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逆賊

 チェラズスフロウレスの国王ウルイの申し出により、争う事無くアンスリウムと話し合いの場が設けられる。と、そう思ったが、考えが甘かった。モヒートが配下たちに目配せし、直後に配下たちがウルイを囲んで捕らえたのだ。


「笑わせてくれる。この私が話し合いの場を逆賊に提供してやると本気で思ったのか? アンスリウム様から貴方が無能な王だったとはうかがっていたが、まさかこれ程とは。確かに無能だ。危険人物である逆賊の首謀者を、私がアンスリウム様に会わせるわけがないだろう? ここで始末するに決まっている」


 モヒートが滑稽こっけいと言わんばかりの笑みを浮かべると、配下たちも下卑た笑みを浮かべた。ここはウルイやサンビタリアに仕える騎士がいて、彼等を囲んでいる。しかし、彼等は全員が天翼学園の生徒であり、魔装ウェポンを所持している。だからこその余裕の笑みだった。

 だけど、忘れてはならない。サンビタリアは学園に通っていた元教育実習生。彼等の魔装ウェポンの事なら、ここにいる誰よりも、本人達よりも知っていた。そして、弱点を知り、対策の仕方が分かっている。


「その手を離しなさい! バレットストーン!」


 サンビタリアが魔法で石の弾丸を飛ばし、ウルイを捕まえている配下の一人に攻撃する。その威力はミアの放つ白金はくきんに輝く光の弾丸と比べれば大した事は無いが、それでも十分脅威的なもの。直径十センチはある大きな石が銃弾が飛翔する速度と同じ速度で飛び、それが命中した。


「――っぐぁ!」


 狙った相手は不意打ちに弱く、防御関係をおろそかにする生徒だった。その為サンビタリアの突然の攻撃を防ぐ事が出来ず、攻撃を受けて倒れた。


「――っ!? 何をやってる! あんな攻撃を――――っ」


 モヒートを含め全員に隙が生じて、その隙にツェーデンが駆け出してウルイを助ける。そして、モヒート等に向かって手をかざし、魔法陣を浮かび上がらせた。


「ファーストトルネード!」


 魔法陣から解き放たれたのは小さな竜巻。しかし、小さいと言ってもその威力は凄まじく、モヒートたちを呑み込み海上へと移動する。これもサンビタリアが万が一の為にツェーデンと作戦を考えて、導き出した一つの戦略だ。

 モヒートが連れて来た騎士は、全員が魚人の血が流れているハーフ。彼等は同じ魚人とヒューマンの混血の同士として団結力が高く、そして、それ故にお互いの力を高め合える関係を築いていて自信に満ち溢れていた。だけど、それは別の角度から見れば大きな欠点にもなっている。

 人と言うのは、集団になってその人数が大きければ大きい程に増長し、気を大きくして立ち振る舞う事がある。彼等がまさにそれだった。所持する魔装ウェポンも攻撃型で、その力は強大だが、力におごって性能を引き出せていない。それ故にもろく、隙だらけ。自分自身の自信が足を引っ張り、突然の出来事に対応しきれず混乱し、力任せに解決しようと焦って動く。しかし、それで解決できるのは、自分より弱い者が相手の時のみだ。そんなものは才能が無いと言われても、諦めずに努力し続けてきたサンビタリアに通用するわけがない。

 モヒートたちは自身の魔装ウェポンを使って竜巻から脱出をしようともがいたが、それこそサンビタリアの思うつぼだった。サンビタリアは最初の魔法に細工をしていて、モヒートたちに石の破片を付着していたのだ。


「ゲインロック!」


 サンビタリアが魔法を唱えると、付着した石の破片が水を含んだ乾燥ワカメのようにふくらんで、直径十メートルはあろう岩へと変化した。その重さはとんでもなく、そして、タイミングを合わせるようにツェーデンの魔法が消える。するとその直後に、モヒートたちは岩の重さで真っ逆さまに落下して、そのまま海の中へと落ちていった。その時モヒートが「おのれええ! 逆賊風情があああ!」と叫びながら落下したが、情けない事にただの負け犬の遠吠えである。


「なっにっがあっ! 逆賊よ! それはこっちのセリフだわ!」

「サンビタリア様! 今の内に!」

「分かってる! あなた達! 相手は魚人の血を引いたハーフ! 海の中からも攻撃が来るわ! 全力で逃げるわよ!」


 サンビタリアが大声を上げ、それを聞いた騎士たちが慌ててモヒートの船を切り離して、自分たちの船を出航させた。

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