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TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第五章 聖女と歩む異世界旅行
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ミア派会議妖狐山編(1)

 リリィと再会したミアたちは話を終えると、解散して自由行動の時間になった。今後の予定としては、明日の初日の出を見てから一緒に行動する事になり、妖狐山で目撃されたヘルスターの探索だ。だから、一応それまでは休息をして、明日に備える事になっている。


「なんだか、少し疲れてしまいました。まさかヘルスターの名前をこんな所で聞くとは思いませんでした」

「そうじゃのう。密輸犯のフラウロスを追っているジャスミン先生も随分と苦戦しているようじゃ。しかし、リリィ先生は気づいておらぬが、神に選ばれた者と言われたのはアンスリウム元殿下の事じゃろう。本人が自分は神だとか言っておったからのう」

「はい。なんだか妹として恥ずかしいです。でも、ディアボルスパラダイスへの心配が無くなって安心しました」

「うむ。早速手紙を書いて送るのじゃろう?」

「は、はい」

「……?」


 歯切れの悪い返事に首を傾げるミアに、ネモフィラは少しぎこちなく微笑んだ。手紙を送る。それは、この旅の中でネモフィラが担当している役割だ。

 この世界では魔法はあるけど携帯などが無いので、遠く離れた知り合いに連絡をする時は手紙でやり取りされる。そして、この世界の伝書鳩は色々な種類がある。その中でも王族が愛用する伝書鳩は特殊で、音速で飛行可能なサウンドピジョンと呼ばれるはとが伝書鳩として使われている。アネモネの結婚式の時は直ぐに帰るつもりだったので連れて行ってはいなかったけど、今回の旅は長旅になるのが分かっていたので、一羽だけ連れて来ていたのだ。しかし、実はこの伝書鳩は使われていない。

 ネモフィラが使っていたのは……。


「以上が、リリィ先生から聞いたお話です」

「へえ。戦争は結局モーナスの勘違いだったってわけだ」

「人騒がせな話ね。でも、安心したわ。お父様やお母様もその事を心配していたもの。もしもの時の為に騎士を海上に配備する予定だったけど、それも必要が無くなったわね」


 ネモフィラの説明を受けて感想を述べるのは、ジェンティーレとサンビタリアの二人。そう。ネモフィラが利用している連絡方法は伝書鳩ではなく、ジェンティーレがミア派に配った通信用の魔道具マジックアイテムだったのだ。

 そんなわけでミアと一先ず別れて、借りた部屋で連絡を入れたネモフィラ。通信機に映るのは、レムナケーテ以外のミア派の面々。サンビタリア、ツェーデン、アネモネ、ミント、そして協力者のジェンティーレ。メイクーはネモフィラと一緒にいるので通信機には映っていないけど、勿論このミア派会議に参加していた。


「ミント。貴女のお父様も無事です。良かったですね」

「はい! ネモフィラ様。ありがとうございます。……父さま。本当に良かった……」

「レムナケーテ侯爵が無事だった事は、私からリベイアに伝えるわね」

「はい。お願いします。サンビタリアお姉様。無事だと伝えて安心させてあげて下さい」

「ええ。そうね」


 サンビタリアは頷くと、自分自身も安心した面持ちで柔らかな笑みを見せた。

 レムナケーテがアンスリウムに捕まり行方不明になってから、サンビタリアは随分と後悔していた。何故なら、そもそもとしてレムナケーテがアンスリウムに捕まったのは、サンビタリアにアンスリウムの事を調べるように言われたからだ。その結果、怪しい動きを見せていたレムナケーテが捕まり、行方不明になってしまった。だから、サンビタリアは後悔して、リベイアに申し訳ない感情を抱いていたのだ。

 行方不明と判明した当時は、サンビタリアは自分がレムナケーテに下した命令をリベイアに伝え、そして謝罪をした。ランタナはそれを知って、随分とサンビタリアの事を責めていたけど、それをなだめたのはリベイアだった。そして、リベイアはサンビタリアを許したのだ。殿下のせいではございません。と。


「ネモフィラ。一つ聞いて良い?」

「アネモネお姉様? どうぞ」

「戦争の話だけど、本当に勘違いだったのかしら?」

「え? そう聞きましたけど……」


 戦争はモーナの勘違い。それは間違い無い筈で、魔王も違うと言っていたとリリィから聞いた。なのに、何故かアネモネはいぶかしみ、とてもに落ちないと言いたげな表情を見せている。アネモネのそんな表情に、ネモフィラは少し不安になった。すると、アネモネが少し考える素振りを見せ、真剣な面持ちで口を開いた。


「少し気になる噂を最近耳にしたのよ」

「気になる噂……ですか?」

「ゴーラの管轄の領内に、アンスリウムと仲の良かった天翼学園の生徒がいるのだけど、最近様子がおかしいの。それで、近所に住んでいる人達から聞いた噂によると、“聖戦”の準備をしているって……」

「聖戦……ですか? トレジャートーナメントと言う大会の話では無いのですか?」

「違うわ。それに、学園で開かれるトレジャートーナメントを“聖戦”だなんて言う人は、少なくとも私は一人も知らない。それで今回のフラウロスの話でしょう? その生徒もアンスリウムと仲が良かったし、フラウロスとも繋がりがあった。そう考えると何か引っ掛かるのよ」

「へえ。その“聖戦”とやらは、元王子様を奪還する為の戦い……つまりそれこそがモーナスが聞いた“戦争”なのかもしれないわね」

「「――っ!?」」


 ジェンティーレの言葉に一同は驚き、そうかもしれないと誰もが考えた。緊張した空気が流れ、ジェンティーレはため息を吐き出した。


「この件はあくまで想像の域をでないから、他言無用にしましょう。私の方でも調べておくから、最悪この通信機を使って私に直接連絡してもらっても構わない。急を要する場合は私からも連絡をするわ」

「そうね。ただ、万が一の為の準備はさせてもらうわよ」

「もちろん。サンビタリア殿下には苦労をかけるけど、よろしく頼むよ。しかし、こうなってくるとヘルスターを脱獄させていた件といい、これはジャスミン先生に腹をくくってもらわないといけないなあ」


 ジェンティーレはそう言うと、気乗りしないとでも言いたそうな、曇った表情を見せた。

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