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聖女の考察

 トレジャートーナメントにて奪い合う五つの宝。その宝には魔力が付与されていた。


「残り十五分じゃ。そろそろディアボルスパラダイスとキキハンニャが寮の近くの一つを手に入れる頃じゃろうな」

「え!? そんな事まで分かるのですか!?」


 ネモフィラの驚きも当然だろう。宝に隠されていた魔力の細工が分かった所で、敵の行動まで分かるわけがないからだ。


『キキハンニャああ! 遂に宝の一つ“リング”を手に入れたああああ! これは勝敗が分からなくなって――前言撤回です! ディアボルスパラダイスが二つ目! 二つ目の宝“ネックレス”を見つけ出したぞおお!』


 実況メリコの声が響き渡り、ミアの予想が的中した。


「本当に手に入れやがった……っ」

「な、何故分かったのですか!?」

「簡単じゃ。説明の為に少し話を変えるのじゃが、実はハッカにはワシが畑を探してくれと頼んだのじゃ。理由は宝の一つが隠されておるからじゃ」

「そうだったのですか!?」

「キキハンニャの生徒はハッカと同じく真っ先に来ていたじゃろう? あそこはチェラズスフロウレス寄りの場所にあるし、この雪景色じゃ。普通は直ぐに探しに行こうなどと思わんじゃろう。それでも来たと言う事は、キキハンニャにも魔力探知が出来る者がおると言う事じゃ。しかも、他と違い分かり辛くなるように細工された宝を、短時間で見つけられるだけの者がおる」


 開いた口が塞がらない。ネモフィラとルーサ、そして黙って話を聞いていたユーリィとニリンまでもが驚きのあまりに口を開け、言葉が出ない。まさかミアがそんな事まで考えていたとは思わなかったし、ハッカにそんな指示を出していた事も知らなかった。


「サービス問題の宝をいち早く見つけて手に入れたディアボルスパラダイスも同じじゃ。魔力を探知出来る者がおる。だから、残り十五分を切って焦り始めたキキハンニャが寮の近くにある宝を見つければ、ディアボルスパラダイスも負けぬ為に寮の近くの宝を回収すると言う流れじゃのう。まあ、こちらは畑の宝に気が付いておったかは分からぬが」

「……っ。み、ミア。お前凄いな。最初にこうしてお茶をする作戦を言い出した時とは全然違う奴みたいだぞ」


 若干失礼なルーサの発言だけど、ミアは微笑んでその言葉を受け入れる。優雅にお茶まで飲んで見せて、その姿には余裕があった。

 おかげで観戦会場にいる者たちには、ミアが聖女の微笑みで優雅にお茶を飲み、楽しんでいるようにしか見えないだろう。


「あ、あの、もしかして、ミアは最初から宝の隠し場所が分かっていたから、こんな作戦を思いついたのですか?」

「うむ。まあ、意味が無かったがのう。しかし、おかげで考える時間も出来て、ワシ等の対戦相手がこの二つの国になった理由も分かったのじゃ」

「え!? 理由ですか……?」

「おいおい。理由なんてあるのか?」


 驚きは消えない。今度は対戦相手が選ばれた理由と聞き、ネモフィラとルーサは耳を疑った。

 しかし、ミアは相変わらずの余裕な微笑みで答えるだけだ。


「ワシが魔力探知出来ることは天翼会も知っておるじゃろう。だから、対戦相手にもそれが出来る生徒のいる国にしないと、試合が直ぐに終わってしまうのじゃ」

「…………」

「ったく。上位国二つを相手にする理由はそれかよ。って事は、一位が第一試合から出場出来ていたら、騎士王国と対戦してたかもしれないのか」

「じゃろうな。さて、そろそろワシも本腰を入れるとするのじゃ。残り十分くらいじゃしな」


 ミアはそう言って車椅子を自分の手で動かすと、ミミミを戦闘モードに切り替える。そして、それに合わせてネモフィラも立ち上がり、ルーサも柔軟体操を軽く始めた。


「はあ。驚きすぎて疲れたぜ。それに、まさか本当に残り十分になってから動くとは思わなかったな。本当に大丈夫なんだろうな?」

「うむ。ルーサはユーリィとニリンを連れて畑に行って、ハッカのサポートを頼むのじゃ。恐らくキキハンニャが本格的に畑に戦力を集中し始めるからのう。ワシはネモフィラと一緒にディアボルスパラダイスに行って来るのじゃ」

「了解」

「任せて下さい! ミア近衛騎士嬢!」

「私はユーリィが暴走しないように見張っておきます」

「うふふ。お願いしますね。ニリン。では、行きましょうか。ミア」

「うむ。逆転勝利を掴むのじゃ」


 トレジャートーナメント第一試合の制限時間は残り十分。遂にミアが動き出した。

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