第19話 迷宮階層 1
「ヴァルマ、おはよう。」ちゅ。
「おぉう。シロウ・・・。」
「スヴィ、おはよう。」ちゅ。
「ふぉ、シロ!」
「ぁぁぁ、まだ慣れない。」
今日は自分からキスしてみたが、やはり恥ずかしい。
今まで女性と付き合った事が無いので、こうした事には無縁だった。
(あれ?ってことは初めてはスヴィになるのか・・・。おぉぅ、これ以上考えるのは止めておこう。)
「コホン、それじゃあ、今日からダンジョンに暫く籠もる事になる。その前に忘れてる事とかは無いか?」
「う~ん。いや無いぞ。」
「うん。大丈夫。」
「そうか、それじゃ、ダンジョンに行こう。」
「おう。」「うん。」
ダンジョン16階層
「此処は洞窟の階層よりも明るいな。2人も問題は無いか?」
「おう。大丈夫だぞ。」「うん。」
迷宮の階層は所々に照明があり薄暗い程度だ、これなら魔法の灯りは必要無い。
この迷宮階層こそがダンジョンで最も稼げる場所だ、それはこの階層では通路内で宝箱が見つかる事があるからだ。
そして、ヴァーラを出る時にパーヴォに聞いた複合スキルカードも、迷宮の階層で発見されたらしい。
その為、迷宮の階層を目指す冒険者は多い。
ただ、この迷宮は構造が複雑で進むも戻るも困難な上に、野営中でも襲われる事が多く、早々に諦める者や無理をして帰れなくなる冒険者がいる。
「この階層から罠もあるはずだから、その注意は2人に任せる。索敵とマッピングは俺が担当する。」
ヴァルマとスヴィは罠察知のスキルがあるので、罠は2人に任せる。
「おう、任せろ!」「任せて!」
「ああ、2人とも、頼んだぞ。」
それから暫く歩き続けると、最初の罠があった。
「シロウ。これ罠だ。」
「え?どれだ?」
「ここの石、ちょっとだけ浮いてるだろ。」
「そう言われれば、そう見えるけど。」
通路の中央からやや左側にある石畳の1か所だけが微かに高い。
「シロ、上。」
「ん?上?」
スヴィに言われて上を見ると、天井の一部に溝があり微かに色が違う。
「・・・落石か。頭に直撃したら死ぬだろ、これ。」
「でも、分かりやすい方だと思うぞ?」
「えっ?そうなのか?」
「その為の罠察知だろ。」
「ああ、だから15階層の宝箱から出てきたのか。」
「そうだと思うぞ。」
「う~ん、・・・ヴァルマ、作動させて様子を見たいんだが、できるか?」
「ん?できるぞ、あの石を踏めばいいだけだからな、でも危なくないか?」
「まあ、それは俺がやる、踏んだ瞬間に戻れば大丈夫だろ?」
「そうだな、落ちてくるだけだから、速くは無いはずだぞ。」
「じゃあ、2人は下がって見ていてくれ。」
「おう。」「うん。」
2人を下がらせると、天井を見て、何処までの範囲に落石があるかを確認する。
「範囲はスイッチを中心に5mぐらいか、戻るには2.5mだな。」
それから、スイッチを踏んですぐに戻ると、天井の一部が落下して来た。
『ドン、ガン、ガラガラ・・・。』
「・・・。おぉう、結構デカい岩が降って来たな。」
「・・・。」「・・・。」
「!?敵だ、後ろ!」
落石の音につられて魔物が向かって来た。
向かって来たのは、ハイゴブリンが3体と、身長が170cm近くあり長剣と小盾を持つゴブリンナイトだ。
「ナイトは俺が、2人はハイゴブリンを頼む。」
ゴブリンナイトに向かって剣を振るうと盾で受け流された。
「受け流しができるのか。上手いな。」
これまで盾を持った個体はいなかったが、ここに来て盾を持ち、更に受け流しの技術を持つ魔物は初めてだ。
魔纏を使えば盾ごと斬る事もできるが、それでは修行にならない。
ゴブリンナイトの剣を躱しながら様子を窺う。
ゴブリンナイトが盾で受け流し、剣を振るう瞬間に身体を右にひねりながら、左足で剣を持つ手を蹴る。
「グギャ!?」
「今!ふっ、せぃ!」
態勢を崩したゴブリンナイトに、蹴った勢いのまま右回転しながら剣を振り首を斬り落とす。
「ふぅ~、なかなか上手かったな。」
そして、ヴァルマとスヴィも戦闘を終えていた。
「シロウ、大丈夫か?」「シロ、怪我、無い?」
「ああ、大丈夫だ、けど、あいつはなかなか上手かった、盾で受け流すなんて思わなかったよ。」
「そうか、盾か。う~ん、オレはどうすれば・・・。」
「そうだなぁ、ヴァルマは二刀だから、盾を弾いてから攻撃すれば良いと思う。」
「わたし。」
「スヴィは速度を活かして動きながら突きの連続攻撃が良いかな?槍が弾かれる事も考慮して、突きと引きの速度も上げておけば態勢を崩される事も無いだろ。」
「うん。」
「さて、戦闘も終わった事だし、罠は・・・。戻ってる?」
「お~、落ちた岩が無くなってるぞ。」
「元通り。」
戦闘が終わったので、作動させた罠がどうなっているか見ると、既に罠が作動した形跡は無くなっていた。
戦闘時間は5分もかかっていないため、罠はそれ以下の時間で元に戻るらしい。
「しかし、罠が作動して音が出ると、魔物を呼び寄せてしまうのか。」
「あぁ、そうか、それでゴブリン達はすぐに来たんだな。」
「音、大きかった。」
「そうだな、けど、これで罠にかかった時に何が起こるか判断できる。」
「おう。」「うん。」
それからは罠を作動させずに通過して探索を進める。
「・・・広いな、まだ次の階層への階段が見つからない。」
「魔物も強くなってるぞ。」
「でも、勝てるよ?」
「はは、そうだな、魔物は慣れれば勝てるが、油断はするなよ。」
「おう。分かってる。慎重に、だろ?」
「うん。安全に。」
「ああそうだ、慎重に、安全に、だ。」
「おう。」「うん。」
ここまでに在った罠は、最初の落石から落とし穴や床から槍が飛び出すものなど、古典的な物が多かったが、触れなければ通れるのでそのまま通過した。
「こっちも行き止まり、・・・あ!宝箱がある。」
「お!」「お~。」
「!?待て!」
2人が宝箱に向かおうとしたので、急ぎ止めた。
「おう?どうした?」「ん?」
「2人ともまずは落ち着け、宝箱が見つかって嬉しいのは分かるが、こう言う時にこそ罠が無いか確認するんだ。」
「あぁ。ごめん。」「ごめん。」
「良いさ、嬉しいのは分かるからな。けど、こうした嬉しい時は意識が宝箱に集中してしまうから、罠を見逃しやすくなる。」
「おぅ、そうだな、分かった、気を付けるよ。」
「うん、わたしも。」
「ああ、気を付けてくれ。それじゃあ、罠が無いか確認を頼む。」
「おう!」「うん!」
「あぁ、シロウの言った通りだ罠がある、これは壁から何か小さい物が飛び出して来るんだと思う。ほら、ここに小さくて分かり辛いけど穴が幾つもある。」
「なるほど、これは針、もしかすると毒針かもしれないな。」
「おぅ、毒か、でも毒なら皆耐性を持ってるぞ?」
「そうだが、どんな毒か分からないからな、受けないに越した事はない。」
「おう、そうだな。」「うん。」
「それじゃあ、あとは宝箱に罠が無いか確認してから開けよう。スヴィ、頼む。」
「うん。」
(はぁ、本当は危ないから俺ができれば良かったんだが、罠察知が無いと罠解除が取得できないとは思わなかった。)
「・・・。罠、無い。」
「そうか、それじゃあ、開けるのは俺がやるから、2人は下がっててくれ。」
「おう。」「うん。」
そして、慎重に宝箱の蓋を開けた。
「・・・、これって。」
「どうした?」「何?」
「あぁ、これは聖銀だ。」
「えっ!、聖銀。」「おお、聖銀。」
宝箱の中に入っていたのは聖銀のインゴットだ、ただ、その大きさは通常のインゴットの1/10のサイズで10g程度だ。
「・・・、小さいな。」「ちっちゃい。」
「はは、確かに小さいが、高額のはずだ。」
「売るのか?」
「いや、これはヴァルマの武器に使う、それにもし余っても使い道は幾らでもあるから取っておく。」
「そうか、じゃあ、いっぱい見つけた方が良いな!」
「おお、いっぱい、見つける!」
「ああ、頑張ろうな。」
その後2時間程度彷徨ってようやく17階層に降りる階段を見つけた。
「1日かかって1階層を抜けるのがやっとだな。そうなると最短でも4日、長ければ1週間近くはダンジョン内って事だ。」
「おぅ、長いな。今までは、その日の内に帰ってたから。」
「でも、お家、ある。」
「ああ、そうだ、家があるから、そこまで気にする事じゃ無いな。あとは人の来そうに無い場所を探して今日は終りにしよう。」
「おう。」「うん。」
その後17階層を暫く進み、行き止まりの場所を見つけたので、そこで暫く様子をみて誰も来なかったので、仙境に入り今日の探索を終了した。
今日は宝箱は1つしか見つからなかったが、魔石はハイゴブリンやゴブリンナイトなどの魔石が全部で32個集まった。
(時間はかかるが、収穫は多かったな。明日からも期待できそうだ。)




