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聖女の不安

 遂に始まったトレジャートーナメントの決勝戦。試合が始まると、いつものようにメリコやプラネスが各国の状況をお伝え……とはならなかった。と言うのも、今回は決勝戦で特殊な決勝会場。いつもと変わった実況が求められているとメリコは考え、方向性を変える作戦に出たのである。


『さてさて遂に決勝戦が始まったわけですが、決勝の様子を見守り乍ら、今までと違ったルールをお話しましょう。では、よろしくお願いします。プラネス様』

『まずは一番に気をつけてほしいのは木への攻撃ね。幻花森林の木は神聖な物として扱われているわ。誤って攻撃して傷つけでもしたら、その時点で傷つけた生徒は失格。更には精霊王国から罰が下されるわ』

『あ。でもでも、私と契約してるフォレちゃんが万が一の時は木を治療してくれるって言ってるから、よっぽどじゃなければ罰は無いから大丈夫だよ』

『はい。ありがとうございます。私個人の感想を言わせて頂きますと、勝手に試合会場にして傷つけたら罰って酷いと思っていましたから、それを聞いて安心しました』

『そうね。それは私も同意だわ』

『あ、あはは……』


 おい。こら。実況者と解説者。そう言う事を公の場で話すな。と言いたくなるけれど、実際にそれは他の生徒たち、特に出場する各国の生徒たちも思っていた事だ。勝手にそっちで会場を決めておいて、なんで罰を受けなきゃならんのだと。だから、彼女たちがその話題を出してくれて、少しスッキリした生徒も中にはいた。


『話を元に戻すわね。違うルールだけど、今回は今までと違って制限時間が三時間と長いから、各国の拠点は秘密になっているわ』

『と言いますと、三国共が他の国の拠点の場所が現時点では分からない。と言う事になりますでしょうか?』

『ええ。と言っても、聖女であるミア様は他者の魔力を読み取る力があると噂されているわ。既に他国の拠点を把握していてもおかしくないわね』

『成る程。確かに聖女様であれば……と言いたい所ですが、スピリットナイトやオールクロップの生徒の中にも魔力を読む力を持つ生徒がいる可能性もありますよね?』

『そうね。決勝まで勝ち残った国だもの。それが出来る生徒がいる国が勝ち残っていても当然と言えるわ』


 メリコとプラネスの考えは当たっている。騎士王国も食恵の国もミアと同じ魔力を読み取れる者がいて、既に他国の拠点が何処にあるかも、“宝”が何処にあるのかも把握していた。

 そして、メリコとプラネスは気が付いておらず話す事は無かったけれど、今回の決勝戦は“宝”の隠し場所も一味違う。今まで拠点の近くに必ず一つは埋まっていた“宝”は存在せず、全てがバラバラに会場の何処かへと隠されているのだ。


『お。話をしている間に早速スピリットナイトの生徒が数人“女神の水浴び場”に到着したようです。彼等はここに“宝”があると狙いを定めた様ですね。どの生徒もスピリットナイトで上位の実力を持つ者です』

『女神の水浴び場が決勝の範囲内になった以上、ここに隠されていると考えて当然だもの。魔力を読み取れるかどうかは関係無いでしょうね』

『おや。チェラズスフロウレスの聖女様は何をしていらっしゃるのでしょうか……?』

『あれは…………何をしているのかしら……?』


 騎士王国の実力上位な生徒等が女神の水浴び場に到着した時だ。メリコとプラネスがモニターに映るミアを見て疑問に思うのも無理はない。

 何故ならば――


「ごきげんようなのじゃ」

「ご、ごきげん……よう……」

「ごきげんようなのじゃ」

「うふふふ。ごきげんよう」

「ごきげんようなのじゃ」

「わあ。聖女様だあ。足痛いの? 大丈夫?」

「平気じゃ」


 ミアは幻花森林で暮らすエルフ達と挨拶を交わしていた。いや。本当に何やってんだよって感じである。因みに挨拶を交わしているのは、試合の様子が見たいと家の窓から顔を出していたエルフたちで、殆どが子供だ。

 ミアはエルフの子はみんな綺麗な顔立ちだなんて考え乍ら、ニコニコと笑顔を振りまいていた。そして、ニリンと車椅子を押して歩くユーリィもいる。彼女たちは何故か得意気な顔をしていて……と言うかドヤ顔である。


「ふっふっふ。流石はミア近衛騎士嬢。エルフにも人気ね」

「ええ。そうね。試合中でもファンサービスを欠かさないなんて、ミア様はなんて慈悲深いのでしょう」

(もしやと思って来てみたのじゃが、やはり試合中も避難はしておらぬようじゃのう。ううむ……。本当に何も起きなければ良いのじゃが……嫌な予感がするのじゃ)


 ミアがここで挨拶を交わしていたのは、試合中に避難しているかどうかを確認する為だった。そして、結果はご覧の通りだ。もしミアの心配が取り越し苦労で、感じていた魔力が審判やこの国の騎士のものであれば何も心配はいらなかったけれど、そうでは無かった。

 何かが起こるかもしれないこの決勝戦で一般人を巻き込むかもしれない状況に不安して、ミアはため息を吐き出したくなったのだった。

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