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女神の水浴び場での決戦(1)

 ミアとラーンが互いに魔装ウェポンを構えて向かい合う。しかし、この時ミアは気が付かなかったけれど、二人の様子を見ていたネモフィラはラーンの魔装ウェポンを見て違和感を感じていた。


「ラティノ様。ラーンの魔装ウェポンを以前見た事があるのですけど、あんな形をしていたでしょうか?」


 ネモフィラが尋ねると、ラティノも違和感に気が付き驚いた。そして、彼女が腕に抱いているシャインも弱々しく顔を上げて、ラーンの魔装ウェポンを見て驚く。


「あれは……ラーンちゃんが天翼会に登録している魔装ウェポンじゃない」

「やっぱりそうなのですね」

「でも、彼女は煙獄楽園の諜報員だった者だし、何も不思議では無いのかもしれないね」

「うん。ラティノちゃんの言う通り、二つ持っててもおかしくないのかも……」

「…………」

「ミア近衛騎士嬢! 頑張って下さいいい!」


 ラーンが持っていた魔装ウェポン。それは先端に赤い宝石が装飾された杖。一見可愛く見える物だけれど、だからと言って油断出来る物では無いだろう。少なくとも、どんな力があるのか全く分からないのだから。

 だから、三人の話を側で聞いていたユーリィは、不安になって応援をした。そして、まるでそれを合図にするかのように、ラーンが最初に動く。


「私の駒を見せてあげる」


 そう告げてラーンが杖を振るうと、ラーンの前方に魔法陣が幾つも浮かび上がり、そこからトランプの兵が現れる。何とも可愛らしい兵の登場にミアは虚を突かれるように驚いて目を丸くして、ポカンと口を開けてしまった。

 しかし、その直後にラーンが演技染みた笑みを浮かべて、杖を持っていない左手を前に出す。すると、彼女の左手から閻邪えんじゃの粒子が発生して、それはトランプ兵へと注がれていった。

 そして次の瞬間、トランプ兵はみるみると姿を変えて、ミアの身長よりも大きな猫や兎の姿をした魔従まじゅうへと変化する。魔従となった兵はミアでは無くハッカたちの方へと向かって駆け出して、ミア以外を襲いだした。


「っな!? どう言うつもりじゃ!?」

「この魔装ウェポン切り札兵団(トランプソルジャー)と言って、トランプの兵を召喚する力を持つわ。邪魔者を排除するにはうってつけでしょう?」


 ラーンはミアの質問に答えると、更に追加でトランプ兵を出現させて魔従に変える。それを見たミアは不味いと考えて、魔従に向かてミミミピストルの銃口を向けた。


「貴女の相手は私よ。ミア」

「っ!」


 ラーンがほんの一瞬でミアへと接近し、ミアに向かって杖を振るう。ミアは慌ててミミミピストルでそれを防いだけれど、そのあまりにも強い衝撃で後方へと吹っ飛ばされた。


「な、なんじゃ!? 聖魔法で防いだのに受けきれなんだのじゃ!?」

「パパの力を甘く見過ぎよ。ミア。記憶を失ってパパとの戦いを忘れてしまったようね」

「の――っじゃあ!?」


 ラーンからの追撃がくる。後方へと吹っ飛ばされたミアだったけれど、直ぐに白金の翼を羽ばたかせて事無きを得た。しかし、それだけでは終わらなかった。ラーンが再び一瞬で、しかも背後に現れて杖を振るったのだ。これにはミアも直ぐに対処する事が出来ずに背中を殴打されてしまい、今度は前方に吹っ飛んだ。しかも、今回はミミミピストルで防いでない。そのダメージはとんでもなく、ミアは一瞬意識が飛びそうになるのを感じた。


「ミアお嬢様!」

「っぅぐ……」


 今度は流石に自分で耐えれなかったミアだけれど、ブラキがミアを受け止めて事無きを得る。でも、ハッキリ言って無事とは言えない。ミアは背中を焼かれたような痛みを感じ乍ら、意識が飛びそうで朦朧もうろうとする頭を思いきり横に振って正気を保った。


「あ、ありがとうなのじゃ」

「いえ。それより、ここは一旦退いた方が良いと思います。ルーサ様やハッカ様達もラーンが出した魔従に苦戦してるし、絶対にヤバいです」

「ワシも逃げたいのは山々なのじゃが、もう時間も無いし、そう言うわけにはいかぬのじゃ」

「それって、ここに来る時に言っていたアレの事……ですよね?」

「うむ……」

「アレ……とは、どう言う事ですか? ミア」


 二人が話していると、そこにネモフィラとシャインを抱えたメイクーがやって来た。彼女たちも魔従に襲われたけれど、ラティノとユーリィが引き受けて、ミアの許まで来たようだ。


「未曾有の異変は発生後に、女神の水浴び場の湖の中心で産まれる魔従の力で一気に加速して世界が変わる。それが神王が予知したものなのじゃ」

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