第13話 町の散策
今日の2話目です。
「剣とナイフは買えたけど、・・・金がねぇなぁ。」
武器の購入が済んで、残金は銀貨2枚・銅貨9枚・青銅貨8枚だ、もう、それ程使うことはできない。
しかし、服はやはり欲しい、転移してきた時に着ていた、スラックスと半袖のYシャツでは心もとない。
買えるかどうか分からないが、町を散策しながら探してみる。
「よお、そこの兄ちゃん食ってかねぇか?うまいぞ!1本青銅貨1枚だ。」
そう声をかけて来たのは串焼き屋の店主だ、城門の近くには広場があり、町の出入りをする人向けの露店が多く並んでいる。
夕食には早いが、小腹も空いたので1本貰った。
「・・・うん。油が乗ってうまいな!これ何の肉だ?」
「あん?そりゃボアの肉だ、なんだ知らないで食ったのか?」
「ははっ、気にしてなかったんだよ。ごちそうさん。」
主な肉とは”ベア・ボア・ディア”の事で、それ以外にも”シープ”や”ゴート”もいるが、こちらは毛や乳の入手用に飼育されているのでそれ程出回らない。
ちなみにリザードの肉は、癖が無く油が少ないので、野菜と共にスープの具材となる事が多い。
「ボアか、城外の依頼には無かったな、何でだ?・・・あとで確認しとくか。」
それから暫く町を歩き回って、何があるのか確認していく。
城門から町の中心に行くと、大通り沿いには様々な大店があり、行き交う馬車や人々で賑わっている。
そして町の中心には広場があり、露店が軒を連ねている。
更にそこから北に領主邸や行政施設や軍施設があり、その東西の区画は貴族街となっている。
また中央広場から東西の通りにも商店がある、こちらは小規模な個人店舗が多い。
外壁沿いの通りには、鍛冶屋や大工店などの生産施設が多い。
「はぁ、・・・服は服屋で良かったのに。」
西大通りに服屋があったので入ってみたのだが、どうにも生地が薄く冒険者向けでは無い、それで店主に聞いた所”冒険者が着るような服は防具屋だよ”と言われた。
武器屋には行ったが、隣りにある防具屋は後回しにして行かなかったのだ。
「いらっしゃいませ!どういった物がご入用でしょうか?」
そう声をかけながら店員が寄ってきた。如何にも商人風の服にベストを着た茶髪の男性だ。
「ああ、冒険者用の服を見に来たんだ、厚手でポケットが多く収納力がある、ズボンと上着が欲しい。」
「畏まりました。少々お待ちください。」
暫らくして店員は、2本のズボンとベストに幾つかのシャツを持って来た。
ズボンは生地が厚めで太腿にもポケットが付いたカーゴパンツで茶と黒の色違いだ、ベストも同色でポケットが4つ付いている。
これを着ると”これから釣りですか?”と言われそうな、魚釣りスタイルだ。
シャツは肘まで袖がある半袖のポロシャツだ、この袖は籠手を装備する際に邪魔にならない様にこの長さなのだと説明された。
「値段は?」
「ズボンは銅貨5枚で、ベストが銅貨3枚、シャツは銅貨1枚になります。」
「分かった、それじゃあ、黒のズボンとベストにシャツを2枚貰おう。」
「ありがとう御座います。」
店員に銀貨1枚を渡し商品を受け取った。
これで一応の装備は整ったが、所持金は残り銀貨2枚を切ってしまった、明日にも依頼を受けて稼がなければ、すぐに金欠になってしまう。
「さてと、夕食はどうするか、ギルドで食べるか、それとも他の店を探すか?まぁ確認したい事もあるし、今日はギルドにするか。」
食事の前に一度宿屋に戻り、先ほど購入した服に着替えてから、冒険者ギルドの食堂へ向かった。
冒険者ギルドに入ると、夕食時だけあって食堂は混み合っている。
テーブルが空いてなかったので、先に依頼掲示板を見に行く事にした。
「う~ん?常設依頼が違う?」
今まで城外ギルドの掲示板に張ってあった常設依頼は、薬草採取とフォレストリザードやラビットなど小型種の討伐依頼だけだった。
また、個別依頼も城外での土木作業の補助や城壁の見回りなど、簡単で安い依頼ばかりだったのだ。
しかし城内の掲示板にそれらの依頼は無く、肉採取のためだろう”ベア・ボア・ディア”の依頼が張ってある、これはDランクの常設依頼らしく、金額は城外よりも高い。
(城外と城内で仕事を分けているのか、なるほど城外は人数も少ない分けだ。)
それから個別依頼も見てみたが、流石に夕方では、ほとんど残ってない。
依頼の金額を見て、今後は城内の依頼を優先する事にした。
「こんな時間に掲示板を見ても、良い依頼なんて無いよ~?」
後から声をかけられたので振り返れば、目の前に大きな胸がありDカップ以上ありそうだ。
顔を見上げてみれば、髪は黒でセミロングをポニーテールにしている、眠そうな目に青い瞳だ、身長は180cmはありそうだ。
そして彼女は腰に細身の長剣を差していた。
「・・・あぁ、いや、常設依頼を見てたんだ。」
「常設依頼~?あなたは新人さん?」
「あぁ、まぁ、一応?」
「それで常設依頼を見てたんだね~。あ!そうそう、私はイェンナだよ~、良かったら色々教えてあげよっか~?」
「あぁ、いや、いいよ。お連れさんがお待ちみたいだし、・・・ほら。」
そう言って後を指さすと、彼女の仲間と思われる女性2人がイェンナを睨んでいた。
1人は金髪ショートボブで弓士の女性に、もう1人は身長2m黒髪ベリーショートで腰に短剣が差してある。
「イェンナ!勝手な行動は慎みなさい!」
「ふぇっ!?2人とも何時からいたの~?」
驚いている様だが初めからだ、振り返った時には、イェンナの後にいたのだから。
「最初っからいたわよ!・・・ほら!さっさと食事にするわよ!」
「うん。わかった~。じゃあ、バイバイ・・・えっと?」
「ん?あぁ、俺はシロウだ。よろしくな。」
「うん、よろしくね~。じゃ~、バイバイ!」
何やら、金髪弓士に睨まれたが、気にしても仕方がない。
依頼の確認は出来たので、夕食にする事にした。
席も空きが出来ていたので、適当な場所に座って食事を頼む、料金は青銅貨3枚で、食事はパンが2つに芋と肉のスープにボアのステーキだ。
スープは薄く塩胡椒で味付けしてあり、ステーキは飴色まで炒めた玉ねぎとニンニクに胡椒がかかっている。
「・・・うん。文明開化の味がする。」
流石にもう泣かないが、サバイバルの食事は空腹を満たす為だけの物で、城外の食事は”素材を最低限の調理はした”と言う程度のものだった。
そしてここでようやく”料理が出て来た”と思え感動した。
食事も済んだので宿屋に戻り、明日のためにギルドで渡されたルールブックを読んでおく事にした。
「なになに・・・。」
冒険者ギルドのルールブックに書かれていたのは、城外で説明された事が大半だが一部違う所があった。
城内のギルドにある常設依頼は、受付で依頼を受領しなければならない。
これは依頼で門を出た際に、戻るための入町料を払わなくて済むように許可証を貰う為だ、許可証を貰わなかった場合や紛失してしまった場合には、入町料を払わなければならなくなる。
討伐した獲物の解体は、城外の解体所でも可能だが、完了報告は城内のギルドにする必要がある。
「まぁ、違うのはこんなところかな?あとは狩場が違うくらいだな。」
今までフォレストリザードを狩っていたのは、町の北にある平地の森だが、猪や熊などを狩るには、町の北西にある山の森へ行く必要がある。
「えっと、確かベアが銀貨3枚でボアが銀貨2枚にディアが銀貨1枚だったな。」
これらの獲物は物にもよるが、重量が30kg~100kgになる、このため討伐しても、一度獲物を持って戻らなくてはいけない。
しかし、午前と午後で2回討伐を行えば、最速の場合2日で金貨1枚稼ぐ事が出来る。
明日の予定としては、午前中に1体狩ってから城外の解体所へ持って行き、また狩りに行く、ただそれだけだ。
「うん。やっぱり城内の方が割がいい。」
予定も決めて、明日は新しい剣の初陣になる、浮かれた心を抑えて寝るのだった。




