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世界でただ一人の種族はチートだった  作者: どんぺった
第1章 不如意なる人生
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第21話 ヴァルマ

今日は町を散策して資材探しをする。


物を買うなら商店だ、そう意気込んで大通り沿いの店を見ていったが、資材になりそうな物は売っていない。


商店に売っているのは加工された板や角材などで、これでは全く足りない。


それならば建物用の資材なのだからと、今度は大工店を探した。



「はぁ?木材が欲しいだぁ、なぁに言ってんだ?ここは大工の店だぞ?木材が欲しけりゃ、ギルドに行け!」



すげなくあしらわれてしまったが、良い事が聞けた。



「なるほど、ギルド・・・って商業ギルド?」


「ちげぇよ、生産ギルドだ。」


「おぅ、そうか生産ギルドね。いや~助かったよ。ありがとうな、おっちゃん!」



大工の話しでは、生産ギルドでは生産者が使う資材を集めて生産者に売っているそうだ。


昔は個々での仕入れや商人に依頼するなどしていたが、価格や品質が不安定だったり品物が届かなかったりして大変だったらしい。


それで生産者が資材の品質と仕入れを安定させるために結成したのが生産ギルドの始まりらしい。






それから町中を探してみたが、生産ギルドが見つからない。



「はぁ・・・場所を聞いとけば良かった。」



途方に暮れていると、路地裏の方から怒鳴り声と女性の悲鳴が聞こえた。


何かあったのかと、剣の柄を掴みながら声がした方へと向かう。




「何をしている!それ以上やるなら俺が相手になる!」



そこには、ぼろぼろの服を着た女に殴りかかっている男がいた。



「は?なんだ、てめぇは?邪魔するってのか?」


「彼女が何をしたのか知らんが、女を襲っている男にしか見えんぞ!」




そう言った瞬間2人が固まり視線を合わせた。




「は?・・・・・・いや、待て、違う、これは違う!違うぞ!」


「何が違うんだ?」


「あ~、いや、まぁ、こいつがなぁ、客に噛みついたんだよ、言葉通りにな。」


「噛みつく?・・・客って?」


「そりゃあ、こいつは奴隷だからな。」



そう言った男は奴隷商で、奴隷を買いに来た客に彼女を見せたら、いきなり噛みついたのだそうだ。


普通の奴隷はそんな事はできないはずなのだが、彼女にはそれができたらしい。


それも今回で2回目なので、厳しく躾けるつもりでここに連れて来たのだと。



「あぁ、なるほどね。そこに俺が来た・・・と。そりゃ、すまなかったな。」


「いやまぁ、こっちも悪かったよ、まさか暴漢に間違われるとはな。しかし流石にこう何度もこんな事されちゃこっちも信用問題だしなぁ。」


「まぁそうだな、でも躾けなんてのは殴れば良いって訳じゃないだろ?」


「あぁ、まぁ・・・・・・・・・。おめぇさんは冒険者か?」


「ん?そうだが、それがどうした?」


「なぁ、おめぇさん、こいつを買わねぇか?金貨1枚でいいぞ!」


「はぁ!?なんでそうなる!」


「いや、おめぇさんならちゃんと躾けられるんじゃねぇかと。あれを。」



そう言った奴隷商が女奴隷の方を見たので、つられて自分も見る。


女奴隷は赤毛のセミロングだが手入れはされてないらしくボサボサで、服は汚れた貫頭衣を着ている、そして瞳は灰色で綺麗だがつり目でこちらを睨んでいる。


座っているので身長は分からないが、問題は右腕が無い事だった。



「はぁ、そうは言うが俺は冒険者だぞ。片腕で自分の身も守れないんじゃ、足手まといになるだけだろう?」



そうは思うのだが、自身も一度片腕を失くしてしまった事があるので、どうにもやるせない。


しかも女奴隷で片腕ならば、後は娼館で客を取るしか無くなるだろう。



「っふざけるな!オレは戦える!」



奴隷商とのやり取りをしていると、女奴隷が口を挟んできた。



「・・・戦える?そんな身体で?・・・舐めてるのか?」



少しばかり同情したが、そんな事を言われれば怒りも湧く。


戦いは遊びじゃ無い、自分の命と相手の命がかかっている、片腕で魔物相手にどう戦うと言うのだ。



「戦える!・・・戦わなけりゃ死ぬだけだ!・・・オレを連れて行け!」


「へぇ、お客さんは気に入られたようですね、どうです?」



助けられるならば助けてやりたい、これはただの同情だ、それは分かってる。


しかし連れて行っても自分の身が守れないのでは危険だ。


けれど俺が片腕を失くした時は”戦う”など考えられなかった、その点では彼女は俺よりも心が強いのだろう。






さっきまで睨んでいた目が真剣に、そして真っすぐこっちを見ている。






「・・・・・・はぁぁ、負けたよ。ただ金貨1枚は高すぎないか?。」


「んぇ!?いやしかし・・・ですが。」


「・・・分かった、それじゃ金貨1枚でいいから身なりを整えてやってくれ、これじゃ連れて歩けない。」


「へい、畏まりました!ありがとうございます!」




それから奴隷商に金貨1枚を渡すと、女奴隷を連れて中に入って行った。




「はぁ、どうすっかな~。こんなの予定外もいいとこだ!」



資材を買いたくて町を散策していたのに、買ったのが奴隷では今後の予定が狂ってしまう。


そもそも、彼女は片腕でどうやって戦う気なのだろうか?






暫くしてから奴隷商に呼ばれて契約のために中に入った。


女奴隷の身長は140cm程度で髪も身体も綺麗に洗われていて、服は白いワンピース姿になっていた。



それから奴隷商は奴隷の扱いについて説明してくれた。



借金奴隷の場合は一定の期間を奴隷として仕事をすれば解放されるが、彼女は犯罪奴隷であり生涯解放はできない。


主人が死んで奴隷が生き残っていた場合は奴隷紋の効果が無くなる、ただし解放された訳では無いので奴隷紋自体は消えない。


こうした所有者不在の奴隷を野良奴隷と呼び、発見者が奴隷商に連れて行けば契約料のみで再契約ができる。



「へぇ、でも野良奴隷って、これは主人を殺せば奴隷が手に入るって事か?」


「それはできねぇんですよ。お客さんは入城時の水晶の事はご存じで?」


「ああ、もちろん知ってるが?」



その話は少しばかり興味深かった。


入城時に使われる水晶は犯罪者を識別できるが、あれはダンジョンで発見される物らしく原理は不明なのだと。


そしてこの奴隷契約も同じくダンジョンで発見された物を使って行うためなのか、犯罪目的で主人を殺した者とその関係者では奴隷との再契約が結べないらしい。



(個人の犯罪を識別してるって事か?思い当たるのはステータスシステムだけど、そんな項目は無いしな。)


「あぁ、すまん続けてくれ。」



奴隷契約をすると奴隷の首に奴隷紋と呼ばれる文様が浮かび上がり、主人を害する行為を行おうとした場合や主人の命令に逆らった場合に激痛を与える事になる。


主人が許せば解除できるが、解除されなければ30分程度痛みが続くらしい。


ただ命令にも限度があり、主人や奴隷の命に関わる命令をされた場合に拒否しても奴隷紋は反応しない。



「ん?それは、奴隷に戦闘をさせられないって事か?」


「いえ、強制できねぇだけでなんで、本人が納得すれば問題はありませんよ。」


「なるほど、それなら大丈夫か。あとギルドの登録はできるのか?」


「それはできねぇです。」



奴隷は人だが主人の所有物として扱われるので身分を持つ事はできない、ただし町の出入りをする際には、奴隷証と呼ばれる奴隷用のカードがあるので、それを提示する必要がある。


このカードには主人と奴隷の名前に加えて、その奴隷の髪や目の色などの特徴が記入されている。



「そのカードはここで貰えるのか?」


「ええ、こっちで用意しますんで、大丈夫です。」


「分かった。それじゃあ、契約を始めてくれ。」


「へい、畏まりました、まずこの杯には奴隷契約用の隷属水が入ってます、ここに主になるお客さんの血を混ぜて奴隷に飲ませれば、それで契約は完了しますよ。」


「分かった、お前はそれで良いんだな?」


「ああ、良いぞ。オレが戦える事を思い知らせてやる!」






そして、契約が結ばれた。






奴隷商からの帰り、今後の事を考えながら歩く。



生産ギルドを見つけて無いので資材はまだ手に入れてない。


自身の種族やスキルにまつわる事情もある。


町を出る前に彼女の戦闘と装備を確認する必要がある。


そもそも、彼女をどう扱ったら良いのか分からない。




「はぁ~、問題ばかりだ。」


「どうした?」


「どうしたって、そりゃあ・・・そう言えば、まだお前の名前すら聞いて無かったな。」


「ん?オレか?オレはヴァルマだ!」


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