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革命軍の副隊長(1)

 ネモフィラが取り出した魔道具マジックアイテムの目の前に、幾つかの文字が浮かび上がる。それは蒼い光で並べられた言葉や人名の羅列られつ。その中にはメイクーやサンビタリアやアネモネの名前も入っていて、ネモフィラがメイクーの文字に触れ、文字があわく光る。


「メイクーを呼び出していますので少々だけお待ちください」

「ほお。便利じゃのう。宙に文字が浮かび上がるのじゃな」

「はい。いつもは自動接続にしていて、これを持っている全員と一斉にお話が出来るのです」


 ミアが少し興味をそそられて宙に浮かぶ文字を見始め、ネモフィラがそれをニコニコと見ていると、ミントが「あの……」と声を上げた。二人がミントに視線を向けると、ミントは少しうつむきがちに二人を見る。


「ブレゴンラスドの精鋭部隊……は、何故ネモフィラ様を連れ去ろうとした……のでしょう?」

「確かにそこ等を聞くのを忘れておったのじゃ。フィーラは何か聞いておらんか?」

「分かりません……あ。でも、あの方たちが普段はブレゴンラスドの王妃スピノ様の護衛をしている方だとは聞きました」

「なんじゃと? いや。それはそうと、あやつ等はお主にそんな事を話しておったのか?」

「一人だけ……わたくしを直接拘束していた方がお喋りな方だったのです。その方がわたくしの話相手をしてくれると言って、誇らしげに語っていました」

「その護衛は馬鹿なのじゃ?」

「どうしてですか?」


 ネモフィラが首を傾げてミアに尋ねたが、ミアは一先ず「そう思っただけなのじゃ」とだけ答えた。実際にミアの言いたい事は分かる人には分かるような事ではある。王妃の護衛をしている者が、その情報をペラペラと誰かに話すなど論外で、護衛として失格と言われてもおかしくはない。何かしらの処罰を受けても文句が言えないようなおこないと言えるのだ。恐らく自分達が襲われて、しかもネモフィラを取り戻されるとは思いもしなかったのだろうが、正直言って喋るのはよくない行為だった。


「しかし、合点がいったのじゃ。ブレゴンラスドの精鋭部隊。それも王妃の近衛であれば、あれだけの実力でも頷けるのじゃ」

「あれだけの実力……ですか? こう言っては……よくないかもしれません……けど、私から見て……強いと言う印象はありません……でした」

「何を言うておる。少なくとも革命軍の十強よりは強かったのじゃ」

「――っえ?」

「ワシはアネモネ殿下を助けようとした時に十強と戦ったのじゃが、精鋭部隊の方が強かったと感じたのじゃ」


 ミアの言う通りで、個人の実力だけで言うなら精鋭部隊の方が強い。革命軍の十強と言えど、それは間違い無かった。しかし、強さだけでは戦いなんて決まらない。ミアのような圧倒的強さがあれば変わるかもしれないが、前線に出ているブレゴンラスドの騎士と革命軍の総合的な実力は殆ど僅差で、この内乱が中々終わらない原因でもあった。今回前に出てきた精鋭部隊は普段前線に出て来ないので、こうして戦う事になったのはまれ。本来ではありえないとも言える事だった。


「それにしても繋がらんのう」

「はい……。メイクーも無事だといいのですけど……」


 ネモフィラが眉尻を下げて俯いて、ミアとミントがきっと大丈夫だと励まそうとして笑顔を作る。するとその時、魔道具マジックアイテムにメイクーの顔が映し出された。


「ネモフィラ様! ご無事ですか!?」

「メイクー! 良かった。はい。わたくしは無事です。ミアに助けて頂きました」


 ネモフィラが安心して笑顔になり、メイクーにも見えるようにとミアの腕を掴んだ。ミアも安心して微笑んで、抵抗せずにメイクーに自分の姿を見えるようにとネモフィラにくっつこうとした。だけど、直後にミアはその微笑みを消して、ネモフィラを振り払った。


「ミア……?」

「ミミミ!」


 次の瞬間にネモフィラの背後で何かを弾くような音が轟音となって鳴り響く。ネモフィラとミントは驚き振り向き、そして、いつの間にか背後に立っていたミアにその目を向けた。


「二人ともワシから離れるでないぞ!」


 ミアが大声を上げ、それをきっかけに避難していた人たちが何事だと注目する。そしてその直後に丸く平べったい何か……チャクラムが一つ、とんでもない速度で飛んできた。

 ミアはそれをミミミピストルで撃ち抜き、更には二発目を発砲。すると次の瞬間、いつの間に接近していたのか、何者かがミアの目の前で額に白金の弾丸を受けて転がるように吹っ飛んだ。


「み、ミア……いったい何が…………っ」

「見ての通り敵襲なのじゃ」

「あ、あの人……革命軍の副隊長…………サウルって人……です」


 突然ミア達を襲った謎の人物、それは、ミントの言葉通りの革命軍副隊長サウル。サウルは転がる勢いを消して立ち上がり、額を両手で押さえてミアを睨み見た。


「いってえなあ! 平和ボケした国に何でこんな強いのがいやがるん……だ!?」


 サウルが驚いているが、それはミアも一緒だ。ミアは相手を気絶させるつもりで攻撃した。だけど、サウルは気絶しないどころか立ち上がって叫ぶ元気すらある。こんな事は初めてで、温泉で直ぐに目を覚ましたヴェロよりも衝撃的だった。しかし、そんな衝撃的な事も直後に消え失せる。何故なら、サウルと目が合った瞬間にミアはある事に気がついたからだ。


「お主……ルーサなのじゃ? なんじゃその格好は」

「ルーサ!?」

「え!? え!?」


 ミアの言葉にネモフィラとミントが動揺し、そして、サウルまでもが同じように動揺した。いや。正確には、動揺が増したと言うべきか。サウルはミアを睨んで目をかち合わせた瞬間から、既に動揺していたのだ。つまりそれはミアの言った言葉が真実だと言う事。サウル……いな。ルーサは一歩後退り、顔を歪めて歯を食いしばった。

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