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転生少年の怒り

 ガットンの取り巻きオーグとドックが泡を吹いて倒れると、カサリーノたちは何事だと驚き、ブラキとオーグ等を交互に見る。しかし、ガットンは二人の取り巻きと違って慌てもせずにニヤリと笑むと、カサリーノたちを押しのけて前に出た。


「まさか聖女の家族だったとはな。こんな大物が釣れるとは思わなかったぜ」

「釣れる? じゃあ、やっぱり何かよくない事を考えてたんだね」

「少し教育をしてやるつもりでいただけだ。チェラズスフロウレスが勝てたのは実力じゃねえ。運が良かっただけってなあ」

「なるほど。試合に負けた腹いせね。情けない男。同じ男に生まれた身としては、同じ男として恥ずかしいよ」


 前世女だった自分が、まさか同じ男としてなんて言葉を言う機会がくるとは思わず、ブラキは告げた直後に少し笑ってしまう。すると、ガットンはブラキの言葉とその笑みに苛立ちを覚え、眉尻を吊り上げた。


「学園にも通えねえ子供が俺様に説教だ? お前にも教育が必要みたいだなあ!」

「ちょ、ちょっと何なの? ねえ。貴方、ミアのお友達でしょう? 喧嘩はやめて」

「うるせえ! 黙ってろ!」


 状況が未だに掴めずにいたカサリーノが、怒るガットンと止めようとして手で払われる。ガットンが力強いのと二人の体格差もあって、カサリーノは「きゃあっ」と小さく悲鳴を上げて倒れ、デノンとエンドが慌ててカサリーノに駆け寄った。

 ブラキはそれを見て、ガットンを睨みつける。


「貴方は今自分が何をしたのか分かってるの?」

「あ゛? うるせえババアを黙らせた。それに何か問題でもあるか?」

「最っ低」

「最低だあ? 笑わせるな。聖女の家族だか何だか知らねえが、てめえ等は調子に乗り過ぎなんだよ。だいたいよお。聖女なんて昔の話だろうが。考えが古いんだよ」

「貴方が最低なのは、ミアちゃんが聖女で、その家族に暴力を振るったからじゃない。自分よりも力の弱い相手に暴力を振るって、謝りもせずに相手をののしって、自分の行為を悪いとも思ってない事だよ」

「なんだそりゃ? くだらねえなあ。弱い奴の考えは理解に苦しむぜ。おとぎ話の聖女様ごっこで頭が可笑しくなっちまってるんだろうな」

「貴方って本当に最低だし救えないね。まさか、こんな人がいるなんて。悪いけど、この事は天翼会にも報告するから。覚悟しておいた方がいいよ」


 そう告げて、ブラキがミアの家族の許に向かおうと歩き出す。こんな最低な相手と話していてもストレスが溜まるだけと判断し、もう関わりたくなかった。

 しかし、ガットンは違う。カサリーノたちが聖女の家族と知っても、ブラキが聖女の侍従と知っていても、それがここから逃す理由にはならなかった。


「あ゛? てめえ。勘違いしてないか? 誰が逃がすと言ったあ!」


 怒号してブラキに接近。直後に拳を作って、ブラキの頭をかち割る勢いで殴りかかる。

 ガットンは三メートルもある巨体。拳のサイズもボーリングのボールのように重く、大きい。そんな拳が頭上から降り注がれて直撃すればひとたまりも無いだろう。

 ブラキは自身の危険を察知して、それを受け止めようとせずに避けた。


「ちっ。避けたか。子供はすばしっこくて面倒だな」

「貴方! 何のつもり!?」

「何のつもりだあ? 何度も笑わせるなよ。逃がさねえって言ってんだろ。てめえみたいな奴は体で教えてやんのが一番なんでなあ」

「こんな事をしてただで済むと思ってるの?」

「勘違いしてねえか? 俺は聖女じゃなくて聖女の侍従を殴るだけだ。たかが侍従。いくらでも変わりがいるんだ。問題になんてならないだろうが。手が滑って殺しちまうかもしれねえが、てめえ等の大好きな聖女様が甦らせてくれるだろ」

「…………」


 あまりにも酷い物言い。ブラキの怒りは呆れに変わり、冷ややかな目をガットンに向けてため息を吐き出した。


「さっきの言葉を訂正するね。同じ男としてと言ったけど、貴方の場合は性別以前に人として終わってるみたい」

「くだらねえなあ! てめえの尺度で俺を知った気になってんじゃねえよ! 俺から言えば、てめえの方が終わってんだよ! 聖女とか言う過去の遺物にすがりついてる事しか出来ねえ軟弱な連中の一人だからなあ! 聖女の時代は終わったんだよ! 今の時代に聖女なんて必要ねえ! 必要なのは俺のような強い奴よお!」

「それは面白い冗談だね。それなら試してあげるよ。貴方のご自慢の強さがどれだけのものか」

「子供が粋がってんじゃねえぞ!」


 ガットンが再び拳を振るい、今度はブラキは避けようとせずに手を前に構えた。


「マッド。出ておいで」


 魔装ウェポン泥竜マッドドラゴンがブラキの呼びかけに応えて現れて、ガットンの拳を受け止める。ガットンは自慢の拳を受け止められ、目を見開いて驚いた。


「いくよ。マッド。でも、相手は格下だから手加減は忘れないでね」

「ぐも」

「格下だとお!? 調子に乗るんじゃねえぞおおお!!」


 ガットンが怒り、そして――







「ごめんなざい。もう悪いごどはじまぜん」


 ――数分後・・・にガットンがブラキに土下座した。俗に言う即落ちとやらである。

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