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渦巻く不気味

「はい。俺達はアネモネ王女の事は一切知りません」

「本当じゃな? 嘘だったら許さないのじゃ」

「嘘なんてつきませんよ姉御・・。部下に王族がいたらついでに捕まえろとは命令しましたけど、作戦は明朝です。まさかそんなに早く駐屯地を襲っているとは思わなかったんですよ」

「作戦は明朝? 信用出来ぬのじゃ」

「そ、そんなあ……」


 と言うわけで、わからされてしまった革命軍の幹部十強の面々。ミアに瞬殺されて(死んでない)完全にへりくだっている。因みに十強は全員が魔装ウェポンを使えるが、ミアを子供相手だと甘く見た結果がこの通り。

 ミアの早打ちは説明するまでもなく、十強が油断している間にさっさと片付けたのだ。尚、ヴェロキラ兄弟は本気を出したが、一度顔合わせした事が仇になった。ミアは念の為にと先に始末していて、二人は未だに床とキスして愛を確かめ合っている。


「しかし、妙じゃなあ。では、あの騎士はなんだったんじゃ? 見た所ブレゴンラスドの騎士で間違いはない筈じゃが……」

「王妃の差し金かもしれませんよ」

「ぬぬ? どう言う意味なのじゃ?」

「王妃……プラーテ王女の母親である元側室だった現正室の王妃スピノは、随分とチェラズスフロウレスを恨んでいましたから」

「なんじゃと? それは本当なのじゃ?」

「間違いないです。俺の部下にスパイとして王宮に忍ばせた時に得た情報ですが、プラーテ王女が丸裸にされたと知った王妃が、チェラズスフロウレスに向けて宣戦布告をしようと計画を企てていたと言ってました」

「……ぬぬう。やはりあれが原因なのじゃな」

「おかげで俺達革命軍には勢いがつきましたけどね。チェラズスフロウレスを味方に出来るかもしれないと」

「ふむ……む? なら何で襲ってきたのじゃ?」

「そりゃあ仲間に出来ると思っていたら、ゴーラがアネモネ王女との婚約を破棄せずに継続して、結婚する事になったからですよ。あの王妃が説得されたなんて面白くないじゃないですか」

「流石は革命軍なのじゃ。考える事が自分勝手じゃなのう」

「は、はあ……」


 言い返したいけど言い返せない。わからされてしまった弱者には言い返す権利が没収されてしまっているのだ。と言うわけで、革命軍がミアたちチェラズスフロウレスを狙った理由が判明したが、それでも解決していない。


「王妃の差し金があの騎士だったとして、何が目的だったのじゃ?」


 そう。目的が分からない。傷は本物で疑いようも無く危険なものだった。そこまでしてアネモネが捕まったと嘘を教えるのだから、よほどの目的があった筈。だけど、その目的が見えてこない。ミアは得体の知れない何かにとても気持ち悪い気分になった。


「あの胸糞悪い王妃の考える事ですからね。どうせ仲良くするとゴーラにいつわって、裏でチェラズスフロウレスをおとしいれる方法を考えてたんでしょう」

「だろうなあ。俺あの王妃嫌いだわ。あんなんだからラティノ隊長がグレて革命軍を作ったんだろうな」

「あ。俺分かったかも。アレじゃね? アネモネ王女が捕まったと嘘の情報を流して、俺達とチェラズスフロウレスを戦わせて共倒れを狙ったんじゃね?」

「ありそう。あのヒスババアならやりかねねえ」

「でも、それなら笑っちまうよな。せっかくの作戦もこのお嬢様一人に任せるってチェラズスフロウレスの判断で失敗だからな! ガハハハハッ」

「その一人のお嬢ちゃんに負ける俺達って……」

「言うな。俺は考えないようにして自我を保っているんだ」

「個人的には少しありかなと思ったよ。足蹴にされた瞬間にちょっと気持ち良かったぜ」

(なんか一人だけ気持ち悪い事を言っておる者がいるのじゃ……)


 ミアは変態発言に寒気を感じ、少し後退る。も、今はそれどころではない。この十馬鹿……もとい十強の言葉を信じるのであれば、これは革命軍ではなくブレゴンラスドの王妃による罠で、これだけで終わるとは思えない。そう考えると、急いで旅館に戻る必要があるかもしれない。


「とにかくじゃ。お主等は今直ぐ町を襲う革命軍の連中を引き上げさせよ。ワシは戻るのじゃ」

「町を襲う革命軍の連中? おい。誰か知ってるか?」

「む? お主等知らぬのか……?」

「サウル副隊長を中心に駐屯地を明朝に襲うって聞いたけど、町を襲うなんて初耳だよな」

「ああ。初めて聞いた。今晩から駐屯地の周囲で張り込んで様子見するとは聞いたけど」

「待て待て待つのじゃ! 今や町は革命軍に囲まれて逃げ場のない戦場になっておるのじゃぞ!」

「は……? おい。知ってる奴はいるか?」

「知るわけないだろ。町を囲うなんてしたら、それこそ目立ってラティノ隊長やケーラ副隊長から大目玉を食らうぞ。俺達の目的はあくまで王族やその関係者だ。無関係の人間を襲うなって鉄のおきてがある」


 十強達たちが騒ぎ出し、ミアは事の状況の不気味さに唾を飲み込む。幹部である十強が知らない町を襲う革命軍の存在。そんなものあり得るはずが無い。

 ミアは気付く。重傷を負って旅館にやって来た騎士は、今にして思えばアネモネではなく十強の居場所を教えたとも言えるという事。ただ事ではない不気味な何かが起きている。そう感じずにはいられなかった。


「ワシは旅館に戻るのじゃ! お主等は戦地に行って確認せえ! それから絶対に軍を引かせて戦いを止めるのじゃぞ! 止めんかったら地獄の底まで追いかけて後悔させてやるから覚悟するのじゃ!」

「「「イエスマム!」」」


 地獄だの後悔させるだのと、聖女とは思えない発言のミアだが効果は覿面てきめん。十強は敬礼すると、まるで最初からミアの配下だったかのように散開して、未だに倒れているヴェロキラ兄弟を置いて戦場へと向かって行った。そして、ミアは「まったく本当にどうなっておるのじゃ」とぼやくと、旅館に向かって駆けだした。

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