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本日3話同時に投稿しております。ご注意ください。


リード卿と話してわかったが、私が一番話をしないといけない相手はモーリー嬢だろう。


「一度、モーリー嬢と話をしてみようと思います。こう思えたのはリード卿のおかげです。…まぁ婚約解消のきっかけになったのも貴方でしたけど。」


「そ!それは!」


「あはは!冗談ですよ。貴方のことをもう悪いとは思っていません。せっかくなのでこれからは親しくしていただけると嬉しいです。」


「僕でよければぜひ!」


__________


夜会が開かれている広間に戻り、モーリー嬢を探す。

リード卿から話を聞いたが、本人から話を聞いたわけではないので少し緊張してしまう。

ただ、このままでは私の為にもモーリー嬢の為にもならないと思う。


しばらく探していると、モーリー嬢が壁の花と化しているのが見えた。


「モーリー男爵令嬢、よろしいですか?」


「え…。クリス様…いえクリス卿。私ですか?」


「貴女以外にモーリー男爵令嬢はいないでしょう。」


彼女の気まずげな態度に笑ってしまうと、なぜか顔を真っ赤にしていた。


「クリス卿が私にそんな顔で笑いかけてくださるのは初めてですね。…私もきちんとお話しなければならないと思っていました。」


「少し庭園に出ましょうか。この時期は薔薇が綺麗なんですよ。」


会場を抜け出し、庭園へエスコートする。モーリー嬢は私の横で気まずそうにうつむいている。


「実は先程リード卿に会いましてね。少し話をしたんですよ。内容は省きますが、友人になりました。」


「えっ!?」


「私は彼の兄上とは交友があるんですがね、ずっと兄上から聞いていた話と本人の行動がそぐわないなと思っていたんです。仮にも兄の友人である私の婚約者に手を出す人には思えなくて。でもまぁ、恋は人を変えるといいますし、そういうこともあるんだなくらいに思っていました。でも今日話してみて、やっぱり違うんだと分かりました。…モーリー嬢、本当はもう思い出しているでしょう?」


「…っ!…お気付きだったんですね。だますようなことをして申し訳ございません。ただ、記憶喪失になっていたのは本当なんです。今もすべてを思い出したわけではありませんが…。お話を聞いていただけますか?」


モーリー嬢が記憶を失ったのは婚約が解消された日だったそうだ。

気が動転して階段から落ちてしまったらしい。目が覚めると婚約を結んだ日からの記憶がなく、本当に父が悪い冗談を言っていると思っていたが、私の家へ向かう途中、婚約成立後に私にきつい言葉をかけたこと、そして私が悲しげな表情をしていたことを思い出し、このままではまずいと思い勇気を振り絞って会いたかったといってくれたそうだ。

本当に私のことは慕っており、緊張してしまうとついきつい言葉が出てしまうようだ。

お父様からの話を冗談だと思ってあまり聞いていなかったので、リード卿のことは知らなかったが自分が簡単に心変わりするはずがないと思ってあの場で間違いだと言っていたと。

今までのことをすべて思い出したわけではないが、過去につけていた日記があったこと、婚約が解消されたあとにリード卿からそろそろ素直になるようにと手紙がきたことで辻褄があったようだ。


「私がこれまでリード卿にしていたことは、簡単に許されることではありません。婚約が解消になって当然だと今は理解しております。申し訳ございませんでした。」


「…本当にわかりにくい人だ。ただ、私も謝らなければなりません。あの日貴女に”仕方なく婚約した。もっと他の人がよかった”と言われたときに、この人とは関係改善は見込めないだろうなとおもって見切りをつけていたんです。だから貴女になんと言われても言い返したり、話を聞こうとはしませんでした。」


「それは私がいけないんです!」


「ふふ…。でも年上の私が拗ねてしまったのも悪かったんですよ。じゃなきゃ今みたいに普通に話したり笑いあったりできていたのかもしれませんし。そうなれば婚約も解消せずにいられたのかもしれませんし。…まぁこればかりは想像の範囲でしかありませんが。」


そういうと今にも泣き出しそうなモーリー嬢。


「なら!私とお友達になってくださいませ!…無理を言っているのはわかっていますが、私はもっとクリス様とお話ししたい!私のことももっと知っていただきたいです!」


「…あははは!…はぁ、リード卿も貴女も…。仕方ありませんね、友人として私のことをクリスと呼んでいただいてもかまいませんよ。あ、もう既に今呼んでいましたね!あはは!」


「な!…申し訳ございません。…ふふふ。」


楽しげに笑う彼女の顔は薔薇の妖精のようだった。


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