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危険がいっぱいだった準決勝

『さあさあ遂に本日最後の戦いが始まろうとしています! 地底鉱国カザドキングダム! そして食恵の国オールクロップ! 決勝へ進めるのはどちらだ!』


「今日最後の試合が始まったみたいだな」

「その様じゃのう」


 ルーサがメリコの実況を耳にして呟き、ミアがそれに頷いた。

 チェラズスフロウレスの王族専用の観戦室での話し合いが終わり、少し時間が経過したお昼過ぎ。昼食では準決勝の勝利を祝い、今はネモフィラや侍従たちだけを連れて、ミントが宿泊している貴族用の宿泊施設へと向かっていた。

 ミントは昨日の事があったから、チェラズスフロウレスの騎士が護衛に回っていて、チェラズスフロウレスの試合が終わってからは宿に戻っていると聞いている。だから、会って話をしようと言う事になった。と言っても、昨日の事を聞くわけでは無く、ただの世間話をお茶を飲み乍らするだけ。ミアとネモフィラとミントは友人なのだから、会う理由なんてそれだけで十分なのだ。


「っと、そうじゃ。結局ワシは準決勝の様子が見れなんだが、どんな感じだったのじゃ? やはり相手はあの妖園霊国じゃ。苦戦したのじゃ?」

「はい。とても大変でした」

「ユーリィとニリンが使いものにならなかったしな」

「ふむ?」


 ルーサの言葉にミアが首を傾げると、ネモフィラが冷や汗を流して補足する。


「お二人が試合開始から五分程度で戦闘不能になったのです」

「それは随分と早かったのう。何があったのじゃ?」

「準決勝の試合会場は天翼会が毎年決勝戦で使っていた無人島だったのですけど、その無人島に生息している魔物に襲われてしまいました」

「ふむふ……む? 生徒同士の戦いに敗れてでは無く魔物に襲われって、それは大丈夫だったのじゃ?」

「はい。一応は……」

「魔物って言っても天翼会が飼いならしてる魔物なんだよ。命に係わるような攻撃はしてこないし、無人島でのサバイバル要素を楽しんでほしいって言う天翼会側のサプライズとか言ってたな」

(めちゃんこ嫌なサプライズじゃ)

「まあ、そう言うわけで、森に潜んでいた魔物に二人で同時に体当たりされて、そのまま気絶して退場になっちまったんだよ」

「何と言うかまあ……運が無かったんじゃのう」


 今年のトレジャートーナメントの準決勝は、毎年決勝が行われる試合会場が使われていた。

 準決勝は三回行われていて今は最後の試合が始まった所だけれど、今も含めて三回ともが無人島だ。だから、今年初参加の一年生であるユーリィとニリンは魔物に襲われる危険性を軽く見ている一回戦目だったので、その洗礼を受けてしまったようだ。まあ、無事に決勝に駒を進める事が出来ているので、それも良い? 思い出と言えなくもない。

 しかし、二人は今も医務室で休養中である。ミアは心配だから見に行こうかと思ったけれど、ルーサいわく「ミア近衛騎士嬢に会わせる顔が無い」と言っていたらしく、グラックが介抱してくれているようなので会いに行くのをやめる事にした。


「結局、勝てたけど危なかったのは確かだな。妖園霊国の連中も魔物に引っ掻き回されてたし、それが無かったらオレ等が負けててもおかしくは無かった」

「そうですね。今回は魔物の存在が不安要素として大きかったので、わたくしは拠点から出るのを控えていましたけど、その選択は間違っていませんでした」

「ふむ。そんなに魔物が厄介だったのじゃ?」

「厄介過ぎたな。まあ、全部オレ等が前回に戦ったニーフェのせいだけどな」

「何故そこでニーフェなのじゃ?」

「ニーフェ達が召喚した神獣に感化されたようなのです」

「ふむ?」

「前回の試合で神獣の白虎やら朱雀やらが活躍しただろ? 魔物共がそれを見たらしくてよ。自分たちも負けてられないって張り切りやがったんだよ」

「…………」

(ちょっと可愛いと思ってしまったのじゃ)


 いや。可愛くねえよ。てな事で、準決勝で戦いを混乱に陥れる要因になった魔物くんたち。彼等は天翼会が飼っている言わばペットのような存在で、普段は人に危害を加えないお利口さんだ。でも、そんな彼等も神獣たちの戦う姿を見て、自分たちも頑張ろうと張り切ってしまったのである。おかげでユーリィとニリンはショックで療養中。とんでもなく迷惑な話だった。


「因みにオレ等の勝利の決定打は、魔物共が妖園霊国の“キング”を戦闘不能にした事だ」

「……の、のじゃ? キン、え? そ、それで拠点に出なくて良かったんじゃな」

「はい……」


 最早試合を引っ掻き回されたと言うレベルでは無い。

 ミアは察した。どうりで皆、準決勝に勝ってもあまり喜んでいないのだなと。今思えば、試合終了時にいつも叫んでいるメリコの声も気付かないくらいには目立っていなかった気がする。昼食の時には皆を一緒に祝ったけれど、それ程は盛り上がらなかくて不思議でもあった。と言うか、皆が何だか気まずそうに笑っていたのである。


(勝利した決定打を魔物に持ってかれたなんて、それってありなのじゃ?)

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