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世界でただ一人の種族はチートだった  作者: どんぺった
第1章 不如意なる人生
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第22話 過去

「そうかヴァルマか、俺はシロウだ。よろしくな。」


「おう!よろしくな、シロウ!」


(上から目線で返事をしてくるが、こいつは本当に奴隷なのだろうか?)


「それじゃ、まずはヴァルマの事を聞かせてもらおうか。・・・っとその前に食事にするか。」



話しを聞こうかと思ったのだが、ヴァルマのお腹が「くきゅぅ・・」と鳴ったので、まずは昼食を食べる事にした。


本人は顔を真っ赤にして固まってしまったが。



「そ、そうか・・・その・・・ごめん。」


「いや、いいよ、そんな事を気にするな。」



ヴァルマの頭を撫でながら慰めるが、何とも可愛らしい所もあるものだ。


この世界における奴隷の食事は”奴隷食”と言ったようなものは無く、主人が決めたならば何を食べさせても問題は無い。



「ちょうど良い、そこで食事にしよう。」


「おう!」




通りを挟んだ向かい側に食堂があったので行く事にした。




「いらっしゃい、2人かい?」


「あぁ、2人分頼むよ。」


「あいよ、空いてる席で待ってな。」



食堂に入るとエプロン姿の店員が声をかけて来たので食事を頼んだ。



「さて、これからの事を簡単に説明するぞ。」



明日ヴァルマの装備品を整えて、明後日には町を出てへリストに向かう事、そしてダンジョンに挑戦する事を伝えた。



「そっか、・・・ダンジョンか。」



ヴァルマは真剣な表情で考え込んでいる。



「はいよ、お待たせ。」



店員が食事を持ってきたので食事にする事にした、ヴァルマは左手でフォークを使い食事をしている。



「へぇ、なかなか器用だな、利き腕じゃ無いんだろ?」


「ん?そりゃ、できなけりゃメシも食えねぇだろ。」



それから食事を楽しんだ、今までは1人での食事がほとんどだったが、これからはヴァルマと一緒に食事をする事になる。


そう考えると嬉しさと心配とで感慨深くも複雑な気持ちになる。





食事が済んだので食堂を出て宿屋に戻った。





「ただいま、女将さんちょっといいか?」



宿屋の女将にヴァルマを買う事になった経緯を話して、宿側の扱いがどうなるのかを聞いた。


奴隷にもベッドをあてがうなら2人部屋に移動すること、奴隷を床に寝かせるならそのままでも良い。


ただし、どちらの場合でも食事は別料金になる。



「じゃぁ、2人部屋で頼む。料金はどうなる?」


「えぇっと、部屋代の差分が銅貨2枚と食事があと4回だから銅貨2枚で、全部で銅貨4枚だね。」


「分かった、それじゃすぐに部屋を移動するよ。」



女将さんのお金を渡してから、元の部屋へ行き荷物を持って2人部屋に移動した。


2人部屋は1人部屋よりは広いがベッドが2つ並んでいるのでむしろ狭く感じる。





まずはヴァルマの装備をどうするか決める前に、ヴァルマの事情と能力を確認する必要がある。



「さて、それじゃ、まずはヴァルマの今までの事を聞かせてくれ。」


「聞くような事じゃないぞ?よくある話しだし。」


「それでも一応な。」





それからヴァルマは過去の事を話し出した。





ヴァルマの母は奴隷では無いが娼婦だった、娼婦の女性は妊娠しては仕事にならないので、避妊薬を飲んで妊娠を避けている。


しかしそれでも妊娠してしまう事がある、そうした場合にどうするのかは店側の判断も大きく、ヴァルマの母は生む事を勧められた。


出産までの約1年間は客を取る事ができないが、裏方の仕事なら無理の無い範囲でならばできるからだ。


その後は生まれた子供を育てながら娼婦を続けて、ある程度の歳になれば子供も店で雑用として働かせる事ができる、更にその子供が女であれば成人して娼婦になる事も多いので店にも利がある。


ただ、ヴァルマからすれば、愛してもいない男に抱かれる母の姿を見て、自分の将来を見てる様で嫌になる。




「あの頃は、オレもいつかああなるのかって、毎日思ってた。」




それが変わったのはヴァルマが10才になった頃だった。


客の1人が店で雑用の仕事をしていたヴァルマを見て”抱かせろ”と言ったのだ。


店側も”流石にそれは”と始めは断ったのだが、その客は貴族の縁戚であり、領主が主催するパーティーに参加するためにこの町に来ていたらしく、領主の名前を出されて断り切れなかったのだ。


そして客の所に連れて行かれて、部屋の扉を開けると客の男が裸になってベッドで待っていたのだ。




「もう、本当に気持ち悪くてさ。なんであんな男に!って。」




それからは頭が真っ白になって、店の人を突き飛ばして店から逃げ出した。


店から逃げて人からも逃げて、気が付いたらスラムにいた。


その後はお決まりの如くスラムの仲間入りだ。


スラムではゴミ漁りから盗みに食べ物の奪い合い果ては殺しまで日常茶飯事で、隠れてやり過ごしたり見つかって喧嘩も何度もした。


そんなスラムにいると、昨日見かけた奴が翌日にはいなくなったり、道端で死んでいたりして、誰が何時どうなるのか分からない恐怖が襲ってくる。


それでも生きるために食べ物を探して盗んで必死に生きて来た。


そんな事を4年続けたが、最後は店の食べ物を盗もうとした時に、右腕を店主に斬られて捕まり犯罪奴隷になってしまった。


捕まった時に聞いた話しでは、その店主は元Bランクの冒険者だったらしい。




「そうか、頑張ったんだな。」




そう言ってヴァルマの涙を拭う。


話しの途中からヴァルマは泣いていたのだ、本人も気付かぬ内に。




「っん・・・ぐっ、・・・あぁ・・・あぁぁぁ・・・。」




気が付いたら止められなかったのだろう、我慢してしたのが堰を切ったように泣き出した。


ヴァルマの気持ちを分かってやる事もできないし、変わってやる事もできない、今はただ抱きしめて慰めてあげる事しかできない。




「うぅぅ、ぐすっ。・・・・・・ごめん。」


「落ち着いたか?」


「うっ、大丈夫だ、うん、大丈夫。」



暫く頭を撫でながらもう少し落ち着くのを待った。


今までよく生き抜いて来れたものだ、母親も店の人も誰も助けてくれず、だからこそ”戦わなけりゃ死ぬだけだ”と思う様になったんだろう。


悲しいが、それでもやっぱり強い娘だ。






「もう、大丈夫そうだから、次の話しだな。」


「おう、いいぞ!」



目を赤くしているのに”ニカッ”っと笑うと、今度はこっちがちょっと泣きそうになる。



「コホン、それで戦うにしても、まずはヴァルマの能力を知っておきたい。」


「ステータスを教えればいいのか?」


「そうだ、現状が分からないと、今後の事も決められないからな。」



そしてヴァルマのステータスを聞くとこのようになった。


------------------------

[ヴァルマ] 人族 女性 14才

■固有スキル

なし

■種族スキル

なし

■特殊スキル

なし

■汎用スキル

【格闘術・初】・【体術・初】

【気配感知・初】・【気配隠蔽・初】・【動作隠蔽・初】

【毒耐性・初】・【痛覚耐性・並】・【恐怖耐性・並】

------------------------



「・・・はぁ、どうにも泣けてくるね。」


「そんなに酷いか?」


「いや、そう言う意味じゃないんだが、なぁ。」



ヴァルマのステータスにある格闘術や体術は喧嘩が由来のもので、気配や動作は隠れたり盗んだりを続けた結果で身についた技能だろう。


ただ、耐性が今までの生活の厳しさを物語っている、しかも痛覚と恐怖が”並”にまでなっているのだ。



「あれ?もしかしてヴァルマが客に噛みついたってのは、痛覚耐性があるから奴隷紋の痛みに耐えられたからなのか?」


「うぅ、それでも痛んだぞ!それに噛みついた奴はあの娼館の奴だったから。」


「あぁ、なるほど、連れ戻されると。だが母親もいるんだろ?」


「母親!?守ってもくれないあいつが?・・・あいつはあの客にオレを売ったんだぞ!そんな奴は母親じゃない!」


「あぁ、すまん、分かったよ、もう言わないから。そんなに怒らないでくれ。」


(こりゃあ、母親の事はは禁句だな。)


「コホン、話しが逸れたが、ヴァルマは武器を使った事はあるか?」


「う~ん、武器って言うか、棒?ならあるぞ。」


「そりゃ武器とは言わんな。つまり格闘戦主体って事か。」



ヴァルマのステータスには”格闘術”と”体術”のみだが、これがあれば他の戦闘方法の基礎にもなるので悪い事じゃ無い。


そして気配感知で相手を探す事ができるし、気配・動作の隠蔽は隠れるのには適している。


現状では最も適している職業としては弓士だろう。


しかし、片腕では弓を射る事はできない。



(う~ん、どうするか。・・・俺の時の様に、身体再生スキルがあれば・・・、あれ?身体再生?)



今までに使ったのは腕を再生した時だけで、その後は使う事も無かったので意識していなかった。


しかし、気になったのは”身体再生”と言う表現と、このスキルが”特殊スキル”だ、と言う事だ。


自分の身体を再生させるスキルならば”自己再生”とかで良いのではないか?”特殊な再生スキル”と考えればもしかして他者の身体も再生できないだろうか?



(やって見なければ分からない・・・が、可能性はあるか?けど、それは町を出てからだな。人に知られる危険は極力避けたい。)


「どうした?考え込んで。」


「あぁ、まぁ、な。それより、使ってみたかった武器とかはあるか?」


「う~ん、剣とかあれば良いなと思った事はあるけど。よく分からねぇよ。」


「まぁ、そうだよなぁ。仕方ないそれは明日考えよう、今日はもう遅いし夕食の時間だ。」


「おう!」







その日は夕食を食べて眠るのだった。


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