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暗躍する信者たち(2)

「まずは皆さんが一番気になっているだろう事から報告します。ミア様の婚約は保留になっていたそうです」


 教祖メイクーが告げると、皆が安堵あんどする。と言うのも、このミア派会議でサンビタリアとアネモネがミアの婚約の事を報告したからで、みんなが結婚を無理矢理させられないかとミアを心配していたのだ。ネモフィラとメイクーがミアの婚約を知っていた理由は、ここで聞いたからだった。


「一先ずは安心ね。婚約の件は二人の事だからと、お父様もお母様も教えてくれないんだもの」

「そうね。私ももう直ぐ結婚する身だから、結婚の事で他人に口出ししてほしくない気持ちは分かるけど、状況くらいは聞きたいもの」

「ミアが婚約? 誰としたの?」

「してません。保留です」

「相手はアンスリウムですよ」


 唯一何も知らないジェンティーレが面白そうと笑みを浮かべて尋ねると、ネモフィラが早口で答え、サンビタリアが補足した。


「一先ずその話は後でお願いします。次の報告は学園内の各派閥の動きです。ミア様は非公開のネモフィラ様の近衛騎士だと勘違いされていて、とても警戒されています」

「当然ね。ミア様は五歳とは思えない強さだったもの。子供たちが勘違いするのも理解出来るわ」

「あの、一つお尋ねしても?」

「はい。なんでしょう? レムナケーテ侯爵」

「ミア様は魔法を使われたのですか?」

「ミアはジェンティーレ先生から頂いた魔石を使って戦いました」

「ネモフィラ様の仰る通りです。とても素晴らしいご活躍でした。ルッキリューナの姑息な脱衣攻撃をものともせずに立ち向かうお姿とおパンツは、今でも目に焼き付いています」

「パンツ……?」

「こほん。失礼致しました。とても素晴らしかったと言う事です」

「流石はミア様でございますね」


 レムナケーテが納得して頷いているが、周囲はおパンツ発言に冷や汗を流している。しかし、いちいちそんな事を気にしてられない。サンビタリアが「そう言えば」と質問を始める。


「ミア様は城にいた時も、ネモフィラと一緒に午後の実技の授業で武術も習っていたのよね?」

「はい。その頃からミアは凄かったのですよ。先生も五歳の女の子だとは思えないって、とっても褒めていました」


 ネモフィラが自分の事のように嬉しそうに答えると、それを聞いて皆が微笑んだ。


「私の報告は以上です」

「では、次はわたくしの番ですね」


 ネモフィラが何やらゴソゴソと紙を取り出して、それを映るように広げる。映し出されたのは、ネモフィラ画伯のお絵かきイラスト。


「今日は幼稚舎でお絵かきをしたのです。この絵をミアに上手じょうずってめてもらったのですよ」


 ネモフィラは満面の笑みで、今日の幼稚舎でミアと一緒にお絵かきを楽しんだ話を始めた。実はこの会議ではネモフィラの報告が一番重要で、ミアと一番長く一緒にいるネモフィラの話を聞く時間が一番価値がある事だった。だから、この時だけは誰も何も喋らず、笑顔で楽しそうに話すネモフィラの話を聞いていた。


「次は私ね」


 ネモフィラの話が終わると、今度はアネモネの番だ。アネモネは微笑むと、ゆっくりと話しだす。


「私の結婚式の準備は順調に進んでるわ。このままなら、予定通りにミア様が学園から帰って来たら式を挙げれると思う」

「わあ。良かったですね。アネモネお姉様。ミアにしっかり伝えておきますね。わたくしも楽しみです」

「ふふふ。ありがとう、ネモフィラ」


 アネモネはネモフィラと微笑み合うと、直ぐに真剣な面持ちになる。


「それから私の派閥の貴族たちだけれど、私が王太子候補の除名を受けてから不満の声が多かったけど、サンビタリア姉さんが王太子候補から除名されたおかげで落ち着いたわ。荒っぽいけど人当たりの良いアンスリウムなら、王太子として認められると考えたようね」

「荒っぽくて人当たりが悪くて悪かったわね」

「そうね」

「あら。そこは否定するところでしょう?」

「私だって姉さんの八つ当たりを何度か受けていたのだもの。姉さんを庇う必要を感じないわ」

「本当にあなたは可愛くないわねえ」


 アネモネとサンビタリアが睨み合い……と思ったが、意外にも口角を上げて笑みを零す二人。サンビタリアが改心した事で、この二人もそれなりの距離感で良い関係になっていた。

 二人が笑みを零すと、レムナケーテが不安そうな表情で声を上げた。


「あの、アネモネ様。アネモネ様の派閥の者は、アンスリウム様が王太子になった事を知っていたのでしょうか?」

「ええ。そうだけど……。それがどうかしたの?」

「いえ。実は私の調べによりますと、ランタナ様が候補から降りた事実は、まだ他の貴族に伝わっていないようなのです。実際に、私もここで知らなければ、まだ知りえなかった事でしょう」

「それは本当なの?」

「はい……」

「そうでしょうね。アネモネ、忘れたの? この件はランタナの試用入園が終了するまで秘密にすると家族会議で話し合ったでしょ」

「言われてみれば……。でも、何故私の派閥の者がそれを知っていたのでしょう?」

「わたくしは喋っていませんよ」

「そんなの言わなくても分かってるわよ。秘密にしておきたいと言ったランタナが自分から話すわけもない。……もしかしたらアンスリウムだったりしてね」

「アンスリウムが……? 何の為に?」

「さあ。本当にあの子が話したかどうかも分からないんだし、分かるわけないでしょ」

「そうね」

「とにかく、そうね……。レムナケーテ侯爵はそこのとこ調べてくれない? でも、何か嫌な感じがするのよね。何かあるといけないし、もしもの時は結果を得る必要は無いから身の危険を感じたら中断しなさい」

「……は、はい。かしこまりました」


 サンビタリアのまさかの気遣いにレムナケーテは驚いたが、それは他の皆も同じだった。そして、本当に変わったのだと、改めて感じていた。

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― 新着の感想 ―
婚約がなんのとか言っっているが、それはミヤの知らないところでアンスリウムと王様がかってに言ってるだけで婚約の根拠にならない。ミヤは少しおバカさんだから決まった事なら仕方ない位な感じでアンスリウムが話を…
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