第1話 へリスト到着
どんぺったです。
一旦完結しておきながら、とも思うのですが。
投稿を再開させて頂きます。
3か月間の修行を終えてヴァルマは各段に強くなった。
元々持っていたスキルも上がったが、剣術と投擲術に加え身体強化は戦いを有利にできる。
ただヴァルマのスキルが暗殺者っぽいのが少し気になるのだが。
「ヴァルマ、荷物は最低限で良いぞ、夜は仙境で休むんだから。」
「おう、分かってるぞ!大丈夫だ。」
今後は荷物を仙境に置いて移動できるので、荷袋には日常品と食料ぐらいで済む。
「ヴァルマ、出立する前に確認するが。俺の事で秘密にする内容は覚えてるか?」
「おう、種族の事とスキルの事だろ?」
「そうだ、正確には種族に仙境と身体再生の3つだ。この3つは特殊過ぎて他人に知られた時にどんな反応をされるか分からないからな。」
「おう、大丈夫だぞ!任せろ!」
「ああ頼む、それじゃへリストへ向かって出立だ。」
「おお~!」
まずは森の中を南下する、これは魔物との戦闘訓練を兼ねている。
今回の戦闘はヴァルマが主体で俺を守る役をさせた。
「っ!?シロウ!」
「おうさ!任せろ!」
ヴァルマが悪鬼種のオーク2体を相手にしていたが、もう1体のオークが脇を抜けてこちらに向かって来た。
オークが剣を振り下ろして来るが、剣で弾くとそのまま胴を斬る。
「ブモォ・・・。」
「ふぅ、ヴァルマも終わったみたいだな。」
ヴァルマの武器は2本のナイフだ、俺の様に一刀の元に斬るなどと言った事ができないので速度と隠蔽を使い攪乱しながら戦う事になる。
「うぅ、ごめん。・・・抜かれた。」
「はは、気にするな!ヴァルマならすぐに慣れるさ。」
「おう!」
そう言ってヴァルマの頭を撫でる。
その後1日森を進んだら今度は森を出て西にあるへリストへ向かう。
街道に出てからさらに2日。
「お、ヴァルマ!町が見えたぞ!・・・あれ?町が2つ?」
「えっ?・・・見えないぞ?」
ヴァルマが背伸びをして遠くを見ている。
「あ!すまん、千里眼を使ってるんだった。」
「あぁ、遠くを見るやつか。じゃぁまだ遠いのか?」
「そうだな~。あと3時間ぐらい歩くかな?」
「おう!じゃぁ昼過ぎには着くな!」
ヴァルマが笑顔で言う。
今はラヴィネンとヘリストの間の街道を歩いている、この街道は通行量も多く馬車や馬に乗った人をよく見かける。
徒歩で歩いて人もいるが、大体5人以上の団体で移動している。
「おぉ!シロウ~、もうすぐ着くぞ!」
「あぁ、分かった、分かった。そんなに急ぐな。」
街道沿いの城門近くにやって来るとラヴィネンと同じ形状の町がある。
その東側には城壁で囲まれている小さな町もある、城門はヘリストに向けて作られているみたいだ。
「う~ん。あっちがダンジョンかな?」
「シロウ!シロウ!早く行くぞ!」
「あぁ、分かったよ。」
ヴァルマにとっては生まれた町以外で初めての町だから気が急いているのだろう。
城門に辿り着くと入城待ちの列が長い、そして町の城壁の脇にいくつものテントが張ってある。
「うん?あのテントはなんだ?」
「なんだ、坊主は知らねぇのか?」
声に出ていたらしく、前に並んでいた男性が声をかけて来た。
「いや、初めてこの町に来たから知らないんだよ。」
「そうなのか?まぁいいや。そんでありゃ屋台だよ。」
「屋台?」
「そりゃこんだけ待たされるんだ腹も減るさ、んでそういう奴を相手に商売してんだよ。」
「あぁ、確かにそうだな。」
それから3時間程かかってようやくヘリストの町に入る事ができた。
「まずは宿だ。ダンジョンは東側らしいからな、そっちの方で探そう。」
「おう!」
この町の北西に領主館や貴族街があり、ダンジョンのある東側に冒険者に関係する店が多い。
東側に向かう途中で食事の香りが漂って来た。
「・・・ここにするか?」
「おう!・・・いい匂いがするぞ!」
見つけたのは3階建てで1階に食堂がある宿屋だ、冒険者通りと呼ばれる大通りから少し中に入った場所にあった。
「いらしゃい!」
「2人部屋を借りたいんだが、いくらだ?」
「2人部屋なら銅貨3枚だ、それから食事は青銅貨5枚で食事の時の払いだよ。」
「分かった、じゃぁ取り合えず3泊頼むよ。あぁ、それと夕食も2人分頼む。」
料金を支払ってから食堂の席に着くと、暫くして店員の女性が食事を運んできた。
「はいよ、お待たせ。あとこれが部屋の鍵だよ。3階の2号室だ。」
「ああ、分かった。ありがとな。」
「おお!いい匂いだぞ!」
久しぶりのまともな食事だ、何しろ俺もヴァルマも料理は上達しなかった。
何しろ焼くか煮る以外は生で食べられる果物ばかりだったからだ。
「う~ん。・・・うまい!これでこそ人間の食事だ。」
「おう!うまいな!」
食事を済ませると部屋へと上がる。
部屋の中は6畳ほどあり左右の壁際にベッドと中央の奥にテーブルと椅子が2脚おいてある。
「お!ちょっと広いな。」
「そうか?家の方が広いぞ?」
「そりゃぁ仙境の家と比べたら狭いさ、でも今までの宿に比べたら広い方だぞ?」
「そうなのか。・・・夜は家に帰らないのか?」
「ん?ヴァルマは帰りたいのか?」
「ううん、そうじゃなくて、家に帰ればお金がかからないだろ?」
「あぁ、ヴァルマはそれを心配してたのか。確かにそうすれば金はかからんが、仙境を人に知られるのは極力避けたいんだよ。」
「そうか。大変なんだな。」
ヴァルマが”そうかそうか”と頷いているが、分かっているのだろうか。
「ま、まあ良い、明日からダンジョンに潜るが、まずは様子見で日帰りになる。」
「おう!いっぱい倒すぞ!」
「そうだな、頑張ろうな。」
今はとにかく稼がなければ、既に銀貨6枚まで減っているし、ヴァルマに心配をかけたくはない。
「それじゃ、今日はもう寝るか。明日はダンジョンだ!」
「おう、おやすみ!」
▽▽▽
翌日は朝食を食べてからダンジョンに向かう。
ダンジョンはヘリスト町の東にある、2重の城壁が囲われた中に入口がある。
町の東門を出る際にダンジョンに行くための木札を渡された。
「これは町の出入り用の木札だ、ダンジョン街にある冒険者ギルドに提出すればギルドでダンジョン用のカードを発行してくれる。」
「そうか、分かった。ありがとうな。」
「ああ、頑張れよ!」
東門の門衛は気さくな感じだった、普段から冒険者を相手にしているからだろう。
外壁の門を通ると正面には内壁が見える、内壁の入口は回り込んだ反対側にある。
南側から回り込んで反対側に向かうと内壁の門があり、冒険者ギルドはその門の脇にあった。
「ようこそ、冒険者ギルド・ヘリスト・ダンジョン支部へ。どのようなご用件でしょうか?」
「あぁ、ダンジョンに潜りたいんだが、手続きとかはどうすれば良い?」
冒険者ギルドの受付の女性にそう話すと、手続きをしてくれた。
先ほど門衛に渡された木札は、ヘリストに入町して税金を払った事を示す木札らしく、それがあればダンジョンと町を往来するために入町税を払わなくて済む。
そして今後はダンジョンカードと呼ばれるカードを提示すれば、ダンジョンから町に戻る時の入町税が免除されるらしい。
このダンジョンカードは1人1枚が必要で値段は銀貨1枚だ。
このダンジョンカードには所有者が潜った階層が記録されて、カードをポータルの水晶に触れさせれば、潜った事のある階層までならば指定して移動ができる。
「ダンジョン内でのルールとかは?」
ダンジョンでは原則として殺人や窃盗などの犯罪行為を行ってはならない。
これはダンジョンの外と同じで”犯罪”であれば鑑定水晶で確認できるが、問題が無ければ鑑定をする事が無いため、気付かれない場合もある。
他者の戦闘に介入する必要がある場合には、相手の許可を得てから介入する事、もしも全滅しそうな場合であっても拒否されたら介入してはいけない。
その結果全滅しようとも、それはその冒険者の自己責任である。
長期間ダンジョンに潜る場合は受付に最長期間を報告する事、ただしこれは義務では無い。
期間が過ぎたからと言って捜索などを行う訳では無いので目安程度の扱いだ。
(・・・結構シビアだな。)
「分かった。それじゃもう行って良いのか?」
「はい、お気をつけて、行ってらっしゃいませ。」
「ああ。行ってくる。」
ギルドの受付で質問を済ませてダンジョンの入口に向かう。
ダンジョンは内壁の中心にあり四角い箱の様な形状になっている、更にその周囲を鉄の柵で囲ってある。
内壁の内側には他に建物は無く、冒険者が情報交換やパーティの募集などを行っている様だ。
「お、入口はあそこか。よし行くぞヴァルマ。」
「おう!」
こうして初めてのダンジョンアタックが始まる。




