表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
161/999

龍神国に聖女が舞い降りた日(7)

 突然現れたプラーテの登場で、ヒルグラッセがヴェロの爪を食らって倒れてしまった。ヴェロの笑いが空洞内に響き渡り、プラーテが血飛沫ちしぶきを上げて倒れたヒルグラッセを見て震えあがる。ヒルグラッセの敗北とプラーテの登場で、誰もが動揺を見せ、スピノもその顔を真っ青にさせていた。


「プラーテ!? なんで貴女がここにいるの!?」

「ま、ママ! 大変だよ! ヒルグラッセお姉ちゃんが死んじゃう! ママ! ヒルグラッセお姉ちゃんを助けてあげて!」


 プラーテが涙を流しながらスピノに向かって駆け出す。が、その直後だ。少し前に騒ぎを聞いていなくなっていた三人の精鋭騎士が目の前に落ちてきて、プラーテは驚いて足を止めた。そして、その背後から革命軍副隊長サウルことルーサが現れ、プラーテに近づくとお米さま抱っこする。


「やああ! だあれ!? 離して!」

「能天気姫を捕まえたぜえ! 大収穫だ!」


 ルーサは嬉々として声を上げると、魔法で水のくさりを作り、プラーテを縛り上げて天井につるす。それから大量の血を流して倒れているヒルグラッセを見て、ミアが連れていた騎士だったのを思い出し、ほんの一瞬だけ顔を曇らせた。


「ママー! ママー!」

「プラーテええ!」


 プラーテが恐怖で泣き叫び、スピノが顔面蒼白でプラーテを見上げる。なんとも非道なその行動に誰もが息を呑み込んだ。が、しかし、ここでえて言わせてもらおう。これはルーサなりの優しさであると。

 ルーサがここに来たのは言うまでもなく戦う為。だから、プラーテのような非力な少女を巻き込まない為に、身動きが取れないようにして安全な場所に移動させたのだ。ルーサはツンデレさんなので、言葉と行動が真逆なのだ。少なくともミアと出会ってからは、無駄な犠牲は出さないように心掛けている。と言うわけで、そんな荒くて分かり辛い優しさを非道と勘違いしているスピノが、ルーサを睨みつけて騎士たちに視線を向けた。


「何をしているの! 誰か早く! 早くプラーテを助けなさい!」

「させねえよ。バーカ」


 スピノが助けろと叫ぶが、ルーサが邪魔をする。そんな事をされては戦いに巻き込んでしまい、危険な目に合わせてしまうかもしれないのだから当然だ。ルーサはチャクラムの魔装ウェポンを投げ、その一撃だけで一瞬でブレゴンラスドの騎士を一掃した。まさか一撃で全滅させられるとは思いもよらず、スピノは驚愕きょうがくして扇を落とし、硬直する。そして、ヴェロが前に出た。


「サウル副隊長。何故あんたが……?」

「よお。ヴェロ。処刑の話を聞いてここだと思ったぜ。裏切り者は許さねえ。オレはお前を殺す為に来たんだ。独裁者スピノはその後だ」

「それでこの聖地にまで乗り込んできたってか。前から思ってはいたけどよ。やっぱあんたは頭がイカレてやがるなあ」

「龍神が怖くて革命なんて出来っかよ。なんなら龍神ごとてめえ等をぶっ殺してやるぜ」


 ルーサとヴェロが睨み合い、二人が同時に動く。同時に、ルーサは魔装ウェポンから水蒸気を発生させた。その水蒸気には魔力が多く含まれていて、一瞬でこの空洞内に充満する。対するヴェロは既に体力も魔力も尽きようとしている限界な状態。しかし、だからこそ一撃に全てを賭けようと魔装ウェポンに全魔力を収束し、爪糸ストリングクロウを展開した。

 この二人は同じ革命軍の組織にいたが、ヴェロの扱う爪の糸の事をルーサは知らない。だから、ヴェロは勝てる見込みがあると思っている。しかし、その見込みは甘かった。ルーサが放った水蒸気は所謂いわゆる魔力感知をする為のもので、目に見えない攻撃を防ぐ為にいているものだった。わざわざどんなものなのかと説明する馬鹿な事をルーサがしなかった為に、それをヴェロは知らなかった。お互い手の内は隠していたと言うわけだ。


「なるほどな。これがお前の秘密兵器ウェポンってわけだ」


 ルーサは魔力を感知する事でヴェロの爪の糸の攻撃を全てけて急速接近し、チャクラムをヴェロのみぞおちにくっつける。


ったぜ!」


 チャクラムが圧縮された水に変化し、ヴェロのみぞおちだけに向かって弾けた。その威力は絶大で、ゼロ距離から放たれたものだから一溜まりもない。まるで爆弾をみぞおちに受けたような衝撃がヴェロを襲い、ヴェロは悲鳴を上げる余裕も無く血反吐を吐き散らかし乍ら吹っ飛んで、壁に激突して倒れた。ヒルグラッセが弱らせた後とは言え、力の差は歴然だった。


「報復完了。あ~と~は――」

「兄者……俺、やっぱり革命軍につくよ」

「――っ?」


 不意に聞こえたのはキラの声。キラが目を覚まして立ち上がり、魔装ウェポンを発動してプラーテを見上げていた。


「兄者は仕事で革命軍にいたみたいだけど、俺は……俺は本当にこの国の法律が嫌なんだ! だから、ここで終わるなら、せめて独裁者の娘のプラーテ王女だけでも絶対に殺すんだ!」

「しまった! あの野郎もいたのか!」


 今まで気絶をしていた為にキラの存在に気がつかなかったのだろう。ルーサは驚き声を上げ焦った。何故なら、キラの放つ湯気の力は強力で、ルーサがプラーテを吊るした水の鎖など簡単に無力化してしまえるからだ。キラの魔装ウェポンが水の鎖を引き千切り、プラーテを掴んで崖下に広がる溶岩に向かって放り投げた。


「やあああああ!」

「プラーテえええええ! いやああああ! 誰か止めてええええええ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ