5 リード視点
リード目線です。
2話投稿しています。ご注意ください。
彼は妖艶な糸目です。糸目なんです。大事なことなので2回言いました。
僕は幼い頃からとても整った顔をしていたようだ。
自分でそんなことを思うのはおかしいが、僕が笑うだけで周りの女性、男性問わず頬を染めた。
人に好意的に見えるのは嫌われるよりいいと思ったから、僕は常に笑顔だった。
そのせいかわからないが僕の言葉を本気でとらえてくれる人も少なかった。
ある時は、侯爵令嬢に声をかけられ三男の僕では爵位は継げずより良い生活はさせられないし、なにより学も秀でているわけではない。そう思って
「私にはあなたのような人は勿体ない。」というと
「わ、わたくしのような者がリード様にお声掛けしてしまい申し訳ございません。」と泣かれ
ある時は僕と違って優秀な次男に
「兄上は頭もいいし努力家で尊敬しているんだ。」というと
「…私にはお前のような生まれ持った才能はないからな。」と嫌悪された。
あまりにも言葉に裏があるようにとられるから少しはひねくれてしまいそうだったけど、両親や長男は僕のことをよく理解してくれていた。
「見た目で判断せず、言葉や内面をわかってくれる人はきっといるよ。むしろ見た目ばかり気にする人を遠ざけることもできるんだ。」
そう励ましてくれた。
良くも悪くも素直に受け入れた僕はいつの間にか「百合の貴公子」なんて呼び名が付いた。
兄上が教えてくれたが、とてもきれいな顔なのに口から出る言葉には毒があるから、らしい。
他意はない言葉で話している僕には少し不本意だ。
モーリー・サンナ男爵令嬢のことを知ったのは偶然だった。
優秀だった次男は王太子の補佐官になった。子供のころは何かと見た目で判断し僕も嫌悪されていたが、今では和解し、何事にも穿った見方はせず慎重に判断するところが評価されたようだ。
そんな次男も評価しているのが評価している文官がクリス・キーン子爵令息だった。
彼の婚約者は夜会で有名らしかった。綺麗な容姿に則わず、婚約者に棘のある言葉を吐く、「茨姫」なんて呼ばれている彼女に親近感を覚えていた。
伯爵家の僕と男爵家の彼女では中々夜会でも会うことがないが、ある日下級貴族も招待された王宮の夜会で初めて彼女に出会った。
「私あなたと一緒にいるのが恥ずかしいわ。エスコートはしていただきましたもの、この後はそれぞれ楽しみましょう?」
どこか不機嫌そうにその場を離れたかと思えば距離をとってもなお婚約者の様子をうかがっている。
「君がクリス殿のつれない婚約者かな?」
僕は思わず声をかけてしまった。
次はクリス視点に戻ります。