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TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第十章 錬金術と長寿の王
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襲撃を受けた第五部隊

 所変わって、ここは煙獄楽園の南東にある野菜畑が広がる小さな村カボウリ。錬金術で作り出した太陽の代わりとなる光を放つ魔道具マジックアイテムを使い、カボチャとキュウリを主に育てて収穫していて、村の名前もそこから付けられた村である。

 そして今、この村は戦火に包まれ、畑諸共(もろとも)火の海と化していた。


「何て愚かな連中なんだ。自ら自分達の村を焼き払うなんて……っ!」

「ランタナ! 無事か!?」

「父さん!」


 戦場と化した村の中で、チェラズスフロウレスの第二王子ランタナと国王ウルイが合流する。ウルイにはベネドガディグトルが、ランタナには側近のボルクが護衛として、それからレムナケーテ侯爵やツェーデンも共に行動していた。

 ここでは今、サンビタリアを救出する為に第五部隊が戦っている。しかし、村を戦場にするつもりは無く、これは突然訪れたアクシデントだった。


「父さん。トパーズ兄さん達は無事なのでしょうか?」

「分からん。この村には彼の内通者がいたので身を隠す為に利用させてもらっていたが、悪い事をした……」

「そんなっ! 悪いのは自分達の村を焼き払う蛮行に及んだ煙獄楽園の連中です!」


 ウルイの言葉をランタナは否定して、周囲で燃え広がる炎を睨む。すると、逃げ遅れた村人を見つけ、助けなければと駆け寄った。

 さて、今この村で何が起きているのか? それはほんの少し前の事だ。

 サンビタリアを救出する為に編成された連合軍第五部隊は、ウルイを中心に少数で編成されていた。主な主要人物は、チェラズスフロウレスからはウルイ、ランタナ、ベネドガディグトル、ツェーデン、ボルク、レムナケーテ、ハッカ。魔宝帝国からはトパーズとその護衛。天翼会からはクレラ。更に学生からはホミとハニラ。その他にも騎士たちが集められて、総勢二十名と言う少なさである。

 これは煙獄楽園の姫ディオールと恋仲であるトパーズが、このカボウリ村にいる住民の一人と繋がりを持っていたからだ。少人数であれば村でかくまう事が出来ると提案され、隊員をギリギリの人数まで絞った。そして、ここを拠点として作戦を実行する予定だったのだ。

 しかし、残念乍らその事も学園に忍んでいた“役者”によって筒抜けで、こうして村ごと襲われてしまったのである。しかも、襲われたのは最悪のタイミングだ。

 村に入ってから念の為に村の周囲を警戒して見回りをして、それが終わって一先ずは安全だと皆が安心して落ち着いて、各自で昼食をとっていた時の事だった。安全を確認して油断しきった所で上空に飛空艇が現れて、そこから魔従まじゅう化した魔物モンスターが降ってきて村を焼き払った。

 おかげで昼食が中断させられ、そんな文句も言ってる場合では無い状況。安心してバラバラに昼食をとっていた事があだとなり、部隊は分裂させられてしまった。こうしてウルイとランタナは合流出来たけれど、運が良かっただけに過ぎない。

 そして、村人を巻き込んでの戦闘が始まってしまった。ウルイが悪い事をしたと告げたのも当然の事だ。自分達さえこの村に来なければ、こんな事にはならなかったのだから。今は戦争中で、自分の国の村を自分たちで襲いはしないだろうなんて甘い考えは通じない。それを懸念しなければならなかった。

 でも、ランタナの言い分も正しいと言えるものだろう。ここに隠れている事を知っていたとしても、村を焼き払うなんて事をする必要は無い筈なのだから。例えその考えが甘い考えだとしてもだ。

 しかし、この第五部隊、その甘い考えこそが正しく、それに背くは悪だと高らかに声を上げる者がいる。


「許すまじ煙獄楽園スモークヘブン! 自国の村を焼き民を傷つけるなんて笑止千万! その悪を私の正義が許すと思うな!」


 ランタナたちから距離百メートル。怒声を上げたハッカの魔装ウェポン浸食する草花(ハッカーミント)の矢が、上空にいた大鷲の姿をした魔物モンスターの翼を撃ち貫く。魔物モンスターは奇声を上げて落下し、矢から寄生した種に魔力を奪われ、地面に衝突する頃には根が体内を蝕み虫の息となっていた。


「あれは……確かヤンガーラ公爵のご令嬢……だよね? 父さん」

「あ、ああ。この距離では顔が見えないが、恐らくは…………」


 逃げ遅れた村人を助け乍ら、ランタナが冷や汗を流して意気揚々に戦うハッカを見て問い、ウルイも冷や汗を流してそれに答える。ハッカの様子に動揺したのは二人だけでは無く、ベネドガディグトルやツェーデンたちも同じだった。

 しかし、流石はハッカと言えよう。彼女の正義が正しいかどうかはともかくとして、こういう時こそ頼もしい。自分の信念を曲げずに戦うその姿は、少なくともウルイやランタナに勇気をもたらしてくれた。


「我々も負けてはいられないな。一人でも多く、この村の民を助けよう」

「はい! 父さん!」

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