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第三王女の情報提供(2)

 ネモフィラが白状してウドロークから直接決勝戦の舞台の話を聞いたと話すと、ジャスミンとプリュイとラーヴがとても真剣な面持ちで話し合いを始めてしまった。そして、三人は話し合いを数分後に終わらせると、ミアとネモフィラに真剣な面持ちを向けた。


「実はね、カーリー先生の提案で精霊王国エレメントフォレストの中心“幻花森林”で決勝試合をしようって話になったの」

「幻花森林には女神様が昔使っていたって言われてる“女神の水浴び場”があって、そこはアタシ達精霊とあるじ様しか入れない場所なんだぞ」

「がお。でも、王様のウドが許可した人は入れる」

「え? そうなのですか……?」

「ウドローク陛下が精霊王国の王様だからなのじゃ?」

「ううん。例え王様でも、普通は出来ないよ。現に先代の王様は出来なかった。ウドローク陛下はね。先代の王様と精霊の間に生まれたエルフと精霊の子供なの」

「なんじゃと!?」

「えええ!? そ、それはわたくしも知りませんでした」


 驚いたのはミアとネモフィラの二人だけでは無い。この場にいる侍従たち全員が驚き、動揺した。

 しかし、当然だろう。この事実を知るのは本当にごく一部の者だけで、天翼会ですら知る者が少ないのだ。

 ウドロークは美形で有名で、世の女性を虜にする程だけれど、実はそこまで若くは無い。勿論それは誰でも知っている事だけれど、若い見た目はエルフの血が流れているから。エルフは長寿であり、美しい外見をした期間も長いのだ。エレメントフォレストの先代の王はエルフで、その后である王妃もエルフだから、それは当然だと思われている。

 でも、その情報事態が間違っていた。


「先代の王様の后様はエルフに姿を変えた精霊なんだぞ」

「がお。昔よく遊んだお友達。精霊のお姫様」

「「えええええええええ!?」」

「精霊の王様と恋に落ちてエルフになったせいで寿命が縮んじゃって、もう亡くなってるんだけど、とっても優しい人だったんだよ」


 ミアとネモフィラの驚く声が重なり、ジャスミンの話を聞き乍ら理解した。


「となると、今の王……精霊の血を持つウドローク陛下の許可を貰えれば、立ち入り禁止の“女神の水浴び場”にも入れると言う事なのじゃ?」

「うん。一応、表面上は私が契約してるプリュちゃんやラヴちゃん達に相談して、決勝戦で使える様になるって事にする予定だけどね」

「でも、あそこは本当に厳重で許可なんて取れないんだぞ。主様は入れるけど、それだって異例で例外なんだぞ」

「がお。精霊のお姫様の血のおかげ」


 ミアとネモフィラは顔を見合わせ、ジャスミン等に視線を戻す。

 女神の水浴び場は精霊だけが出入を許されている禁域。精霊神である天翼会の会長ヒロでも覆す事の出来ないルールで、その理由は女神の水浴び場を管理している精霊が精霊神だからである。

 精霊神は女神に仕え、それぞれが役割を与えられている精霊だ。だから、天翼会の会長を務める精霊神のヒロと、女神の水浴び場を管理している精霊神とでは役割も持つ力も随分と違う。精霊のお姫様は、その精霊神が女神に与えられた力、新たな精霊を生み出す力で誕生させた精霊のお姫様なのだ。そして、その精霊のお姫様が精霊王国を治めるエルフの王と恋に落ち、生まれたのが今の王ウドロークだ。

 ミアとネモフィラはそれ等の説明を受け、驚きのあまりに言葉を失った。


「ねえ。プリュちゃん、ラヴちゃん、それにミアちゃん達も聞いて。カーリー先生が幻花森林で決勝戦をって提案したのが、もしよくない事の為だったとしたら、大変な事になると思うの。だから、その対策として、決勝戦は今までと違わなくちゃいけないんだと思うの」

「決勝戦の場所を変えるのは出来無いのじゃ?」

「わたくしも変えた方が良いと存じますけど……」

「それはもう出来ないの。女神の水浴び場を管理してる子に話を通しちゃったし、精霊との約束は契約みたいなもので、相手は精霊神だもん。契約をした以上は、それを護らないと対立する事になっちゃう」

「な、難儀じゃのう」

「アンジュは約束を破るのを特に嫌うから大変な事になるんだぞ」

「がお。アンはお堅い」

「ふ、ふむ……」

(アンジュと言うのが、その精霊神とやらの名前じゃろうか? しかし、精霊の世界にも色々あるんじゃのう)


 プリュイとラーヴが何やら肩を落として話すので、ミアは冷や汗を流し乍ら二人を見る。すると、視界にジャスミンが二人を撫でるしぐさが目に入り、視線がジャスミンへと戻って目がかち合った。


「そこで私からの提案なんだけど、決勝戦での生徒の観戦席を幻花森林に移そうと思います! 勿論、生徒は全員に観戦してもらいます」

「のじゃ?」

「ええええええええ!?」


 ジャスミンの提案に、ミアが首を傾げて、ネモフィラの驚く声が響き渡った。

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