第16話 旅立ち
翌日からは資金調達の為に、毎日ボアを2頭狩ってくる事にした。
これは、ボアならば狩りも運搬も自分だけでできるので、ポーターに移動速度を合わせる必要が無くなり効率が良くなるからだ。
そして空いた時間に剣の訓練をする、ダンジョンでは”悪鬼種”が多く、剣の技術が無ければ死ぬ可能性が高くなるそうだ。
それにランクが上がれば、対人戦闘の機会もあるので、今から訓練しても無駄にはならない。
そうして5日間の仕事と訓練の結果、資金が金貨2枚を超えた上に、剣技【飛剣】を修得できた。
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[シロウ・ホウライ] 真人族 男性 26才
■固有スキル
なし
■種族スキル
【真人】
■特殊スキル
【身体再生】・【言語理解】・【周辺感知】
■汎用スキル
【身体強化・並】・【魔力操作・初】・【剣術・並】
【格闘術・初】
■技
【飛剣】
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ステータスを確認して”技”と言う項目が増えて”飛剣”が記載されていた。
この飛剣とは魔力を剣閃に乗せて飛ばす技だ、これは今使っている剣が斬る事に向いているためか修得は早かった。
更に5日間連続でボアを2頭狩り続けた結果Dランクに昇格した。
たった5日での昇格だったので疑問に思い聞いてみたら、ギルドの受付嬢フロティさん曰く”毎日2頭なんてソロでは普通は無理ですよ!?”と言われた。
「よし!目標達成だ~!」
隣りの町まで馬車に乗って10日で料金は銀貨2枚だ、野営する事もあるが間に村もあるので食料の心配はそれほど無い。
「しかし10日間も馬車の移動では体が鈍るし金も掛かる・・・ここは徒歩?いやいっそ走るか?」
結局”これも修行だ!”と走る事にした。
▽▽▽
翌日の朝、朝食後に冒険者ギルドで町を出る事を告げる。
「おはよう。ちょっと聞いて良いか?」
「はい、何でしょう?」
「明日この町を離れる事にしたんだが、何か報告とかする必要はあるのか?」
「えっ?何処かへお出かけですか?」
「いや、”へリスト”のダンジョンに行こうと思ってな。」
「・・・ダンジョンですか?もしかして1人で行かれるのですか?」
今までもパーティに誘われる事があったが、収入が減るので断っていたのだ。
そして”ダンジョン”とか”1人”などと聞こえると周りが騒ぎ出した。
ダンジョンにはEランク以上の冒険者ならお金を払えばソロでも入る事はできる、ただしそれは命の危険を伴う行為だ。
「まぁた、てめぇか、クソガキ!ダンジョン舐めてんのかぁ!」
話しに割って入って来たのは、以前正規登録の際に脅してきたオーク冒険者だ。
「・・・はぁ、いや舐めるも何も、あんたに何の関係があるんだ?あんたは俺の親か?俺は嫌だぞ、こんな親。」
『ぷっ!』
真っ当な事を言ったつもりなのだが、周囲からは笑いが取れた。
本人は怒りで顔が真っ赤だが。
「てめぇ、俺に向かっていい度胸だなぁ、そんなに死にたきゃ今殺してやる!」
そう言って立ち上がったオーク冒険者は、両手斧を担いで近づいて来た。
冒険者同士の殺し合いなどもっての他で、認められているのは正式な決闘だけだ。
「オスカリさん!止めて下さい!シロウさんも煽らないで下さい!」
受付嬢フロティさんに怒られてしまった。
しばし睨み合っていたが、オーク冒険者もここでは拙いと思ったのか席に戻った。
「シロウさん、ダメですよ!あんな事言ったら!・・・ぷっ。」
フロティさんも小声でそう言うが、笑いがこみ上げるらしい。
「今後は気を付けるさ。それで何か必要か?」
「あぁ、いえギルドに報告して頂ければそれだけで構いません。」
「分かった、じゃあ明日の朝には出立するから、これでお別れだな。」
「はい、寂しくなりますが頑張って下さい。」
「あぁ、じゃあ元気でな。」
(あれ?外に出てもオーク冒険者は動かなかったな。まぁ良い、あとはゲゼルさんの鍛冶屋に行くか。)
その後、剣を買ったドワーフの鍛冶屋に行き、ゲゼルさんに剣の整備を頼み、そして別れの挨拶をした。
「ダンジョンにその剣を食わせんじゃねえぞ!」
(ゲゼルさんなりの励ましなのだろう、怒ってるんだか照れているんだか分からんが。)
その後は旅に必要な食料や道具を町で購入した。
今回も1人旅なのでテントは購入していない、周辺感知があれば奇襲は受けづらいとは言え絶対では無いし、咄嗟の場合にテントの中にいては身動きが取れず却って危険だからだ。
▽▽▽
翌日、世話になった宿屋の女将さんに別れの挨拶をした後に町を出る。
そして、この町を離れるにあたって一番世話になったパーヴォに挨拶するため城外の解体所に寄った。
「よう!パーヴォいるか?」
「おう!いるぞ!」
「町を出て、へリストのダンジョンに行く事にしたから、それで挨拶に寄ったんだよ。」
「へぇ、ダンジョンねぇ。お前もあれが目当てか?」
「ん?あれって何だ?」
「は?聞いて無いのか?かなり話題になったはずなんだが?」
「いや、知らないが?何の話しだ?」
「複合スキルカードの事だよ!ダンジョンで発見されたってもっぱらの噂だぞ!」
「複合スキル?何だそれ、そんなスキル聞いた事も無いぞ。」
パーヴォが話して話してくれたのは3日前に入って来た話しで、メルキース帝国のペドラサにあるダンジョンで複合スキルカードが発見された話しだ。
この複合スキルは”騎士”と言うらしく、複数の効果を持った特殊スキルなのだとか。
そのスキルカードにはスキルの使い方が記載されて、新しいスキルカードの発見に歓喜した冒険者がギルドに報告したのちに、皇帝の耳に入りカードを献上する事で莫大な報奨金を得たそうだ。
「な?夢のある話しだろ?だから、シロウもダンジョンに行くのかと思ったんだよ。」
「あぁ、まぁスキルカードも目当ての1つだけどな。それにしても複合スキルか。そのスキルどうやって使うか聞いたか?」
「ん?やっぱ興味あるか?だろうなぁ。」
「いいから、教えろ!」
「分かったよ!教えるよ!えっと確か・・・。」
スキルカードはカードを持って”スキル取得”と唱えると、所持者の魔力を吸収してスキルを取得する事ができる、あとはその”スキル”を唱えればスキルが発動する。
しかし複合スキルの場合は”効果”を唱えなければ発動しない。
その複合スキルの効果を知るには、ステータスを表示した状態で”スキル”を唱えればステータスに効果が表示されるらしい。
「・・・なるほどねぇ。」
(複合スキルに発動しない・・・か、似てるが違うか?いや、やってみる価値はあるか。)
「まあ、ダンジョンに行くなら、夢があった方が良いだろ?」
「そうだな。簡単じゃ無いだろうが、探してみるさ。」
「おう!そうしろ!」
「ああ、それじゃあ行くよ。世話になった、ありがとな!」
「おう!頑張れよ!」
(別れの挨拶に寄っただけだが、思わぬ情報が聞けた。あとで試してみよう。)
パーヴォに別れの挨拶をして旅立った。
この世界にきて最初の町ヴァーラ、着いた時は無一文で途方に暮れていたが、冒険者になってお金を稼ぎ、どうにか生活できるようにまでなった。
「この世界に来てちょうど1ヵ月・・・か、旅立ちには良いかもな!」




