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聖女は前世を隠したい

「ええええええ!? アンスリウムくんがそんな事してたの!?」

「う、うむ」


 ここはブレゴンラスド王宮のミアの借り部屋。現在人払いをして、部屋の中にいるのはミアとネモフィラとルニィとジャスミンとトンペットとラテールだけ。ヒルグラッセたちは部屋の前に立って、誰も近づけないようにしている。そして、ミアとネモフィラはしっかり者のルニィに相談した後に、ジャスミンにチェラズスフロウレスの現状を話したのだ。天翼会の者に話したら不味いのは分かっているけど、ジャスミンなら信用出来るし力になってくれると思ったから。


「やっぱ腹黒王子は腹黒だったッスね。流石ボクッス」

「あんなの誰が見ても腹黒です。分からないのはおバカなジャスくらいです」

「あ、あはは……」

「み、耳が痛いのじゃ」

「うぅ……。わたくしもおバカでした……」


 ラテールの言葉にジャスミンが苦笑し、ミアが冷や汗を流して、ネモフィラがシュンと落ち込む。ルニィは特に顔色を変える事もなく、侍従として口出しせずにただ聞いているだけ。


「それより、ジャスが今からモノーケランドのマイコメールに行くです。ラテはお留守番するから、その間はミアの頭の上にお世話になるです」

「ふむ。それならすまぬが、ワシも行くのじゃ」

「わ、わたくしも行きます!」

「流石二人ともいい子だね。先生嬉しいよぉ。よーし。みんなで行って、マイコメールの人を助けよう!」

「「おーっ!」」


 幼女たちが笑顔で片手を上げる。なんとも微笑まし光景だが、中身も見た目も幼女なのはネモフィラただ一人。ミアは中身がお爺ちゃんだし、ジャスミンは年齢不詳。とは言え、そんなものは関係無い。微笑ましい三人の姿に、お堅いルニィも微笑ん……でない。滅茶苦茶止めた方がいいかどうか悩んでいる顔をしている。

 危険なので止めたいけど、こう見えてもジャスミンは大人の先生。立場も上だし、そんな相手に口だしなんて出来ないのだから仕方が無い。そんな中、ラテールはちょっとプンプンとオコ顔。


「ラテはミアの頭の上でお留守番してお菓子でも食べながら、惰眠だみんむさぼる予定だから困るです」

「ラテちゃんも一緒に行こうよ」

「絶対面倒な事に巻き込まれるから嫌です」

「流石はラテール先生なのじゃ。ワシもこのニート根性を見習うのじゃ」

「ニート……? そう言えば交換日記にも何度か書いていますね。ミア。ニートって何ですか?」

「――っ。あ、あれじゃ。家の中でゴロゴロする事なのじゃ」

「なるほど」


 久しぶりに出したボロ……いや。日記に書いてるなら久しぶりでも無いのだろうか? とにかく、ミアは何とか誤魔化せたと額の汗を拭い、ホッと一安心。だけど、全然誤魔化せてはいなかった。ジャスミンはミアの口から“ニート”と言う言葉を聞いて、訝しむようにミアを見たのだ。


「ミアちゃんって……」

「なんじゃ?」

「ううん。なんでもないよ」

「……っ」

(も、もしかして、バレたのじゃ……? バレてしもうたのじゃ!? ジャスミン先生は天翼会の中でも優秀な寮長先生。ワシが転生者だと気がついてもおかしくないのじゃ! 不味いのじゃ! このままだと、このままだと……このままだと? 何が不味いのじゃ……?)


 はい。転生者という事が知られてしまっても特に問題は無いし、聖女と知られるより影響はないだろう。そもそもここで転生者でしたと言ったところで、ネモフィラやルニィは冗談を言ってるとしか思わない。

 ミアは悟った。実はバレても大丈夫で、中身がお爺ちゃんなのがバレなければ意外と平気なのではと。尚、中身お爺ちゃんが知られて不味いのは、温泉に入る時に困るくらいの気持ちのミアである。まあ、他にも色々あるだろうな気もするが、一先ず転生者と言うこと自体は知られても平気な事に気がついた。そもそも天翼会にはジェンティーレと言う自分の前世を知る友人がいる。今更バレるバレないで騒ぐ事もないと、ミアは思った。と言っても、だからと言って自らバラす事はしない。どんな影響が出るか分からないのだから。それに、トンペットがニヤニヤしながらミアを見ていて、ラテールも凄いジト目を向けてきている。精霊たちの視線を受けて、ミアは若干ビビっていた。


「とにかく、ラテちゃんも皆と一緒にマイコメールを助けに行こうね」

「はあ。仕方が無いです。でも、ラテは何もしないです」

「心配しなくてもラテの出番は無いッスよ。聖女ののじゃロリがいれば疫病なんてちょちょいのちょいッス」

「のじゃロリ? ちょちょい……?」

(ぬおおおおお! 絶対バレてるのじゃ! ちょちょいのちょいなんて言葉、この世界には無いのじゃああああ! って、何で精霊が知っておるんじゃ!?)


 ネモフィラは首を傾げ、ミアは結局心の中で騒ぎまくる。何も影響は無い筈だと思いながらも、ミアは恐怖で体を震わせたのだった。

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