婚約者を救出せよ(2)
「メイクーが倒れたのを敵襲だと勘違いしたヒルグラッセがやって来て、相談相手がいなくなった君は焦って事情を説明してしまった。と言う事であってる?」
「う、うむ。ワシから黙っておいてほしいと言った手前申し訳ないのじゃが、言い訳を何も思い浮かばずに言わざるを得なかったと言うかなんと言うか……ごめんなのじゃ」
「君が謝る事ではないさ。それに、君が聖女だと隠さなければいけないのに、君に仕える侍従が全員その事を知らない方がおかしかったんだしね」
「本当ですよ! だから私も極刑を覚悟してあれほど陛下に自分をミア様の護衛にと言ったのです!」
「ははは。そうなんだ?」
と言うわけで、ミアはランタナと合流して、目的地に向かいながらヒルグラッセにバレた事を説明した。因みにミアは滅茶苦茶反省していてションボリ顔で、メイクーが原因を作った本人にも関わらず興奮した眼差しで見ながら文句を言っている。色々と言いたい事はあるが、とりあえず王族に対して失礼な物言いである。
「メイクー。後をつけていた私が言うのもなんだけど、ランタナ様に対して失礼よ。まあ、貴女の言い分には同意するけどね」
「失礼なのは貴女もでしょう? ネモフィラ様の護衛はどうしたのよ」
「ミア様の昨晩の寝言を報酬にして外して頂きました」
「なんじゃと!?」
「ネモフィラ様の護衛は他の者に頼んであるのでご安心を」
「いや、待てい! ワシの寝言とはどう言う事なのじゃ!?」
「ミア様もご存知の筈ですが、ミア様が午後の実技の授業を受けている間に私は睡眠をとっています。ですので、基本深夜はずっと起きているのです」
「そんなもん知っておるわ! 睡眠時間が少ないからもっと取らんかとワシが言っておるじゃろ! ワシが知りたいのは寝言の事じゃ! と言うか、何でそんなもんが報酬になるんじゃ!?」
「それは……ねえ?」
ヒルグラッセがメイクーに視線を移すと、メイクーが真剣な面持ちで「ええ」と頷いて言葉を続ける。
「今日この任務が終わったら、ネモフィラ様に寝言のお話をお伺いするわ」
「なんでじゃ!?」
(うおおおおお! 分からぬううう! まさか、ワシって寝言で滅茶苦茶おかしな事を言っておるのか!? いったい何を言っておるのじゃああああ!?)
ミアが心の中で叫んでいるが、実際は別に寝言で変な事を言っているわけでは無い。ネモフィラとメイクーはミア信者なので交渉材料になるだけで、ヒルグラッセが主人を売っただけの話である。とまあ、それはともかくとして、ランタナがそんなアホな会話で苦笑してから真剣な面持ちをミアに向けた。
「ミア。本題に入ろう」
「む? うむ。そうじゃな。リベイアを誘拐した犯人じゃが、恐らくヘルスター先生なのじゃ」
「レムナケーテ侯爵やマルクハルト子爵は同じ場所にいないと言う事であってるのかい?」
「どうじゃろうなあ? ワシはその者達の事を名前でしか知らぬ。サーチライトの効力は、会って顔や魔力を覚えた者の居場所の捜索じゃ。だから、その二人はおるかどうか不明なのじゃ。そもそも疑問なんじゃが、ワシはこの事件と野盗の件は別のものだと思っておるが、ランタナ殿下は何故同じ事件だと考えておるのじゃ?」
「レムナケーテ侯爵がリベイアを誘拐されて脅されているのかもしれないと判断したのさ」
今起きている事件は二つ。一つは、昨晩起きた事件で、レムナケーテ侯爵とマルクハルト子爵が牢にいる野盗と接触して失踪した事件。もう一つは、今朝起きた事件で、リベイアがヘルスターに誘拐された事件。
ミアはこの二つの事件は別のものだと考えていたけど、ランタナは同じ事件だと考えていた。
「しかし、そうなると益々分からぬのじゃ。レムナケーテ侯爵はサンビタリア派閥で、マルクハルト子爵はアネモネ派閥で、恐らくリベイアを誘拐した犯人と思わしきヘルスター先生はフィーラの派閥なのじゃ。全員が敵同士ではないか。仮にリベイアを誘拐して人質にして脅しておるとして、マルクハルト子爵の犯行の理由はなんじゃ?」
「……マルクハルト子爵も、実はレムナケーテ侯爵のように誰かを人質にとられている。もしくは何か弱みを握られているとか? どちらにしても、二つの事件が同じものであれば、黒幕はヘルスターの可能性が高いと思うよ。フィーラの派閥なら、サンビタリア姉さんとその派閥に恨みを持ってもおかしくないからね。最近は嫌がらせをミアにばかりしているけど、前はそれがフィーラ相手にだったんだ。まあ、マルクハルト子爵への恨みは想像つかないけどね」
「なるほどのう」
ミアが頷くと、丁度そのタイミングで目的地……リベイアが捕らわれている建物の前に到着する。建物は花の形をしていて、見張りも何人かいる。ミア達は一先ずは身を隠して、こっそりと顔を覗かせて様子を見た。
「さて、いよいよだ。ミア、君を期待しても良いんだよね?」
「当然じゃ。ワシの友人を誘拐した事を後悔させてやるのじゃ。……ランタナ殿下、最後の確認じゃ。ここから先は危険な場所なのじゃ。最悪命の危険だってあるかもしれぬ。それでもついて来るのじゃな?」
「それこそ当然だよ、ミア。足手纏いにならないようにするから、私にもリベイアを……好きな子を助ける手伝いをさせてほしい。彼女とは父さんが決めた婚約者の関係だけど、一目会った時から好きになっていたんだ。頼む」
「好きな子の為に頑張るとは、流石は周りを見ずに飛び出しただけはあるのう。じゃが、ワシは嫌いではないのじゃ。それでこそ男の子なのじゃ。グラッセさんとメイクーはランタナ殿下をサポートしてあげてほしいのじゃ」
「承知しました」
「お任せ下さい!」
「では、行くのじゃ。の前に~」
ミアがニヤリと笑みを浮かべて、ランタナたちは首を傾げた。




