2 モーリー視点
モーリー視点になります。
私には長年お慕いしている婚約者がいる。
だけど、出会ってから7年間ずっと私は素直になれずにいる。
クリス・キーン子爵令息。それが私の婚約者の名前。
初めて出会ったのは10歳の時にお父様に連れられて行ったお茶会。
私は仲の良い友人たちとの会話に花を咲かせていた。なんでも友人のマリアに婚約者ができたらしい。
「お父様の紹介で婚約することになって、まだあまりお会いできていないのだけれどとても優しくていい人なの。」
マリアは顔を真っ赤にしてとても幸せそうな顔をしていた。
このお茶会にも来ているらしく、私たちにも紹介をしてくれた。
マリアの婚約者の友人として一緒にいたのがクリス様。一目惚れだった。
お茶会の帰り、私は我慢できずにお父様にクリス様と婚約したいと願い出たわ。
私の2歳年上だけれどまだ婚約者がいらっしゃらなかったのも幸いして、無事に婚約が決まった。
あの日の喜びは忘れられないほど。
だけど、私は素直になれなかった。
クリス様を前にすると恥ずかしさと緊張でつい強い口調になってしまった。
「お父様からどうしてもといわれて仕方なく婚約を結びましたの。本当はもっと素敵な殿方がよかったのですけれど。」
思わず口からでたのはそんな言葉だった。クリス様は悲しげに微笑むだけだった。
悪いことを口にしたのはわかっていた。でも吐いてしまった言葉を否定できる勇気もなかった。
そして私はクリス様の悲しげな顔をこれから何度も目にすることになる。
婚約を結んでから、クリス様と過ごす日々はとても宝物のような時間だった。
だけどどうにもクリス様が私を好きになってくれる兆しがない。
今思い返せば会うたびに心無い言葉を投げる私を慕ってくれるはずがないのだけれど、そのことを忘れてしまう程当時の私は自分のことでいっぱいいっぱいだった。
他の殿方と仲良くなれば嫉妬から私への気持ちを向けてくれるかもしれない、リード・サイン伯爵令息に出会ったのはそんなことを考えていた時だった。
リード様はとても有名だった。伯爵令息でありながら婚約者もいない。いつも妖艶な笑みを浮かべ多くの女性を虜にしているが誰の手も取らない。
心に決めた女性がいるのではないか。そしてその女性には他の相手がいるのではないか。そんな噂がまことしやかにささやかれていた。
「君がクリス殿のつれない婚約者かな?」
だから私は彼に声をかけられた時とても驚いてしまった。
そして浅はかな私は思ってしまった。
(誰の手も取らないリード様なら私になびくことはないし、私もクリス様を誰よりもお慕いしている。
これなら嘘の関係を結んでも間違いなんて起きないしきっとクリス様は私に振り向いてくれるはず。)
というとても間違った考えを。
だから私には天罰が下ったのかもしれない。
クリス様に嫉妬をされるどころか、お父様にリード様と一緒にいるとこをを見られ、翌日にはキーン子爵から婚約を解消するとの手紙が届いた。
私はそのことが受け入れられず、部屋を飛び出し階段を踏み外してしまった。
次はクリス視点に戻ります。




