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世界でただ一人の種族はチートだった  作者: どんぺった
第1章 不如意なる人生
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第1話 始まりは恐竜から

仕事の帰りに気が付いたのは、今日が”七夕”って事だ、目の前に短冊が落ちていなければ、気にもしなかっただろう。


何気なく短冊を拾って見えた文字にちょっと呆れた、そこに書かれていたのが”異世界に行きたい”だったからだ。



(七夕に願うような事じゃないし、行って何がしたいんだ?オタクかな?まあ、俺には関係ない。)



短冊を笹に戻そうとした時、不意に風が吹いて目を瞑った。


たった、それだけの事なのだが。




「え?ここ・・・どこ?」





仕事の帰りで先ほどまでは街中にいたのに、目を開ければ森の中にいた。


右手には拾った短冊が・・・。




(いやいや!・・・まさかね。そもそも、これは俺のじゃない!でもそういう事?えっ?どうすんだこれ?)




とりあえず、落ち着く為に深呼吸を繰り返す。



そして落ち着いたので、周辺を観察してからどうするか考えようと思ったのだが、「バキッ」と右側から音がした。


見えたのは”目”だった、自分の目線と同じ高さに爬虫類の目、似ているのはワニだが、目線が同じ高さにある事に違和感があった。


それから視線を下ろせば小さめの前腕、更にその下には身体全体を支える為の屈強そうな後足、そこから後方にはバランスをとる為の尻尾があった。


これを見れば誰でも”恐竜”と答えるだろう。




「は?」




あぁ「頭が真っ白になる」って、こう言う事なんだな。


などと呑気に考えている場合ではなかった、迂闊にも声を出してしまい、その恐竜に気付かれてしまったのだ。


しかも、その恐竜は声に反応して、瞬間的に口を開けて襲い掛かってきた。


どうにか避けたが、右腕が肘まで噛み切られてしまった。




「ぐっ・・・ああぁぁ!?」


(くっ!逃げろ!逃げろ!逃げなきゃ死ぬ!)




痛みを堪えて、右腕が失くなりバランスも上手く取れない、それでも、とにかくひたすらに逃げた。



恐竜も右腕を喰って一瞬止まった様だが、すぐに追いかけてきた。



恐竜には木が邪魔であまり早く走れないらしく、まだ逃げきれているが、足音が少しずつ近づいているのが分かる。



それがらどれくらい逃げたか分からないが、血が流れすぎたのだろう、意識が朦朧としてきた、その時に声がした。





『・・・見つけた!』





▽▽▽



気を失って倒れていたらしく、気が付いた時、そこは真っ白な場所だった。


周りを見渡しても何も無い、そして誰もいない。


そう言えばと右腕を見ると腕は失くなっていたが、出血は止まっているし意識もはっきりしてる。


何が起きたかよく分からないが、あの恐竜からは逃げられたのだろう。




「はぁ~、助かったぁ~。」




一息ついたその時、誰かが何処からともなく声を掛けてきた。



「目が覚めたみたいだね。」



声がしたのでもう一度周囲を見るが、やはり誰もいない。



「あぁ、すまない。こっちだよ。」



また声が聞こえたので、声がした右側を見たら、そこにいたのは半透明の女性?だった。


何故疑問形かなのかと言えば、髪は白くショートボブで目は糸目で開いてるのかも分からない、胸は無い?


服装は白のスーツに白のズボンで所謂ホスト風だが、それよりもなんとなく宝塚を感じさせる服装だ。


女性の様であり、男性の様でもある。



「ふむ、一応言っておくが私に性別はないよ?」


「ふえっ!?」


(変な声が出てしまったが、もしかして考えが読まれた?ひょっとしてラノベによくある神様って事だろうか?)


「いやなに、君があまりにも私の事を上から下まで見ているのでね、多分そんな事を考えているんだろうな・・・と。」


「あ、ははは・・・は、すいませんでした。」


「まぁいいさ、それより身体は大丈夫かい?とりあえずの応急処置はしたけど、まだ痛む所はあるかい?」



そう言われて、立ち上がってもう一度身体を確認した。


右腕は失くなってしまったが、頭から足まで痛む所は無い、走っていた疲労も無くなってる。



「ええ、大丈夫みたいです。あっ、助けて頂きありがとうございます。」


「どういたしまして、大丈夫そうで良かったよ。それじゃまずは私から自己紹介するか。私はこの世界を管理するために作られた世界管理システムで名を”ユグドラシル”と言う。」


「ユ、ユグドラシル!?、それって世界樹とかって言われてる?あの?」


「いやいや、違うよ。私は単なる管理システムに過ぎないからね、ただの名称だよ。」



それから話を聞いて分かったのは、この世界は創造主と言われる神様が作った11番目の世界で、俺が元々いたのは同じ創造主が作った9番目の世界だそうだ。


そして、それぞれの世界には、創造主から管理を任された神様が存在しているらしい。


本来は神様が世界を守護し管理すれば問題は無いのだが、この世界の人種族はあまりにも弱く、守護も限界だったので神様が創造主に相談したそうだ。


そこで創造主の知人で”理を超えた者”と呼ばれ、人でありながら”世界”の範疇から逸脱した者に、世界を管理する為のシステムを作ってもらったのだとか。


それが”世界管理システム”で名称が”ユグドラシル”との事だ、そして目の前にいるのは対話用のインターフェースとしての姿らしい。



そのユグドラシルの役目とは、この世界の神様からの加護を”スキル”という形で人々に与えて、戦闘や生産などの技術力を向上させる事や、所謂”ダンジョン”と呼ばれる人種の戦闘能力向上の為の訓練所の管理をしている。


その他にも、今回の様に別世界から紛れ込んできた異物の発見と対処等も含まれるそうだ。


ちなみに、この真っ白な空間は”隔離空間”と言うらしい。



「それじゃ、今度は君の番だね。」


「えっと、俺の名前は蓬莱 司朗(ホウライ シロウ)で、26才のしがないサラリーマンです。」


(なんか自分で言ってて少し虚しくなるな。)



それから今日の事を説明した。


仕事の帰りに七夕の短冊を拾ったら、風が吹いて目を瞑り、そして再び目を開けたらこの世界にいて、恐竜に襲われて右腕を喰われた。


それから必死に逃げていて、声が聞こえたと思ったら、気を失って此処にいた事。



「ふむ、なるほどね。そんな事もあるんだね。」


「えっと、何がですか?」


「あぁつまりね、えっと七夕だっけ?それって願いを叶える為の儀式で”祈祷”とか”祈り”みたいな物なんだよね?それで、推測でしかないけど・・・」



世界間を人が渡るには、移動元の世界を管理する神様と移動先の世界の神様双方の許可を得なければならない


その他に移動する方法は無いのだが、ごく稀に世界同士が接触して、その場にある物を引き込んで移動させてしまう事象があるそうだ。


大抵の場合は無機物ぐらいで、そこまで問題にはならないのだが、今回は”短冊”が接触の起点になってしまい、一緒に引き込まれて移動してしまったのではないか、との事だ。



「・・・なるほど、と言う事は、神様の許可が貰えれば、元の世界に帰る事ができると!」



「あぁ、まぁ、それができればだけどね。」



神様は個人に対して過度な干渉をしてはならない。


たとえ不慮の事故によって、この世界に来たからと言っても、多大な力を行使してまで元の世界に帰すのは、個人に対する”過度な干渉”になってしまう。


しかも、この世界の神様だけではなく、元いた世界の神様にも協力して貰わなければならない。


そもそも、普通に生きていたところで不慮の事故などいくらでも有る、それら全てに対応していたら限がない。



「あぁ、やっぱり無理なのか・・・。」



「まぁまぁ、そんなに落ち込まないでよ。神様の代わりに、この世界で生きていけるようにサポートしてあげるからさ。」


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