい歳して婚約者が決まらんのだ。」
「そんな事はどうでも良いのです!それよりも、シロウさんはその2人を家族として扱っています、ですから我が家でもその様に扱って下さい。」
「まあ、それは構わんが、そこまで気を使う相手なのか?」
「お父様も会えばわかりますよ。」
「そうか、ならば期待しておくか。」
「ええ、期待していて下さい。」
翌日にはシロウさんを招きお話をしたのですが、シロウさんはわたくし達の事を色々と試していたようです、ですが、どうにか依頼を受けて頂けました。
その後は、わたくしにシロウさんの装備を買いに行くのを任されたので、わたくしの装備を依頼したお店に行き、シロウさんの装備を購入しました。
少々強引でしたが、わたくしがお支払いをして恩を売っておきましたので、護衛を頑張って頂けるでしょう。
打算的ですが、これは投資です。
その後、王都へ向けて出立すると、シロウさんの感知能力の凄さが改めて分かりました。
気配感知などのスキルを持っているのでしょうが、普通は周囲100mが限界のはずですのに、倍の200mは感知しているようなのです。
もしかしたら上位のスキルを持っているのかもしれません。
そのお陰で盗賊の対応も余裕を持って当たれましたし、村では寝ていたはずのシロウさんが侵入者も捕らえました。
やはりシロウさんは貴族の方なのでしょうか、随分と思慮深く様々な可能性を考慮しています。
仕官して頂けないのは残念ですが。
「ふふふ、王都でもお力をお借りする事があるかも知れませんね。」
いつも読んで頂いた上に評価まで頂きとても感謝しております。
これで「第2章 ダンジョン都市ヘリスト」は終了となります。
次章「第3章 争奪戦」も読んで頂けたら幸いです。




