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世界でただ一人の種族はチートだった  作者: どんぺった
第1章 不如意なる人生
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第24話 ありがとう

今日は予定通りに南門からラヴィネンの町を出てへリスト方面に向かう。


町を出てから暫く街道を歩き、それから人目が無くなると森の方へ進んだ。


本来はこのまま村を1つ経由してへリストへ向かう予定だったのだが、その前にしておきたい事がある。




森の入口に着いたので、へリストに向かう前にする事を話す。




「ヴァルマ。ちょっと確認しておきたい事があるんだ。」


「おう!なんだ?」


「奴隷商で聞き忘れてた事があるんだが。ヴァルマに俺についての秘密を守る義務はあるのか?」


「ん?そりゃ秘密をばらさないかって事か?」


「そうだ。」


「奴隷が主人の秘密を話すのは、主人の害になるから契約違反だぞ。でもそんなの無くったって、オレはシロウの秘密を守るぞ?」



何とも健気な事を言うものだ。


しかし秘密が漏れないのであれば、自身の事やスキルの事を説明しても大丈夫だと言う事だ。



「そうか、分かった。それじゃあ少し俺の秘密を話す。」



まず初めに話したのは、自分がこの世界の人間では無かった事、そしてこの世界に偶然来てしまい、人族ではなく真人族と言う種族になってしまった事を話した。



「う~ん、難しくて良く分かんないけど、シロウが人族じゃ無い事ってそんなに気にする事か?シロウはシロウだろ?」


「・・・そうか、そう言ってくれると俺も嬉しいよ。」



自分でも忘れそうになる事もあるが、それでも”世界でただ1人の種族”と言うのは怖くて、そして寂しくもあった。


人と言うのは、会った事が無くともまずは”人種”や”国”で判断する、会えば容姿を見て最初の印象を決める、そこから会話をして声や話し方で性格を判断して、そして最後に思いや考え方を知る事でその人との付き合い方を判断する事になる。


そしてこの世界の”種族の違い”と言うのは、元の世界の”人種の違い”よりも遥かに壁が厚いと思う。


けれど、ヴァルマは俺を種族など関係なく俺を個人として見てくれるのだ、これはちょっと嬉しい。



「コホン、それでな問題は種族スキルなんだよ。」



種族スキルの効果の1つで仙境について説明した。


この仙境は便利ではあるが、スキルとしては異質である事や扱い方で不明な箇所がある事、他者に知られた場合にどう反応されるか分からない事などを話した。



「それで、シロウはどうしたいんだ?」


「まぁ、便利だからな、使いたいんだが、その前に確認しておきたい事もあるんだよ。」


「分かった。オレが手伝えば良いんだな!」


「そうだ。これはヴァルマにしか頼めない事だからな。」






それからヴァルマの協力で仙境を確認した。


影の扉はヴァルマにも見る事ができた、これは他の人でも見れると言う事だ。


そして俺が中に入ると影の扉は消えたらしい、そして出てくる時には影の扉が現れてから俺が出て来たと言われた。


つまりは影の扉は出入りの時のみ現れると言う事だ。



次は他の人が入れるかどうかを検証してみた。


影の扉が現れていればヴァルマ1人でも入る事ができた、そしてヴァルマ1人を中に残した時も空間内にある影の扉に触れば外に出る事ができた。


つまりは入る時のみスキルを発動すれば良いと言う事だ。



最後は出現場所だ、これはスキルを発動した場所が起点となっている。


まずはヴァルマを中に残してから1人で外に出る、そしてスキルを発動した場所から移動した後にヴァルマが外に出ると俺の傍に出現した。


つまりは優先順位があって、俺の傍かスキルを発動した場所になる、と言う事だ。



「・・・マジで便利だな。」


「そうなのか?」


「そりゃな。これで中に家を建てたら、何時でも何処でも家に帰れるんだぞ?」


「おぉう!?そうだな!良いなそれ!」


「それに、ヴァルマを中に残して俺が移動すれば、ヴァルマが行けない様な場所でも、俺が行ける場所なら一緒に連れて行く事もできる、って事だ。」


「・・・そんな場所に行くのか?」


「それは分からんが、そうした事もできる、と言う話しだ。」


「おう、分かった。」


「だからこれからここに家を建てるために資材を回収せねばならん!」


「ああ!それで斧か!分かった、じゃあ、頑張って木を切るぞ!」


「まぁ待て!その前にもう1つ検証したい事がある。」


「なんだよ、気合いれたのに!」






「それは、ヴァルマの腕の事だ。」


「!?・・・腕?」



俺もこの世界に来た時に右腕を失ってしまい、その後をどうするか悩んだが、ユグドラシルに貰った身体再生スキルのおかげで右腕が戻って来た。


もしこの身体再生が自分以外でも再生させる事ができるのならば、ヴァルマの失った右腕も戻せるかもしれないのだ。



「・・・ホントか?・・・戻って、来るのか?」


「すまんが、試した事が無いから確証は無い。だがこのスキルが”特殊スキル”だと言う事に賭けたいんだ。どうなるか分からんが試して良いか?ヴァルマ。」


「・・・・・・うん。お願い、オレは・・・オレはもう・・・。」


「そうか分かった。それじゃ、右腕をこっちに。」



ヴァルマは肘から先が無くなっている右腕を出した。



「・・・それじゃ、始めるぞ。」


「うん。」



ヴァルマの右腕に触れて、再生する事を願いながら身体再生スキルを発動する。


そしてスキルに魔力が流れる、発動はしているが魔力の消費が激しい。



「・・・くっ、まだ、まだだ。」



魔力は流れているのにまだ再生はしない、ダメかと思った時”ふっ”と魔力の流れが軽くなる。



「!?・・・あ!あぁ・・・あぁぁぁ・・・。」



そこにはヴァルマの右腕が戻っていた。


やはり身体再生は他者の身体も再生させる事ができるのだ。


ただ自分の身体を再生させるよりも魔力の消耗が激しいらしい。



「は、はは。やった!やったぞ!ヴァルマ!」


「シロウ、シロウ、シロウ!・・・っあぁぁあぁ・・・。」


(・・・良かった。本当に良かった、これでヴァルマも少しは救われるだろう。)



泣きながら抱きつくヴァルマの頭をシロウは優しく撫でるのだった。






「うぅ、・・・なんか、何度も泣いて・・・恥ずかしい。」


「はは、気にするな。嬉しくても悲しくても、泣きたければ幾らでも泣けば良い、それは恥ずかしい事じゃ無いんだ。」


「うん。・・・ありがと。」






「よし。それじゃこれからの事を説明する。」


「ん?木を切るんじゃないのか?」


「それもあるが、まあ、それは俺がやるから良いんだ。それよりもまずはヴァルマの事だ。」


「オレ?」


「そうだ。まずヴァルマは食事と運動で身体を作る必要がある、これは今の身体能力じゃ戦闘は厳しいからだ。」


「っ、オレは戦えるぞ!」


「まぁ、聞くんだヴァルマ。そもそもな・・・。」



それから戦闘についての話しをした。


戦闘には技術も必要だが、それ以前に体力と体幹を鍛えなければ、どんな技術であっても使いこなせはしない、いわば技術の前の基礎を作る工程だ。


それができれば、次は身体の動きや力の流れを覚える必要がある。


例えば”殴る”と言う行為を腕だけで行うのは無く、足から腰へそして背中から腕へと力を流して”殴る”事で威力を増す事ができるようになる。


それらができてこそ技術を生かすことができる。



「なんか、難しいんだな。・・・教えてくれるのか?」


「ああ、教えるさ。ただな、これは結構時間がかかるし最終的な終りも無い。ずっと続けるんだ。」


「おう!オレ、やるぞ!頑張るぞ!」


「うん。頑張れ!じゃあ、鍛錬と資材回収の場所を探しに森へ行くぞ。」


「お~!」



ヴァルマは返事をしながら笑顔で右腕を振り上げる。














(あぁ、本当に良かったよ。ありがとうユグドラシル。)


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