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本人がいない所で決めるのは良くない

「成る程。アフェクションが持っていた魔装ウェポン聖なる松明(ホーリーフレイム)か。確かにこれは私のデータには無いものだよ」


 ここは、カテドールセントの首都ホーリーキャピタルの天翼会支部。天翼会が各国に派遣を送って待機させる用に建てた建物の中だ。今この場にはジャスミンとリリィとジェンティーレ、それからマレーリアや他のカテドールセント寮の先生がいた。

 リリィからの報告を受けると、ジェンティーレが興味津々の表情を見せて笑みを浮かべた。


「それで? アフェクションは今何処にいるんだい? 私が責任を持って彼を引き取り研究しよう」

「興奮している所に悪いのだけど、アフェクションの魔装ウェポンは生憎ミアが木端微塵に粉砕しちゃったから、もう存在していないわよ」

「……はあ。それは残念だ。白金はくきんの光を別の形で疑似的に生み出すすべを、是非とも研究させてもらいたかったのに」


 残念そうな表情を見せ、ジェンティーレが紅茶を口に含む。その様子にリリィが呆れ、ジト目を向けた。


「ジェンティーレ。貴女、幾らなんでも魔装ウェポンを盗まれ過ぎよ。要するにこれって盗まれた魔装ウェポンがそのまま使われていたって事でしょう? ここまでくると、あんたが実は黒幕だったって言われても信じるわよ。とにかく管理はしっかりなさい。分かったわね?」

「う……。それに関しては反論の余地は無いわ。本当に申し訳ない。以後気を付けるよ」

「もう。リリィってば。魔装ウェポンの管理はクレラ先生に任せてるから、ジェンティーレちゃんに全部責任を押し付けるのは可哀想だよ。しかも盗まれたのは多分何年も前の話だし……」

「そうやってジャスミンが甘やかすから管理がズボラになるのよ」

「だってぇ……」

「しかし、まさかアフェクションが魔装ウェポンを所持していたなんて、今まで全く気付きませんでした」

「そうだよねえ。ええっと、普段はネックレスにしてたんだよね?」


 ジャスミンがマレーリアに同意してリリィに視線を向けて訊ねると、リリィは「そうね」と頷いた。


「十字架のネックレスに変形させて首から提げていたみたいね。攻撃の傷をある程度肩代わりする機能も付いていたわね。それが無ければネモフィラとルーサの合わせ技で決着がついていたわ」

「へえ。彼は聖女への願望を強く抱いていた。その結果に生み出された魔装ウェポンだからこそ、そう言ったあらゆる効果をもたらす魔装ウェポンを生み出したのだろうね」

「しかも、松明に変形させると白金の光を放つ炎を使える程にね。と言っても、所詮は模造品よ。本物の聖女の力の足元にも及ばないものだったわ」


 リリィが呆れた様子で話すと、ジェンティーレは「当然だろうね」と苦笑する。しかし、話はここでは終わらない。むしろこれからが本番だった。


「アフェクションが使っていた魔装ウェポンの入手先だけど、多分またあの国が関わってるんだよねぇ」

「あの国って、まさかヘルスターとフラウロスが裏で繋がっていたって言う国ではないでしょうね?」


 あの国と聞き、リリィがジャスミンに聞き返す。すると、ジャスミンが「その国だよ」と頷いて、リリィはため息を吐き出した。


「なら、クレラに頼る必要があるじゃない」

「そうなんだよぉ。今あの国と繋がりが深い国は水の国と魔宝帝国で、一番は水の国でしょぉ? 魔装ウェポンを横流ししてるルート先がまだ分かってないし、今も生徒の中にスパイが紛れ込んでる可能性があるから、クレラちゃんにお願いしないとだよ」

「冗談じゃないわ。私、あいつ嫌いなのよね。ヘルスターはまだ監禁しているのだから、あいつにどうにか聞き出す事は出来ないの?」

「無理だろうね。ヘルスターは確かにあの国と繋がっていたけど、関係は薄い。フラウロスをバッタにしたのがミスだったと認めるしかないわ」


 少し苛立った様子でリリィが尋ねると、それに答えたのはジャスミンでは無くジェンティーレで、リリィがジェンティーレを睨む。


「ジェンティーレ。貴女ねえ。ジャスミンが悪いみたいに言わないで貰えないかしら?」

「ま、まあまあ。ジェンティーレちゃんも悪気があるわけじゃないんだし、クレラちゃんにお願いしてもらえば何とか……ね? ジェンティーレちゃん」

「そうだねえ。私はクレラ先生と仲が良いし、別に構わないけど……。既に潜入捜査をしている状態だし、頼んだ所で今までと何も変わらないんじゃないかな?」

「そこをなんとか頑張ってもらって」


 ジャスミンが両手を合わせてお願いし、ジェンティーレが仕方が無いと頷くも、期待はしないでと念を押す。すると、マレーリアが少し考える素振りを見せ、ハッとした表情になって「私に一つ提案があります」と声を上げた。そうしてマレーリアは注目を浴びると、緊張した面持ちで言葉を続ける。


「聖女様……ミア様にお願いしてみるのはどうでしょう?」

「それだ!」


 こうして、ミアの知らない所で一つ。ジャスミンの笑顔と共に厄介そうな事件に巻き込まれる要素が動き出そうとしていた。

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