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世界でただ一人の種族はチートだった  作者: どんぺった
第1章 不如意なる人生
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閑話 ウネルマの願い

1話分としては短すぎたので投稿するつもりは無かったのですが、少し評価を頂けたので追加で投稿しておきます。

私はウネルマ、ヴァーラの町で生まれた。


家は貧しく、満足に食べていく事もできない、そんな時に両親が私を借金奴隷にする話しをしているのを聞いた。


それを聞いて私は奴隷になるくらいなら娼婦になる。


両親に黙ってヴァーラの町を離れ、ラヴィネンで娼婦になったのが17才の時だ。


娼婦ならまだ自由は残る。


奴隷と娼婦は違う、奴隷に人としての権利はないが娼婦なら人として扱われる。


見初められれば結婚する事もできる。


でも、娼婦になって2年後に妊娠してしまった。


誰の子かは分からないから降ろす事も考えたけど、子供ができると生んであげたいと思うようになった。お店も勧めてくれたら。





生まれた子供は”ヴァルマ”と名付けた。


故郷のヴァーラと私の名前。





それからの子育ては大変だった。


お乳を飲ませて、おしめを変えて、夜泣きして。


仕事と子育てを一緒にするのは厳しい。


お店の人達も手伝ってくれたからどうにか育てられた。


ヴァルマも少し大きくなってお手伝いをしてくれる様になった、小さな身体でバケツを持って一生懸命お掃除している。








それから何年か経ってヴァルマが10才になった後だった。


初めて来たお客さんがヴァルマを見て”抱かせろ”と言ってきた。


何を言っているのか、ヴァルマはまだ子供だ。


でも私は娼婦で、立派な服を来たお客さんに拒否するのはお店に迷惑がかかる。


お店の人も断ろうと話しをしていたけど、領主様の関係者だと言われればこの町にいる限り逆らう事はできない。


それでも私が母親で、あの子はまだ子供だからと、怒らせない様に笑顔を絶やさない様にどうにか断ろうとしたら。


”そうか、それなら話しが早い。”と言って銀貨を3枚渡してきた。


そのお客さんはお金でヴァルマを抱こうとした。


母親にお金を払えば良いと思っているんだろう。


”要りません!”お金は返したけど、もうヴァルマは・・・。



そのあとヴァルマはお店の人を突き飛ばして逃げた。



私もすぐに後を追おうとしたけど、お客さんは怒りだして私を見た。


何度も殴られた”躾がなってない”とか”連れ戻して来い”とか言われた。


嫌だ、あの子を、ヴァルマを守りたい。


どれだけ殴られようと、蹴られようと。


お店の人もヴァルマを探しに行こうとはしなかった、このお客さんがいなくなるまでは連れ戻せない。




それからどのくらい時間が経ったのか、私は気を失ってしまった。




気が付けばベッドの上で体中が痛い、でもお客さんは帰ったと聞いて、ヴァルマを探しに行こうとしたら、お店の人に止められた。


私の怪我はかなり酷かったらしくて、あれから2日経っていると言われてヴァルマの事が頭をよぎった。


お店の人の話しでは、怒ったお客さんを宥めるのに金貨3枚を払ったらしい。


今はお店の人がヴァルマを探しているらしい、この損失をヴァルマに背負わせて、成人したら娼婦にする為だ。


これは大きな損失だ、払うにしても何年かかるか分からない、それでもこれをヴァルマに背負わせない。


”私が払います。”私にできるのはこれだけだ。


どんな事になろうとも。


まだ子供だから心配だけど、あの子は強い子だ、大丈夫。


自分に言い聞かせる様に”大丈夫”と繰り返した。


結局その後もヴァルマは見つからなかった。


そして私は借金奴隷になった、期間は10年だ。


これで良い、でも、もうヴァルマを探しには行けない。





お願い、誰か、あの子を・・・。










あれから4年経ってからヴァルマが見つかった。


見つかった時にはもう犯罪奴隷に落とされていた。


そして捕まった時に右腕を斬り落とされたらしく片腕だったと、お店の人が話してくれた。


お店の人がヴァルマを見つけた時に話しをしようとしたら、”噛みつかれた”って言ってた。


結局その日は話しができなかったから、翌日に別の人が会いに行ったら、また噛みつかれたそうだ。


それで、主人である店主さんが私を連れてもう一度会いに行ったのだが、ヴァルマはもういなかった。


冒険者の男性に売ったらしい、しかもたった金貨1枚だ。


たとえ片腕でも普通はそこまで安くはならない。


ただヴァルマが2回も噛みついたから、奴隷商の手に余ったらしくて、捨て値同然で売り払ったのだ。


冒険者の奴隷になると言う事は、夜は冒険者に抱かれて、昼は荷物持ちなどをさせられる、そして危険になったら真っ先に切り捨てられる存在だ。


ヴァルマの様に安い奴隷は特に扱いが悪い。


奴隷商の人にどんな人に売ったのか聞いたが、通りがかっただけの冒険者で詳しい事は分からないと、ただ悪い人には見えなかったと。





もう、会う事も叶わない、奴隷商の言葉を信じるしかない。





どんな人かは分からない、でもお願い、あの子を、私の大切な宝物。





「ヴァルマ。」


「親の心子知らず」のお話でした。

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