第9話 勧誘と脅迫
今日は早くできたのでもう1話投稿します。
冒険者として働き始めて5日目、討伐と採取で少しづつお金も溜まり、あと少しで銀貨2枚になる。
この頃になるとソロでありながら、毎日フォレストリザードを何匹も狩り、更に薬草採取もこなす”優秀な新人冒険者”として注目されるようになった。
しかし”稼ぐ冒険者”と認識されるようになると、パーティに勧誘してくる者が出始めたのだ、だがパーティに入っても収入が減る上に移動も遅くなる、現状はデメリットだけなのでお断りした。
「あぁ、すまんが、まだ正規登録もしてないんでな、パーティは考えてない。」
「よし!じゃぁ今から登録しに行け!それからパーティ組めば良い!」
これはまずかった、日本人特有の言い回しで断ったのだが、こうした言い回しはまったく理解されなかった。
「はぁ~、断る!パーティは組まない!」
仕方がないのできっぱりと”パーティは組まない”と断る事にした。
「んな!?新人如きが調子に乗るな!この俺様がパーティに入れてやると言ってるんだ素直に従え!従わないなら痛い目を見る事になるぞ!」
最早お話にならないレベルで”脳筋ハゲ”なので、そのまま立ち去る事にしたのだが肩を掴まれ止められた。
更にはそのまま殴りかかって来たので、拳を避けながら腕を掴み引き込んで、地面に叩きつけた、つまり一本背負いだ。
「ぐはっ!?」
実は低ランクの冒険者は主に魔物が相手なので喧嘩はそこまで強くない、普段は剣や槍など武器を使用するので、殴り合いの喧嘩は力勝負になりやすく対処は意外と楽なのだ。
ただCランク以上の冒険者になると、対人戦の経験が増えるので喧嘩も強くなる。
冒険者登録の際に絡まれなかったので、治安は悪くないのかと思っていた。
しかし、パーヴォが言うには”新人如きに絡んでる暇は無い”だけだったらしい。
見た目が”子供”なのでどうせ直ぐに死ぬだろう・・・と思われていたのも一因だとか。
「じゃぁな、もう絡んでくるなよ!」
そう言い残してその場を立ち去った。
「はぁ、面倒だな・・・。いっそこの町はやめて他の町に行くか?・・・いや正式登録しないと同じ事になるか。」
初めて勧誘してきたのは、初日にフォレストリザードを狩ろうとしていた剣士と弓士の2人組だった、断ったらそのまま素直に引いてくれたのだが。
少しでもランクが高くなるとプライドも高くなるのか強引な勧誘が多い。
今は冒険者ギルドと解体所しか利用していないし、寝るのは宿泊所なので襲われる事は無いが、ギルド内での監視や移動時には尾行もされた、”周辺感知”スキルで丸分かりだが。
おそらく所持金を把握する事とその内に襲撃しようとか考えているんだろう。
このままやり過ごす事も出来るのだが、こう毎日監視やら尾行やらされるのも気分が悪い。
「・・・パーヴォにでも聞いてみるか。あいつも元は冒険者だったらしいからな。」
午前中の狩りを終えて戻ってきた際にパーヴォを昼食に誘い相談する事にした。
「シロウが食事を奢るなんて、明日は雨か?ぷっ、はっはっ!」
「失礼な!?・・・まぁ、ちょっと相談と言うか、確認と言うか・・・な。」
そして食事をしながら、最近の勧誘やら尾行などを踏まえて、絡まれている事を話した。
「あぁ、・・・タルヴォの奴か、あいつもしょうもない奴だな。まだそんな事してるなんて。」
「タルヴォ?」
「なんだ?知らなかったのか?」
「知らん!あんなの”脳筋ハゲ”で十分だ!」
「ぷっ!?ぷっ・・くっ・・・ぶぁっはっはっはっ、ひぃ、ふぅ・・・ふぅ。お前俺を殺す気か!?・・・脳筋ハゲ・・・ぷっ。」
「そこまで面白いか?まったく。・・・静かにしろ!ほら周りを見ろ、すげぇ注目されてるぞ!」
「ん!?・・・コホン。お前が変な事言うからだ!」
「俺の所為かよ・・・。まぁいい、それでどうすれば良い?」
「それはお前がどうしたいかによるかな?奴とは組みたくないんだろ?となると、まず1つはさっさと他の奴とでもパーティを組んじまう事、2つ目はこの町を離れて別の町に行く事、んで3つ目は襲って来たら返り討ちにする事だな。」
「まぁそんなとこか。こういった事をギルドは対処しないのか?」
「しないな!現状じゃ”見てるだけだ”とか”たまたまだ”とか言って言い逃れが出来るからなぁ。流石にギルド施設内で暴力沙汰になればランクの降格とか除籍もありうるが、それは奴らも分かってるからおいそれと手を出したりはしない。」
「だろうなぁ、・・・結局襲って来るのを待つ方が楽か。」
「おい!わざと襲われるつもりか?」
「ん?いやそう言う分けじゃないが・・・その方が手っ取り早いだろ?誰かがどうにかしてくれる分けじゃないんだしさぁ。」
「そりゃぁそうだが、大丈夫なのか?あいつはあれでもDランクだぞ?手下もいるし集団で襲われたら厄介だぞ?」
「多分な、・・・だが突っかかって来た時は、そんなに動きも良くなかったし。手下共については知らんが。」
「良くなかった・・・って、2ランク上なんだぞ!?」
「そうなんだろうが、あいつはそんなに強く感じなかったんだよな。」
「まぁ、とりあえず殴りかかっただけだろうしな。」
「なるほど、舐められてた分けか、そうなると問題は何処までやるかだな。・・・殺しても良いのか?」
「おまっ!?・・・物騒だな!そんな簡単に殺すなんて言うな!」
「仕方ないだろ、黙って殴られてやる必要なんか無いし、人数によってはこっちがやられるんだ。」
「はぁ、分かったが出来れば痛めつけるだけで済ませてやってくれ。最悪は・・・死んでも仕方ない。」
「ああ、色々聞けて助かった、後はあっちの出方次第だな。ありがとよ!」
「・・・死ぬなよ?」
「えぇ~、何それ?俺って死地にでも向かうの?勘弁してくれよ。・・・ぷっ、あっははは。」
「な!?まったく・・・。ほれ!また森に行くんだろ、さっさと行け!」
「おう、行ってくる!じゃあ、またな!」
「・・・・・・まったく、真剣なんだかお気楽なんだか。はぁ、俺も仕事しよ。」
2人がそれぞれの仕事に向かった後、背を向けて食事をしながら話を聞いていた男が1人、そっとその場を離れた。
(さて、どう出るかな?・・・まぁ多分すぐに分かるだろ。)
その後、普段通りに森へ行きフォレストリザードを3匹狩った。
これでやっと所持金が銀貨2枚を超えた、目標額は金貨1枚なのでようやく1/5だ、このペースで行くとまだ20日かかる計算だ。
そろそろ大物を狩るか、もしくは個別依頼を受けた方が割がいいかもしれない。
そしてなるべく早く町に入りたい、冒険者用の道具はギルドでも買う事ができるが、城外にはまともな店が無くしっかりとした武器や防具、また服など日用品は町に行かなければ購入出来ない。
ユグドラシルに貰った剣やナイフもいつまで持つか分からないので整備するか買換えをする必要がある。
▽▽▽
翌朝、いつも通りに起きて宿泊所を出ると目の前に”脳筋ハゲ”ことタルヴォが仲間を引き連れて待っていた。
面倒なので素知らぬ顔で通り過ぎようとしたが当然のように声をかけられた。
「シロウ!お前に決闘を申し込む!俺様が勝ったら手下になれ!」
呆れるほど直球勝負で来たのだった。




