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暗躍する信者たち(3)

「次は私が報告する番ですね」


 そう告げると、ツェーデンは真剣な面持ちで報告を始めた。


「まずは皆さんが気になっているであろう前回お話したミア様の血統についてですが、やはり王族の血が流れているのは間違いありませんでした」

「で、では、ミアはわたくしの遠い親戚なのですか?」

「はい。ただ、ミア様のご先祖は血縁関係を切って平民になった様です。それにサンビタリア様やネモフィラ様のように獣族の血が混ざっていません。ミア様を国王陛下が養子として迎え入れ、王太子にと言う考えは出来ないようです」

「そうでしたか。残念です」

「まあ、そう言う事だから、この話は他言無用よ。下手な事を言ってミア様を困らせたくないしね」

「分かっています。お姉様」


 と言いつつも、残念そうに顔を曇らせるネモフィラ。ネモフィラが何故ガッカリしているのか? その理由は、ミアの先祖に関係していた。

 いつだったか、ミアが城の書庫でツェーデンと会った時に、ツェーデンが王族の家系図を見ていた事があった。その時にミアは自分には関係無いと思っていたけど、実際にはそうでは無かったのだ。しかし、チェラズスフロウレスの王族の先祖には獣族がいて、ネモフィラたちにはその血が混じっているのだけど、ミアの平民になった先祖は丁度その血が混ざる前の者だった。

 実はこれが今ではかなり重要になっていて、獣族の血をもちながらヒューマンである事が王族の証とされている。その為、ミアは王になる為の資格がないのである。ネモフィラが落ち込んだのは、自分が何処にも嫁がずミアが王太子になって王になれば、ずっと一緒にいられると思ったからだ。


「続いてもう一つ。サンビタリア様の派閥の者達についてですが、サンビタリア様が説得した事で問題無く沈静化できました。よって、派閥間の争いは本当の意味で終わりを迎えるでしょう」


 ツェーデンが告げると、各々が安堵する。最近では派閥同士の争いがミアを巻き込んでいたから余計にだろう。そして、気持ちの余裕を得た事で、アネモネが楽しそうにサンビタリアにうざ絡みする。


「姉さんが説得だなんて想像できないわ」

「あなたは私をなんだと思ってるのよ。自分の派閥にいる暴動を起こそうとしていた者達くらい自分でどうにかするわよ」

「また信じられない事を言ってる」

「ふん。いいわよ。アネモネに信じてもらえなくても、私にはこれがあるから」


 自慢気に言って、サンビタリアが手紙を見せる。それを見て、アネモネは最初興味無さげにしていたけど、少ししてから目を見開いて驚いた。そしてそれはネモフィラも一緒だった。何故ならそれは、そこに書かれていた最後の名前に“ミア”と書かれていたからである。


「ミア様の……手紙…………?」

「ええ。そうよ。ミア様が毎日下着姿で謝罪に行く私の為に、激励の言葉を手紙に書いてよこしてくれたの。これのおかげで頑張れていると言っても過言ではないわ」

「ズルい! サンビタリアお姉様ズルいです! わたくしもミアの手紙がほしいです!」

「あら? それなら、手紙ではないけど、あなたは交換日記でもすればいいんじゃない?」

「え? 交換日記……ですか?」

「ええ。一日の終わりに交互に日記を書いて渡し合うのよ。学園の生徒でも仲のいい子同士でやっていたわよ」

「わああ! わたくしもミアと交換日記をやりたいです!」


 ネモフィラがパアッと花を咲かせたような笑顔になり、不機嫌だった感情が一瞬で上機嫌になる。


「では最後に、協力者になってくれたジェンティーレ先生からのご報告があります」


 メイクーがそう言ってジェンティーレに視線を向けると、全員が口を閉じて緊張した面持ちになった。やはり天翼会の会員相手となると、どうしても緊張してしまうようだ。しかも、相手は普段関わり合いになりづらい保健医のジェンティーレだ。教育実習生として天翼学園に通っていたサンビタリアや、学園の卒業生であるアネモネであっても、王族で護られる立場にあるから怪我とは殆ど無縁で関わりがほぼない。だから、二人も例外なく緊張していた。


「調査の結果、ミアの周囲で魔装ウェポンを使った犯罪が増加しているから、特別処置を私の独断で行う事にしたわ」

「特別処置? いったい何をなさるつもりですか?」


 サンビタリアが質問すると、ジェンティーレはニヤリと笑んだ。


「この派閥のリーダーであるメイクーに魔装ウェポンをプレゼントする事にしたの。因みに、さっきも言ったけど、私の独断だから秘密にしてね」

「そ、それは流石に不味いのでは……」


 アネモネが顔を真っ青にして呟くと、ジェンティーレが楽しそうに笑みを浮かべる。


「だから秘密にするのよ。あ、それから、ミアの護衛のヒルグラッセにも渡すつもりだから」

「あの! わたくしもほしいです!」


 ネモフィラが期待に満ちた視線をジェンティーレに送る。しかし、結果は残念なもの。清々しい笑顔で「駄目」と一言で終了。ネモフィラは今後学園に通う事になるだろうから、その時に既に持っていた場合はそれこそ不味いので、それまでお預けなのだ。


「ネモフィラ様には大変心苦しいのですけど、私はミア様の派閥の教祖として恥ずかしくない力を得て、ネモフィラ様と一緒にミア様を支えていきたいと存じます」


 メイクーが今後の意思表明をすると皆が拍手をして、今回の会議が終了した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] この秘密結社が国家全体の将来と通常のファン クラブの両方を決定している様子が気に入っています。 コントラストがばかげていて、笑いが起きます。
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