表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界でただ一人の種族はチートだった  作者: どんぺった
第2章 ダンジョン都市ヘリスト
40/81

閑話 スヴィの思い

子供の時はお父さんとお母さんと3人で暮らしてた。


この村に獣人はわたしとお母さんしかいない。


お父さんはこの村を守るお仕事をしてた。


お母さんは森で狩りをしてた。


村では獣人の子はわたしだけだったから、いつも”ネコ”って呼ばれてた。


お母さんはいつも森に食べ物を取りに行くから、わたしはお父さんと一緒に門の所で、お母さんが帰ってくるのを待ってた。


お母さんが帰ってくると、お母さんと一緒にお家に帰ってご飯を作る。


それから日が暮れるとお父さんが帰ってくる。


いつまでもそんな日が続くと思ってた。






あの日までは。






夜、お父さんとお母さんと一緒に寝てたら、誰かがお家の扉を叩いた。



『スオウル!火事だ!家が燃えてる!』


「すぐ行く!」


「スヴィ、お母さんの言う事をちゃんと聞くんだぞ。」


「ヘルヴィ、スヴィを頼む。」



そう言ってお父さんはお家を出た。


それからお家の外から悲鳴が聞こえた。



『お願い、助けて!まだ家には・・・。』



お母さんはそれを聞いてから、わたしを抱きしめて言った。



「お父さんが心配だから、見てくるわね。スヴィはお家で待ってて。良い?」



そう言ってお母さんもお家を出た。


そのあと”ガラガラ”って音が聞こえて、怖くなった。



「お父さん、お母さん。」



怖くなってわたしもお父さんとお母さんを探しに外に出たら、お母さんが燃えてるお家の前で泣いてた。



「お母さん?」



お母さんに近づこうとしたら、隣りのお家が崩れて来た。





痛いよ、熱いよ、お父さん、お母さん、助けて。






目が覚めたらお母さんがいた。



「スヴィ!良かった。・・・良かった。」



お母さんは泣いてた。






わたしは1週間も眠ってたみたい。



「お父さんは?」



お母さんはまた泣いた。


お父さんは崩れたお家にいた子を助けるのに、中に入って戻って来なかったって。


次の日の朝に崩れたお家からは、そのお家の子が見つかったって言ってた。


地下の保存庫にいたんだって、お父さんがそこに入れて入口を塞いだって。



「お父さん・・・。」





それから、わたしにお母さんが火傷のお薬を何度も塗ってくれた。


お母さんは何度も泣いてた。






1ヵ月ぐらいして、歩けるようになったけど、左腕があんまり動かせなくなった。


でも、お母さんがまた泣いちゃうから、元気になったよってお外に出た。


そうしたら、みんなわたしの方を見て顔をしかめる。



『・・・気持ち悪い。』『・・・化け物。』



村の人達が言う、どうして?この前までは普通にお話してたのに。


わたしは、怖くなってお家に帰った、それからはお家の外に出ないようにした。


怖かった、悲しかった、お外に出る時はお母さんと一緒に出る。






わたしはお母さんのお手伝いをしながら過ごした。


それから5年、お母さんが病気になった。


猫獣人の病気だから一緒にいちゃダメだって。


だから近所のおばさんの所に預けられた、お父さんが助けた子のお家だ。


おばさんは”大丈夫よ”って言ってくれた。


でも、それから数日してお母さんは死んじゃった、お薬が無いからって。


お父さんもお母さんもいない、どうしたら良いのか分からない。




それからは、おばさんがお母さんの代わりだって、ご飯を食べさせてくれた。


わたしもできる事は頑張った、けど。




村に商人さんが来た、おばさんが商人さんと何か話してた。


そしたら、おばさんはわたしを奴隷として売るって言って、商人さんにお金を貰ってた。


もう何を信じて良いのか分からない。


お父さんもお母さんもいない、おばさんはわたしを奴隷にする。


どうして?わたしは・・・何を信じれば良いの?もう分からないよ。


わたしは商人さんに奴隷にされた、借金奴隷で30年も解放されない。




次の日には村を出て、王都に行くって商人さんが言ってた、獣人の奴隷なら働けなくても買ってくれる人がいるからって。


それから、レフトラの町とサンタラの町を通って、ヘリストに向かう途中で馬車が大きなベアに襲われた。


そのベアは腕が4本あるマーダーベアで、人を好んで食べるベアだ。


護衛の人達が気付く前に馬が襲われて、御者をしていた商人さんも一緒に殺されちゃった。


護衛の人達はそれを見てすぐに逃げて行った。


マーダーベアは商人さんを食べ終わると、檻に入れられていたわたしの方を見て近づいて来た、わたしは怖くて震えた。


マーダーベアが檻を壊そうと何度も叩いてくる、そして檻が壊れて近づいてくる。




怖い、嫌だ、死にたくない。





そう思った時、わたしは逃げた、マーダーベアが追いかけて来る。



怖い、嫌だ、助けて誰か、お父さん、お母さん。



それから、とにかく走って、走って、走った。



気が付くと、もうマーダーベアは追って来て無かった。


どうして逃げられたのか、不思議に思って足を見たら毛がいっぱい生えてた、手にも顔にも生えてた。



「これが、獣化なんだ。」



獣人族が獣化すると身体に毛が生えて身体能力が上がるって、お母さんに聞いてた、だからマーダーベアからも逃げられた。



「・・・どうしよう。」



もう村には帰れない、お父さんもお母さんもいない、村の人達はわたしを嫌ってる、おばさんはわたしを奴隷にした。




何を信じれば良いのか分からない。




それから山の中を歩いていたら洞窟があった、入口が小さくて大きな動物は入って来れない、そこで休んでこれからどうするのか考えた。




食べられる物を探して食べて。


魔物に見つかると獣化して戦った。


もう誰にも頼れない、自分で何とかしないと。




それから色々集めた、お母さんからいっぱい昔のお話を聞いてたから、お母さんが冒険者だった時に色んな事があったって。


お父さんと会うまでに行った色んな所のお話をしてくれた。


火を熾すやり方とか、夜に寝る時はどんなところが良いとか。





だから大丈夫、わたしは大丈夫。





それからも洞窟に住んで、色々な場所に食べ物を探しに行った。


それで盗賊を見つけた。


わたしの住む洞窟からは遠いけど、見つかったら捕まちゃう。


だから、見に行った、わたしの所に来ないか心配だったから。


そのあとも何度か見に行ったら、盗賊の洞窟を見張ってる人を見つけた、たぶん冒険者さんだ。


数日してからもう一度見に行ったら、冒険者さんが洞窟に入って行った。


あれが盗賊の討伐なんだ、そう思って見てたら男の人がこっちを見た。


見つかったのかと思ったんだけど、そのまま視線を逸らした。



「偶然?」



分からないけど、これで盗賊はいなくなった。






それからまた数日して、誰かが近づいて来るのを感じてすぐに洞窟に戻った。


スキルを使ってるのに見つかった。


何で?どうして?怖い。


隠れてたんだけど、その人達は洞窟に入って来た。


何も言ってこない、でも出て行ってもくれない、だから声をかけた。





「だれ?」





これがシロとの初めての会話だった。


顔を見たいって言われた時は怖かった、またあの時みたいに言われる。


けど、シロは良いって言った、だから隠れたままお話した。


やっぱり盗賊の洞窟に行った時に気付かれてたんだ。


人は嫌い、・・・でも1人・・・わたしは1人、お父さん、お母さん。


そのあとにシロが言った”寂しい”って、そうか、わたしは寂しかったんだ。




お父さんとお母さんを思い出したら悲しくて寂しくて泣いた。




それからシロはわたしが落ち着くまで待ってくれた。


シロに”一緒に町に行かないか”って聞かれたけど、わたしを見て嫌な顔しないかな?イジメたりしないかな?


でも、1人は寂しい、だから、シロの事を少しだけ信じてみようと思った。


岩陰から出るとシロの言葉に”ビクッ”とした。


シロの顔を見るとお母さんみたいな顔をしてた、悲しそうで辛そうな顔だ。



その後も話しをしてたら女の子が話すって、シロの言葉を遮った。


それでシロから離れてその女の子、ヴァルマちゃんとお話をする事になった。





シロから離れるとヴァルマちゃんは、自分の事を話してくれた。


娼婦の子で、スラムに逃げてからずっとスラムで生きて来たって。


でも捕まって犯罪奴隷になって、シロに買われたって。


それからいっぱいシロの事を話してくれた、嬉しかった事も恥ずかしかった事も。


ヴァルマちゃんが教えてくれた、わたしが奴隷商に引き渡されたらどうなるのか。





「獣人族で酷い火傷の痕、役に立たない奴隷の扱いは悲惨だ、毎日殴られ罵声を浴びせられる、食事もほとんど貰えない、そこまで行くともう家畜以下の扱いだ。」


「その内に死にたくなる、でも、死ぬ事は許されない。生き地獄だ。」


「シロウはこうした奴隷がどうなるか知らない。だから、オレが話した。」


「大丈夫だ、シロウを信じろ。」





シロはヴァルマちゃんを家族の様に思ってくれている、だからヴァルマちゃんはわたしにもシロの奴隷になるように言った。


それが嫌なら、人に見つからない様に隠れないといけないって、でもそうなったらわたしはまた1人だ、これからもずっと。





















・・・1人は嫌、・・・寂しいのは・・・もう嫌。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ