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続・聖奉国との決闘(6)

「急げ! 応急処置だけじゃ間に合わない! ジェンティーレ先生が他の現場から来る前に我々で治療する!」

「邪魔だ! お前達は道を開けろ!」


 怒声が飛び交い、野次馬のようにむらがるカテドールセントの民が動揺し乍らも道を開けていく。そしてそこには、意識を失っているユーリィとニリンの姿があった。

 怒声を上げたのは天翼会の救護班の先生や他国の生徒だ。そしてその側にはチェラズスフロウレスの生徒の姿があった。


「先生。ユーリィとニリンは助かるのですよね?」

「安心して下さい。ネモフィラ殿下。必ず助けてみせます」

「こんな時に万能ポーションがあればのう。二人を直ぐに助けてあげられるのじゃが……」


 チェラズスフロウレスの生徒とはミアとネモフィラだ。カテドールセントの拠点へ向かう途中に騒ぎを聞きつけて、この場に来ていたのだ。

 ミアは耳のイヤリングに触れて外そうか外すまいか迷っている様子で、それをネモフィラが察してその手を掴む。二人の目がかち合い、ネモフィラは首を横に振った。救護班が助けると言っているのだから、任せようと目を見て伝えたのだ。

 するとその時、ユーリィが目を覚まして「ぅう……っ」と声を上げ、その声に振り向いたミアと目がかち合う。


「ミア……近衛騎士…………嬢。……ネモフィ……ラ……第三王女殿下。申し訳……ございません」

「っ喋ったら駄目なのじゃ」

「わた……し……、お役に立つ事……出来ません……でした」

「そんな事はございません」


 ネモフィラの言葉を聞くと、ユーリィは涙を流して弱々しく首を横に振るう。そして、最後にごめんなさいと謝罪し、そのまま意識を失った。

 別に死んだわけでは無い。ただ眠っただけだ。救護班が治療を施してくれているから、きっともう大丈夫だろう。それでも、ネモフィラは涙を流して手を握り、ミアがその涙を指で拭う。


「泣いておる場合では無いのじゃ。フィーラ。決着をつけに行くのじゃ」

「……はい。ミア」


 ミアとネモフィラは頷き合う。そして、ユーリィとニリンを必ず助けてほしいと救護班に頭を下げ、駆け出した。




 ◇◇◇




 時は戻って現在。ネモフィラは真剣な面持ちでチェリッシュと目を合わせ、チェリッシュはその瞳に大きな怒りを見た気がしてひるんだ。すると、その直後にラーンがチェリッシュの前に出て、ネモフィラを睨む。


「聖女様に貴女如きが偉そうに! たかがチェラズスフロウレスの王女が頭が高いのよ! やってしまいなさい! ホーイ!」

「バウ!」

「頭が高いのはどっちじゃ」

「っ!?」


 一瞬だった。ホーイは駆け出したその直後には、ミアが放った炎の縄で身動きを封じられていた。そして、ミアは言葉を発した時には既にラーンの肩に前から飛び乗って、その額に銃口を直接ピタリとくっつけていた。

 ラーンはあまりにも一瞬の出来事に驚き、目を見開いたまま身動きが取れなくなる。いや。正確にはミアが飛び乗った勢いもあって、そのまま尻餅をついて仰向けに倒れていた。

 あまりにも一瞬の出来事だったけど、でも、これには“聖魔法”が使われていない。封印のイヤリングは未だにミアの耳をいろどらせているのだから。つまりこれは魔力の流れを読み取れるようになった副産物。風の魔石の魔力をより上手く扱う事で、驚くべき速さを可能とした結果である。

 ミアが馬乗りでラーンを床に押さえ付けると、ネモフィラがミアにゆっくりと近づき乍ら、チェリッシュへと言葉を続ける。


「ここに来る途中で、貴女の仲間に大怪我を負わされて救護されていた学友に会いました。下手をすれば死ぬ程の危険な傷です。それも正しいと仰るのですか?」

「それは……見ていないので何とも言えません。しかし、きっと何か理由がある筈です。私を慕ってくれる方々は、貴女方の目を覚まさせてあげたいと、救いたいと慈悲の目を向けているのですから」


 チェリッシュの言葉にネモフィラが目を見開き、言葉を失う。あれ程の事をした生徒に対して、何を根拠に言っているのか分からず驚いたのだ。すると、ルーサが「はっはっはっ!」と笑いだした。


「こりゃ駄目だな。話し合いなんて無駄だ。カテドールセントの聖女様は頭が腐ってるらしいぜ。なあ? 正しい事が大好きな正義馬鹿のハッカさんよお」

「馬鹿は余計だ。でも、そうだなあ。確かに聖女様の頭は腐ってるらしいね」


 流石は正義馬鹿のハッカだ。ルーサはともかくとして、ハッカはチェリッシュを聖女と思っているのに毒を吐き、そして指をさす。


「もう一度言う! 聖女チェリッシュ。お前達(・・・)に正義は無い!」

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