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暗躍する信者たち(1)

 カーテンを閉め切って、真っ暗な部屋で椅子に座り、目の前にある鏡のような丸いボードを見つめる少女が一人。少女が魔力をボードに籠めると、ボードが光を放って何かを映し出す。その何かとは、同じように真っ暗な部屋で待機していた同士たちの顔で、男が二人に女が三人。そして、その内の一人が、重々しい声色で話し始めた。


「これより、第二十七回目のミア様派会議を始めます。まず、最初の議題ですが」

「始める前にちょっといいかしら?」

「はい? なんでしょうか?」

「前回も気になったのだけど、なんでわざわざ部屋を暗くする必要があるの? これじゃあ顔がちゃんと見れないじゃない」

「それはですね。その方が“ぽい”からです」

「くだらないわね。ここにいるのは全員知った顔なのだし、聖女様の話をするのよ。そんな理由ならやめにしない?」

「あ。すみません。ミア様を聖女様と言うのは無しにして下さい。誰かに聞かれたり、人が増えて、その人が知らなかった場合は困るので」

「まあ、それはそうね。でも、暗くするのはやめにしない? メイクーの趣味だったら尚更よ」

「あの。私の事は“教祖”と呼んで下さいませんか? サンビタリア様」

「嫌よ」

「…………」

「お姉様。ミアの派閥に入れてもらったのですから、メイクーを教祖と呼んであげるくらい良いではありませんか」

「そうね。ネモフィラの言う通り、そのくらいは譲歩してあげたら?」

「はあ。仕方が無いわね。それにしても、未だに信じられないわ。なんでアネモネまでミア様の派閥に入っているのよ?」

「色々あったのよ」

「あっそ」


 と言うわけで、これはミア派の集まり。丸いボードを見つめていた少女はネモフィラだ。集まったのはネモフィラ以外だと、“メイクー”“サンビタリア”“アネモネ”“レムナケーテ侯爵”“ツェーデン”である。


「で? メイ……教祖。前回の会議の時に聞きそびれてしまったけど、チェラズスフロウレスでは通信用の魔道具マジックアイテムが使えないのに、ここの集まりで使ってるこれは何? 説明なさい」

「あ。それについてはですね。実はサンビタリア様に続いて、新たなお仲間が増えたからなのです。あ。でも、協力者なので、派閥には入らないそうです」

「どっちでも良いわよ。その新しいお仲間って言うのが、魔道具マジックアイテムを提供したわけ? それならチェラズスフロウレス寮との連絡がとれなくなってるのだから、そっちに一つ回しなさい」


 確かに。と、サンビタリアの言葉に皆が同意して頷く。しかし、メイクーだけは若干気まずそうな顔になり、チラリと横に視線を向けた。すると、メイクーの隣に誰かがいたようで、映像の中にメイクーを押し退けて入ってきた。そしてその人物を見て、全員が驚き目を見張る。


「ごきげんよう。ほとんどがはじめましてでは無いみたいだけど、一応自己紹介をするわね。私は天翼会チェラズスフロウレス寮保健医担当ジェンティーレよ。この度はミアの派閥の協力者として参加するから仲良くしましょう」

「じぇ、ジェンティーレ先生!?」

「はい。ジェンティーレ先生です。まあ、そんなわけだから、寮に一つ回せと言われても、許可できないわね。だって、この通信機は私の独断で、天翼会には無許可で提供してるもの。知られて困るのは私なのよね」


 お道化て説明するジェンティーレだが、集まった者の殆どが驚きすぎて説明の内容が頭に入ってこないような状況だった。と言っても、ジェンティーレと言えば天翼学園に通うチェラズスフロウレスの者であれば誰でも知っていて、知ら無い者がいないので当然ではある。集まった者の中で彼女を知らないのは、唯一レムナケーテ侯爵だけだった。レムナケーテ侯爵だけが「これはこれは」と営業スマイルで名乗り出る。


「はじめまして。私はザガンスカ=レムナケーテと申します。爵位は侯爵こうしゃく。今そちらでお世話になっているリベイアと言う娘の父でございます」

「ああ。リベイアね。知ってるわ。ミアと仲がいい子よね。たまに一緒にミアの付き添いで保健室に来るわよ」

「おお。ご存知でしたか。いつも娘がお世話になっております」

「ところで気になったのだけど、リベイアはサンビタリアの派閥ではなかった?」

「それでしたら」


 と、二人が仲良く会話しているが、他の者たちはとても緊張している。しかし、せっかく集まっているのに話が進まないのはと感じたからか、ネモフィラが声を上げた。


「そろそ定期連絡をしませんか?」

「そ、そうね」


 ネモフィラの質問にサンビタリアが同意して、他の者達も頷いた。と言っても、メイクーはジェンティーレに場所をとられてしまって画面から若干見切れている。


「では、いつものように教祖からお願いします」

「はい。では……あの、少しズレて頂いていいでしょうか……?」

「あ。そうだったわね。ごめんね、教祖。私は自分のを使うわ」


 だったら最初からそうしろよ。と言う感じだが、相手が相手だけにそれを言える者はいない。一応謝っているし不満には思わなかったけど、隣にいるだけでも実は落ち着かないので、メイクーは心の中で助けを呼びたくなっていた。だけど、今はミア派会議の真っ最中。教祖としてしっかりとしなければならない。

 メイクーは気合を入れて、定期連絡を開始した。

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