第4話 洞窟階層
今日も朝からダンジョンに向かう。
「今日は6階層から進むが、まずは修行になる階層と資金になる階層を探すぞ。」
「おう。頑張るぞ!」
「ああ、頑張ろうな。」
ダンジョンに着くとポータルで5階層に行ってから6階層に降りる。
「ここからは洞窟か・・・少しばかり暗いな、ヴァルマ念のため灯りを出すぞ。」
〔我が手に導となる光を灯せ。〕灯光
右手を頭上に上げて光の基礎魔法を唱えると、そこに照明用の光球を出現させる。
この光魔法は、松明よりは明るいと言った程度の光だが、自身と出現させた光球の相対位置が変わらないので、こうした探索の時には重宝する魔法だ。
「岩の影とか隠れられそうな所は特に注意しろよ。」
「分かった、けど感知は?」
「それも、絶対に分かるとは言い切れないからな。念のためだ。じゃあ行くぞ。」
「おう!」
洞窟内に入ると、洞窟特有の湿気と匂いがする。
周囲は暗いが壁の一部には薄く光っている部分もある、これはヒカリゴケと呼ばれるコケが周囲の魔力を吸収して光っているのだ、これもあるので光の基礎魔法でも視認はできる。
「っ、シロウ!」
咄嗟にヴァルマが声をかけながら近づき、右側にいた蛇を斬った。
「な!?・・・蛇か。すまない助かったよ。」
「ふふん、シロウもまだまだ、だな。」
「ははは、ありがとうな、でも良く分かったな?」
「ん?気配はしたぞ?」
「ああ、そう言う事か。小さいのは感知外にしてるんだった。」
周辺感知は高性能だが、情報量が多すぎるので30cm以下は対象外にしている、そのため小型の生物は感知されない。
「ちょっと待っててくれ、すぐ調整する。」
それから暫く距離と対象を変えて試してみたが、小型の生物を感知する為には距離を狭めなければならず、感知範囲が50mになってしまった。
(これ以上は厳しい・・・か、仕方が無い。・・・それにしても自分で気を付けろなんて言っておきながら、これじゃ情けないな。)
「ヴァルマ、もう大丈夫だ、だが範囲は50mになってしまったから、それ以上の距離は任せる。」
「おう、任せろ。」
この状況ならば、気配のみを感知する、気配感知の方が遠くまで感知できる。
その後も探索を続けるが、この洞窟階層に出てくるのはゴブリンとハイゴブリンにコボルトが出る、それに加えて先ほどヴァルマが斬ったポイズンスネークにポイズンスパイダーとセンチピードなどの小型で毒を持つ昆虫類だ。
「ここは、弱いが色々と面倒だな。」
「・・・虫の魔石は小さい。あれじゃ売れないぞ。」
「まぁな、流石にゴブリンの半分も無い大きさじゃ使い道が無いだろう。」
「虫は無視?」
「ぶっ!?」
「ん?どうした?」
(まさかおやじギャグをヴァルマから聞けるとは、・・・いや本人は至って真面目な顔をしてる。・・・もしかして言語理解の所為か?)
「コホン、なんでも無いぞ、そうだな虫は魔石が小さすぎるから、そのまま放置しておこう。」
「おう、分かった。」
洞窟の探索は迷路では無いが行き止まりも多く、行っては戻りの繰り返しで探索は難航した。
マッピングはしているが、まだ7階層に降りる階段が見つからない。
「う~ん、どうするか。」
「どうするって、行くしか無いだろ?」
「・・・ヴァルマ、これから感知を微小の魔力だけに限定する、それをすると今度は魔物が反応しなくなるんだが、代わりにダンジョンの壁にあるヒカリゴケが反応する、そうなれば洞窟の形状が分かるようになる。ここまでは分かるか?」
「う~ん。洞窟の形がわかる?」
「まぁそんな感じだ。それなら感知距離を最大まで伸ばせるから、それほど迷わずに下に降りる階段を見つける事ができるはずだ。」
「おお~、すごいぞ!」
「まぁ、そうなんだが、俺の方で魔物が感知できないから、ヴァルマが魔物を感知しなきゃならないんだ。できるか?」
「おう、魔物を全部見つければ良いんだな!任せろ!」
「ああ、ヴァルマに任せる。」
俺が進路を指示してヴァルマが魔物を感知する、そして2人で戦闘を行う。
この手法でようやく7階層への階段を見つける事ができた。
「ここまで結構時間がかかったな。」
「魔物は弱かったけどな!」
「そうなんだよな、洞窟じゃ無ければ時間はかからないはずだ。」
ここまでの戦闘は鎧袖一触で、面倒だったのは魔石を回収する事だけだ。
そして7階層に降りて暫く歩いているが一向に魔物に出くわさない。
「ヴァルマ、魔物はどうだ?」
「う~ん、あんまりいない?」
「ふむ、やっぱり先行してる冒険者がまだ近くにいるのかもな。」
7階層で接敵したのは少数だ、昆虫系はそれなりにいたが、ゴブリンが3体とコボルトが6体だけで、真っすぐ階段方向に進むと更に出現しない。
先行している冒険者に討伐されている可能性が高い。
だからと言って順路から外れれば、今日中に10階層にある守護者の部屋に到達できるか分からなくなる。
「稼げないがこのまま行くしか無いだろう。」
「おう、そうだな。」
それから次の階層に向けて歩いていると、前から誰かが戻って来た。
「シロウ!前から人が3人。」
「ん?冒険者か?なんで戻って来るんだ?」
「わかんねぇ、でも走ったりはしてないぞ。」
「そうか、すぐに動けるようにしておけよ。」
「おう。」
警戒しながら戻ってくる冒険者が見えた、剣士と盾士の男性に弓士の女性だ。
「ふぅ、なんだ冒険者か。」
戻って来た剣士の男性が声をかけて来た。
「ああ、そうだ。そっちはどうしたんだ?戻って来るなんて。」
「あぁこの先にはダメだ、魔物が群れをなしてて俺たちじゃ通れそうになかったんだよ。そんで今日は諦めて戻ることにした。お前達も戻った方がいいぞ。」
「群れ?しかしここはダンジョンだぞ?群れを成すなんて事があるのか?」
「たまにあるんだよ、群れになっちまうと簡単には散らねぇし、強行突破は危ねぇからな。」
「なるほどね、わざわざ危険を侵す必要はないか。」
「そう言うこった。じゃあ俺たちは帰らせてもらうぞ。じゃあな。」
そう言って冒険者達は6階層に向かって帰って行った。
「群れ・・・か、ヴァルマはどう思う?」
「う~ん、数にもよる?でも倒せば儲かる。」
「そうだな、俺たちで倒せる規模なのか、まずは確認するか。ダメそうだったら俺たちも帰ろう。」
「おう、それじゃ行くぞ。」
「ああ、行こう。」
それから先に進むと8階層へ降りる階段の前に、先ほどの冒険者が言っていた群れを見つけた。
「結構いるな、・・・ハイゴブリンが18体か。」
「なんでこんなに集まったんだ?」
「さぁな、でもここに集まっているから、今まで出てこなかったんじゃないか?」
「そうなのか?」
「多分な。しかしこのくらいなら殲滅できると思うんだが、これが危険なのか?」
「どうだろ?これならオレでも大丈夫だと思う。」
「そうだな、それじゃあ殲滅するか。」
「おう!」
作戦は、まず俺が隠形を使い群れの反対側まで移動してから戦闘を開始する。
そして群れの注意が俺に集まったら、今度はヴァルマが気配隠蔽と動作隠蔽を使いながら反対方向から殲滅を始める。
「ヴァルマはこれで良いか?」
「おう、大丈夫だ。」
「じゃあ隠形作戦開始だ。行ってくる。」
それから隠形を使い群れの反対側に移動する。
(まだ気付かれてないな、しかしこの”隠形”って、触らなければ気付かれないとか、どんな性能なんだよ。まぁ、戦闘が始まれば流石に気付かれるけどな。)
そして群れの反対側に到着すると、剣を持って開始の一撃を放つ。
(ふぅ、それじゃあ行くか。まずは最大出力で”飛剣”!)
魔力を最大まで高めて剣閃に乗せて飛剣を放つ。
「・・・・・・シロウ?」
「・・・・・・すまん。まさかこうなるとは。」
折角立てた作戦が台無しだった。
飛剣の一撃で全てのハイゴブリンが両断されてしまった。
「ま、まぁ、やってしまった事は仕方が無い。魔石を集めよう。」
「はぁ~、・・・そうだな。」
(しかし、なんでこんなに威力があるんだ?前に使った時って・・・。あいつらに襲撃された時だったか。こんな威力はなかったんだけどな?う~ん、今回は全力で放ったからか?)
「魔石の回収も終わったし、次の階に行くか。」
「おう、そうだな。」
(結局、なんで集まってたんだ?たまにあるって言ってたが。理由が分からん。)
そして次の8階層に降りた。
「・・・こっちは普通か?」
「う~ん、・・・多分?」
8階層では先ほどの様に群れになっている様子もなく、かと言って魔物がいないわけでもない。
「まあ良い、あまり修行になりそうにないからさっさと抜けよう。」
「おう、行くぞ付いて来い!」
「・・・付いて来いって、お前なぁ。」
「ふふ、行くぞ。」
(・・・なんだか楽しそうだな、何かあったっけ?)
それから魔物を倒しながら8階層を進み、更に9階層も越えた。
「ここを越えたら今日は終りだ。」
「おう、守護者だな。」
2人は今10階層にある守護者の部屋の前に来ている。
「それじゃ行こうか。」
「おう!」
守護者の部屋に入ると扉が閉じ、そして魔法陣から守護者が出現した。
出現したのはハイコボルト1体とコボルトが10体だ。
「う~ん、5階層と変わらないな、ゴブリンがコボルトに変わっただけだ。」
「また、やって良いか?」
「ん?今回も1人で相手をしたいのか?」
「昨日みたいな事はしないから。」
(あぁ、昨日の事を気にしてるのか。)
「分かった、任せる。」
「おう、任せろ!」
そう答えると前回と同様に正面から使い歩いて行くが、今回は動作隠蔽に加えて身体強化もかけてある。
『グルゥゥゥ。』
コボルト達が唸り声を上げる。
更に歩いて近づくと、コボルトは周囲を囲うように移動するが、その瞬間ヴァルマは正面にいるコボルトへ急加速して蹴り飛ばしハイコボルトに叩きつける。
「ギャン!?、ガルラァ!」
コボルトを叩きつけられたハイコボルトは立ち上がりながら左腕で払いのけると、既に正面に来ていたヴァルマにナイフで首を斬られて絶命した。
(なるほど、今度は司令塔を先に潰したのか。)
その後は、コボルトを1体づつ囲まれない様に倒していき、最後の1体まで危なげなく倒す事ができた。
「ふぅ、すぅ、はぁ・・・、シロウ。」
「ああ、良かったぞ。危なげない戦いだった。」
近づいて来たヴァルマの頭を撫でて褒める。
「おう、今度はちゃんとできたぞ!」
そう答えるヴァルマはとても良い笑顔だった。




