ペットの餌じゃないのじゃ作戦(3)
「美味しい!」
「美味しいんだぞ~♪」
しらす丼を食べて、リリィとプリュイが舌鼓を鳴らす。他の天翼会のメンバーも美味しいと好評価して、ミアはニッコニコだ。
「さあさあ。こっちもどうぞなのじゃ」
ニッコニコな笑顔で出したのは、グテンとカウゴが作った料理。ちりめんじゃこを乗せたサラダや豆腐。それからピーマンと一緒に炒めたもの。これ等全てがミアがシェフに教えたもので、日本の家庭であれば出てくるものもあるであろう普通の家庭料理と呼べるものだ。それでも一流のシェフが作ったと言うだけあり、その味は美味なるもの。それ等の料理をここ庭園で王族達も一緒に食べて、ミアが進んで給仕すると言う国王と王妃をハラハラさせるイベントがあったりもしたが、最終的にはみんなで楽しく食事した。そうして楽しい食事の時間も終わりを迎えて、天翼会のメンバー全員が全ての料理に大満足して別れの時が来た。
「お気に召して頂けたようで何よりです。ちりめんじゃこを含めて、これ等は全部ミアお嬢ちゃ……こほん。ミア様が考案した料理でございます」
「あら? そうなの? 私はサンビタリアから城で雇っているシェフがと聞いていたのだけど」
「サンビタリアさんは学園にいるから、連絡する時に間違ったのかもしれないんだぞ」
「ふふふ。そうね。学園への連絡手段は面倒だもの。そう言う事もあるわよね」
何も知らない二人はそう話すと笑い合い、天翼会の面々に代表で食後の挨拶をしていたグテンに視線を向ける。
「大変美味しい料理だったわ。ありがとう」
「帰ったら主様に教えてあげるんだぞ~」
満足のいく言葉が聞けて、グテンとそれを見守っていたカウゴが安堵の息を吐き出した。すると、そこに透かさずミアがシュババと前に出る。
「これを機にイワシの稚魚をペットの餌だけでなく、人が食べる食材として扱おうと思うのじゃが、天翼会の意見も聞きたいのじゃ」
さあ。やってまいりました今回のミアの作戦の最終段階。全てはこの時の為に準備していたのである。これが成功すれば、王族がペットの餌を食べていると言う残念な噂を広げさせる前に問題を解決できるのだ。と、ミアは妄想している。
ミアは真剣な眼でリリィ達を見つめ、緊張でごくりと息を呑み込んだ。
「いいと思うわよ」
「アタシも主様と一緒に食べたいんだぞ」
リリィとプリュイが答えると、他の天翼会メンバーも賛成と口々に話す。ミアはそれを聞けて一安心してホッと息を吐く。そして、国王に視線を向けて目がかち合うと、国王は柔らかな笑みを浮かべた。
「では、早速その様に広めよう。まずは王都の民に広める為に……と、すまない。それは後でいいか。天翼会の皆さま、本日はお忙しいところ訪問して頂きありがとうございました」
「こちらこそ、お招き頂いて感謝しています。それに報告にあった例の件も、こうして来て直に確認してホッとしました。天翼会が想像していた以上に、とても将来が楽しみだと感じました」
「同意です。私も誇りに思っております」
国王とリリィが頷き合う。二人が言っているのは、もちろんミアの事だ。こうして天翼会のメンバーが来たのも、本当はちりめんじゃこを食べに来たわけでは無く、聖女を見に来たのが目的だった。ちりめんじゃこは単なるきっかけにすぎないのだ。
天翼学園児童部試用入園が明日から始まるので、そんな事をしなくてもと思うかもしれないが、ちゃんと意味はある。と言っても、単純な話だ。天翼学園児童部に行く時の姿と、過ごし慣れた環境で生活している姿は絶対に違ってくる。だから、素の聖女の姿を見る為にも、これは必要だったのだ。そして確認した結果が、想像以上に素晴らしい聖女だった。リリィはそう感じたのである。だからこそ、国王もそれに同意し、誇りだと答えたわけだ。
「ミアさんも明日学園の試用入園するって聞いてるんだぞ。楽しみにして待ってるんだぞ」
「うむ。ワシもまたプリュイに会えるのを楽しみにしているのじゃ」
「えへへ。嬉しいんだぞ。それじゃあ、またなんだぞ」
「またなのじゃー」
ミアとプリュイが大きく手を振ってバイバイして、天翼会のメンバーやサンビタリアは学園へと帰っていった。サンビタリアも流石に天翼会の前では嫌がらせが出来ない様で、最後の最後まで大人しくしていた。そのおかげもあって“ペットの餌食べてます事件”は無事に解決して大成功。
無事にやり遂げたミアはルンルン気分で笑顔を振りまき、周囲も笑顔にさせたのだった。




