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世界でただ一人の種族はチートだった  作者: どんぺった
第1章 不如意なる人生
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第17話 冒険者としての壁

この話は残酷な描写があり刺激が強いと思います。

こうした話を好まれない方は読まずに次の話へ進んで下さい。

隣りの町までは馬車で10日間で徒歩だと15日かかる、次の村まで大体徒歩5日で2つの村を経由する事になる。


食料は念のため7日分用意してあるが、早く着くに越した事はない。


ヴァーラの町を出て1日目の夜は、街道から少し離れた場所で野営する事にした。


食事はパンが2つに町の商店で見つけた燻製肉と梨の様な果物が1つ、今日の野営で調理はしない。


あとはマントに包まって寝るだけだ。










「さっさと、出て来い!」



町を出てからずっと後をつけて来ていた存在に声をかけた。



「・・・なんだ、気付いてたのか?」



出て来たのはオーク冒険者ことオスカリだった、他にも見知った顔がある。



「その図体で隠れられるとでも?一応聞いておくが何しに来た?」


「はっ、相変わらず生意気なクソガキだなぁ。・・・分かってんだろ?てめぇはダンジョンに行って行方不明になるんだよ!残念だったな!ぎゃはっはは!」


「行方不明ねぇ。他にも見た事がある奴がいるんだが・・・誰だっけ?」


「てめぇ!俺様の事を忘れただと~!てめぇの所為でギルドに借金する羽目になったんだろうが!どうしてくれんだ!」


「ああ!思い出した、”脳筋ハゲ”だ!・・・その節はありがとう?」


「タルヴォ様だ!てめぇに奪われた金は返して貰うぞ!」


「いやいや、あれはお前が決闘を吹っ掛けてきたからだろ?俺の所為にすんな!相変わらずのバカだな!」


「タルヴォ!いい加減にしろ!そんなこたぁどうでも良いんだよ、昨日の憂さを晴らしに来たんだ、しかも随分と荒稼ぎしていたみたいだしなぁ、おいしい獲物ってやつだな、おい!さっさと殺るぞ!」



そう言うとオスカリは斧を構えた、そしてオスカリの手下2人とタルヴォも囲むように移動する。



「あぁ、もう一度聞くが、これは盗賊行為だって、分かってるんだよな?犯罪だぞ?」


「犯罪じゃねぇ!てめぇの所為で良い笑いものだったからなぁ!こいつぁ、オシオキだ!」



言うが早いか、オスカリは斧を両手で持って真っすぐ振り下ろして来る、同時に手下の2人が退路を塞ぐ様に左右後方から剣を薙ぐ、完全に動きを封じるつもりだ。


流石にCランクだ対人戦闘に慣れている。


斧を剣で右に受け流して、オスカリの左を抜けると囲いを脱した。



「最後の警告だ。これ以上やるなら殺すが構わないのか?」



こんな奴らでも一応は同じギルドに所属している冒険者だ、ここで手を引くなら見逃す事もできる。



「はっ!戯れ言を!てめぇ如きに俺が殺せる分けがねぇだろうが!」



最後の忠告だったが、聞き入れるつもりは無いらしい。


今度は後ろからタルヴォが剣を袈裟切りに振るって来たが、振り返り様に剣で弾き返した。



「悪いが前とは剣の出来が違うんだ。」



前回タルヴォと決闘した時にはごく普通の長剣だったが、今はドワーフの鍛冶師ゲゼル作の重鉄の長剣だ、大重剣であっても打ち合う事ができる。


再び囲って来たが、今度は先に右側に移動して来た手下に斬りかかる、剣で受けようとしたが剣ごと横一線で斬り殺した。



「ひっ!」



もう1人の手下が悲鳴を上げた瞬間に”飛剣”を飛ばして首を飛ばした。



「さて、あとはお前達2人だけだな。」



先に手下を殺したのは連係が厄介だったからだ、オスカリとタルヴォは共闘した事が無いのだろう連係攻撃をして来ない。


オスカリの実力はまだ計り切れて無いが、タルヴォは以前と変わらない。



「てめぇ!」



オスカリが怒りに任せて斧を振って来る、攻撃は単調だが速度は早い。


避けている間にタルヴォが後方から近づいて来た、今度は2人で挟むつもりなのだろう。


タルヴォが剣を振り上げた瞬間、オスカリの斧を弾き返すと同時に1回転してタルヴォの腹を切り裂く、そしてタルヴォは呆気に取られた顔で後に倒れた。



「んな!?タルヴォ!」



残るはオスカリ1人だ、こうなれば決闘と同じだ、剣を右下に構えて出方を待つ。


流石に拙いと思ったのか、オスカリはじりじりと下がる。



「・・・逃げる気か?」



この言葉に反応する。”格下相手に逃げる”これほどの屈辱も無いだろう。


そしてオスカリが斧を横に構えた瞬間に”飛剣”を顔に向けて飛ばす。


オスカリが反応して斧で防御したが、これで視線を潰し次の瞬間には一気に踏み込み横一線で胴を断ち切った。



「ふぅ~。」



今後も冒険者として依頼を受けていればこうした事もある。


これは冒険者としての壁でもある、人を殺す事ができなければ、盗賊の討伐や護衛依頼は受けられない。


そして、これを越えられる冒険者だけがCランクに上がれる。


分かってはいたし覚悟もしていたが、それ程動揺していない自分が不思議だ、日本にいた時は、人はおろか動物だって殺した事など無い。


それ以前に殺そうなど思った事すら無い。


環境によって慣れたのか、それともこの世界で種族が変わってしまった事が原因なのかは分からない。












「さて、そろそろ出てきたらどうだ?こいつらとは目的が違うんだろ?」


「あれ?気付いていたんですか?上手く隠れられていると思ったんですが。」


「まあ、最初は気付かなかったさ。でも手下を斬った時に反応したろ?・・・オスク。」


「いや~、流石ですね。シロウさん。ベアも直ぐ見つける程ですからね。」


「それで、何しに来たんだ?俺を捕まえる為か?」


「まさか!・・・オスカリさんを尾行していたんですよ。彼は以前にも他の冒険者を襲った嫌疑がかかっていたので、今回も同じ事をするのではないか、と。」


「なるほどね。それで?殺してしまったが、良いのか?」


「えぇ、今回で確認できたので問題はありませんよ。どのみち盗賊行為は犯罪奴隷か死刑ですから。」


「そっか。・・・それで”これ”はどうすれば良い?」


「あぁ、盗賊の討伐として処理しますので、持ち物は戦利品としてシロウさんが貰って大丈夫です。遺体は火葬か土葬ですね、放置して疫病の原因になっても困るので。手伝いますよ?」


「助かる。」





武器や防具は要らないので、お金だけ貰って後は埋める事にした。





「それで、オスクは何者なんだ?エーリクには新人冒険者って聞いたが?」


「ははっ、そうですねぇ・・・ある時は新人冒険者!またある時はポーター!しかしその正体は・・・ギルドの調査員でっす!」


「・・・はぁ、まぁ、そんなもんだろうな。しかし調査員ってその若さでか?」


「いえいえ!実は結構な歳なんですよ?なんと今年32才です!」


「はぁ?32って俺より上じゃねぇか!」


「そんなに褒めないで下さいよ~照れてしまいます~。」


「褒めてねぇよ!くねくねすんな!気持ち悪い!」


「まぁ、冗談です。」


「はぁ~、疲れる。お前ってそんな性格だったんだな。」


「コホン。いえ、今は努めて明るくしているだけです。」


「ん?ああ!俺の為か!」


「まぁ、初めて人を殺すと・・・ねぇ。」


「悪かった。だけど大丈夫だ、そこまで落ち込んで無いよ。」


「それなら良かったです。ただ今日はもう日も落ちているのでボクも一緒に野営させて下さい。・・・良ければ添い寝しますよ?」


「いらんわ!さっさと寝ろ!」





結局オスクの性格は良く分からなかったが、やはり人を殺した後は誰かといる方が気が紛れる。


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