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TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第六章 王位継承権の行方
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擦り付け合う候補たち

 ミアの天翼学園入学のカモフラージュとして、ネモフィラの入学が決まった。のだけど、天翼学園についての話はまだ終わっていない。連れて行ける侍従の数が八人までと言う事や、学園に入学する為に必要な物やその準備。とまあ、これ等はサンビタリアやアネモネやアンスリウムが入学する時に経験しているので、特に気にする事でも無い。でも、話し合いが続くのは今回のケースが特殊で、他の生徒とは違うものが求められていたから。

 その一つは、天翼会側が用意する制服を着なければならないと言う事。天翼学園では制服を着ているのは先生だけで生徒は着ない。生徒たちは自分たちの好きな衣装を着て学園に通っていた。だから、この特別な扱いにネモフィラは喜んでいて、喜ぶ理由もミアと二人だけのペアルックだから。みたいなものだった。因みに、ミアとネモフィラが着る予定の制服は、天翼会が着る制服とは違うデザインだ。

 こうした話が終わると、最後にサンビタリアの口から出た言葉にウルイたちが驚く事になる。


「今回の入学は特殊なケースで、ネモフィラはまだ六歳。だから、寮への保護者同伴が一人だけ認められているの」

「保護者の同伴……? それはありがたいな」

「そうね。それなら私が行こうかしら」

「母さんが行くの?」

「ええ。ウルイはこの国の王だし、そうなると私が行くべきでしょう?」

「確かにそうかもね。私もそれがいいと思うよ」

「そうだな。ここはアグレッティに任せ――」

「ごめん。実は保護者として、ジャスミン先生とリリィ先生から私が推薦されているの」

「「――――っ!?」」


 サンビタリアが推薦を受けたと聞いて、ウルイたちは驚いた。何故なら、天翼学園で事件を起こして追い出されたサンビタリアを、天翼会が保護者として推薦したから。都合が良い。なんて人によっては思うであろう話だけど、ここに集まった者にそれを考える者はいなかった。ただただ“何故?”と疑問が頭に浮かぶだけ。そんな両親や弟の気持ちに気付いたのか、サンビタリアは苦笑する。


「知っての通り、私は学園で教育実習生をしていたでしょう? 学園の事はそれなりに知っているわ。今回の入学は特例で、しかも“聖女”が関わっている。だから、聖女の側に学園に詳しい者を置く必要があると考えたらしいのよ。それもルーサの様な学生側では無く、先生側のね」

「ワシは聖女では無いのじゃ」


 誰もミアに聖女とは言っていないけど、いつもの調子で聖女では無いと話すミア。最早それが認めたようなものだけど、そんなミアにツッコミを入れる者はここにはいない。それよりもサンビタリアの説明に納得していた。

 聖女を学園に通わせる上で、学園の事をよく知る人物を側に置きたい。そして、知識の量で言えば学生より先生の方が多いだろう。今チェラズスフロウレスに通っている生徒を側に置くのも良いけど、それだと天翼会側が関わり辛い。その点サンビタリアはとても適任で、あの事件以来ミアとの仲も良好。天翼会からしてみれば、言い方は悪いけど今のサンビタリアはとても利用価値があるのだ。


「でも、姉さん。それを民は許すかな? 不満の声が上がると思うけど……」

「ランタナの心配も最もだと私も思うわ。でも、二人の入学を迎える前に決着をつける事が出来れば、意外となんとかなるかもしれないわ」

「……決着? ごめん。何の話か分からないのだけど?」


 ランタナが困惑して尋ねると、サンビタリアがネモフィラに視線を移し、ネモフィラが察して頷いた。


「私とネモフィラは秘密裏にどちらを王太子にさせるかで競い合っているのよ。だから、その決着を入学までに決めるわ」

「――っえ!? そんな事をしていたの!? と言う事は、ネモフィラは王太子になる決心をしたって事!?」

「いいえ。違います。ランタナお兄様。王太子になる為に争っているのではなくて、王太子にさせる為に争っているのです」

「……え? ごめん。意味が分からないな」


 ネモフィラとサンビタリアの王太子候補合戦。それは、自分がなる為の戦いではなく、相手を王太子にする為の戦い。言わば面倒事のなすり付け合いである。

 ネモフィラとサンビタリアが説明すると、それを知らなかった面々は驚いて困惑した。かつて王太子の座を巡った争いで、こんなアホな戦いがあっただろうかと。少なくとも、そんなもの初めて聞いた。

 正気か? この姉妹。と、耳を疑うのは言うまでもない。いや。しかし、ランタナは王位継承権を自ら捨てたので、声を上げて否定するなんて絶対に出来ないけども。


「私達のどちらかが王太子になってしまえば、幾らでも言い訳が出来るようになるわ。例えば、私が罪を償う一環として、次期国王を支える。とかね」

「それだとわたくしが王太子になるみたいではないですか。次期国王として反省したお姉様が、信頼を取り戻す為に学園で一から学ぶ為。と皆さんに伝えます!」


 ネモフィラとサンビタリアの間に目に見えない火花が散る。そんな二人にミアたちは冷や汗を流して困惑し、保護者がサンビタリアに決定した。

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