事情聴取と新たな事件
「では、我々は外で待機しておりますので、何かあれば直ぐにお申し付けください」
「うむ」
意識を取り戻さない見張りの騎士の許に辿り着くと、ミアは侍従を含めて全員に部屋の外へ出て行くように頼んだ。もちろん最初はルニィとクリマーテとヒルグラッセに「殿方と二人きりだなんていけません」と断られた。だけど、それは「国家機密に関わる事をするのじゃ」と一言伝えるだけで簡単にルニィが引き下がって、クリマーテとヒルグラッセも渋々引き下がってくれた。
「さて、思った通りじゃなあ。魔装の攻撃を受けた痕跡があるのじゃ」
魔装の痕跡は騎士の首筋についていて、注射のような細い針に刺された痕だった。それにやはりと言うべきか、騎士から感じる微量な残留魔力。
「しかし妙じゃなあ。ここに来るまでにルニィに聞いた話では、レムナケーテ侯爵家では天翼学園に通っていた者がおらんかった筈。誰が使ったのじゃ?」
独り言ちを呟きながら騎士に向かって手をかざし、魔力を手の平に集中して発動。白金の光が放たれて、それが魔装の痕跡を首まるごと覆った。
「うーむ。もしや、パンツ盗難事件の犯人じゃったセルナーデと同じように、旅の商人から買ったんじゃろうか……?」
独り言ちを続け乍ら治療を続け、それを言い終える頃には光が消える。すると、その直後に騎士が少しだけ呻いて目を覚ました。
「あれ? ここは……救護室? 私は……レムナケーテ侯爵に…………」
「おはようなのじゃ」
「――っき、君は……? っあ。確か陛下が連れて来られたミア様でしたね」
「うむ。お主が眠ってから一夜が明けておってのう。昨日の晩に何があったのか聞きたいのじゃが」
「そうでしたか。……お話するのは構いませんが、何故そのような事を貴女様が?」
「国王陛下に頼まれたのじゃ」
「なるほど。確かにミア様は特別な待遇を受けていらっしゃる方です。陛下が貴女様を代理に選ぶのも頷けますし、全てお話します」
「ありがとうなのじゃ」
ミアが礼を言うと、騎士は礼を言われるとは思わず目をパチクリと瞬きさせた。わけだが、騎士の反応は当然と言える。国王に頼まれてと言う事ならば、ミアは国王の代理となり、ミアの言葉は国王の言葉と同意なのだ。つまり、安易に礼なんて述べないのが普通で、代理が頭を下げれば国王に頭を下げさせたのと同じ事になる。とは言え、相手はまだ五歳児のミア。騎士も驚きはしたものの微笑んで、直ぐに真剣な面持ちになった。
「あれは……そう。パーティーが終わった頃の事でした。レムナケーテ侯爵とマルクハルト子爵が野盗に話があるとやって来たのです」
「マルクハルト子爵……? ほう。名前だけは聞いた事があるのじゃ。確かアネモネ殿下の派閥の者じゃったな」
「はい。しかし、この二人と野盗の面会予定はありませんでした。ですので、会わせる事は出来ないとお断りしたのですが……その…………突然、突然頭がボーっとして、気が付けば牢の前まで案内していました。この事は陛下にお伝えして頂いても構いません。事実をお伝えし、如何なる罰も受ける覚悟です」
「大袈裟じゃなあ。心配せんでも何かされたのが原因じゃろう。お主が罰を受ける必要なんて無いのじゃ。それよりその先が聞きたいのじゃ」
「は、はい。それから……レムナケーテ侯爵が何も無い所から……何か、こう先端がもの凄く細い武器を取り出して、恐らく私は攻撃を受けたのでしょう。そこからの記憶がございません」
「ふむ」
(この分じゃと、多分レムナケーテ侯爵とマルクハルト子爵の両方が魔装を所持しておるのう。頭がボーっとしたと言っておるし、そっちはマルクハルト子爵の魔装の効果じゃろうな)
「頭がボーっとした時に、何か変わった事は無かったかのう? もしくは気づいた事があれば教えてほしいのじゃ」
「変わった事か気付いた事……ですか? とくには……あ。そう言えば、何か甘い匂いがしました。って、すみません。パーティーの直後ですし、デザートか何かの匂いが服についていただけですよね」
「ふむふむ。甘い匂いじゃな。ありがとうなのじゃ。ワシはこの辺で――」
と、ミアが救護室を出ようとした時だった。突然部屋の扉が開かれて、ネモフィラがメイクーを連れて慌てた様子で入って来た。
「ミア! 大変です! リベイアが誘拐されました!」
「――っな、なんじゃとお!?」




